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連載企画「立川市民オペラ2023 マスカーニ作曲 歌劇カヴァレリア・ルスティカーナ」を追う」

【vol.4】TBSK管弦楽団、ソリストに迫る

立川市民オペラのソリストオーディション、合唱団の特別公開練習、合唱団に続いての連載企画第4弾は“オーケストラ”と“ソリスト”に迫る。
立川市民オペラ2023のオーケストラを担当するTBSK管弦楽団、そしてオーディションで選ばれたソリストから鈴木俊介さんと江水妙子さんの練習風景を、ほんの少しのぞかせてもらった。

2023.03.14

練習会場のたましんRISURUホール

立川市民オペラ合唱団から刺激を受けるTBSK管弦楽団

今回演奏を担当するのは社会人、学生により構成されたTBSK管弦楽団。

今回のオペラでは弦楽器、管楽器、打楽器の構成で総勢60名超が演奏を担当する。

そのうち3割が初のオペラ公演。レベルの高い合唱団の立ち稽古を見学したことで刺激を受け、「いい演奏をしなければ」とスイッチが入り、熱のこもった練習が続いている。

TBSK管弦楽団 コンサートマスターの柳下裕俊さん、副インスペクターの鈴木千奈さん

 

TBSK管弦楽団は、2年前に立川市民オペラとの共演が予定されていた。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため公演が中止。今回ようやく共演が実現できることとなった。

「この2年、演奏の質を高めるため着実に取り組んできた。そして、今回演奏の機会をいただきありがたく思うと同時に、とても楽しみにしている」とコンサートマスターの柳下裕俊さんは語る。

コンサートマスター(通称コンマス)とは、演奏全体をまとめる他、ボウイング決めを行う。演奏者は指揮者のほか、コンサートマスターのボウイングを見て演奏を行う。

「練習見学や過去の動画を通して立川市民オペラの気合い、熱量、レベルの高さを実感し、メンバーは刺激を受けている」と話すのは副インスペクターでヴィオラ担当の鈴木千奈さん。

インスペクターとはオーケストラの運営や演奏時のセッティングなどを行うマネージャー的存在だ。

練習前のTBSK管弦楽団(写真中央、他メンバーと打合せ中のコンマス 柳下さん)

 

オペラでのオーケストラ演奏の難しさ

オペラではオーケストラは、オーケストラピット(舞台と客席の間にある1段下がったスペース。通称オケピ)で演奏するのが一般的だ。

(今回はコロナ対策も考慮し、舞台上、歌い手たちの後ろで演奏する)

またオペラは、同じ役でも歌い手によって、表現や声質、ブレスのタイミングなど微妙な違いがあり、時には体調によって声の出方が違うなど、歌い手に寄り添った音楽作りが必要になる。

オーケストラの演奏も常にいつも通りというわけにはいかない。

また、歌詞が拍通りに入らない場合もある。

歌とオーケストラの音量のバランスにも気を遣うため、歌い手もオーケストラも指揮者に合わせて完成させていく。

楽譜上「フォルテ(大きく)」と書いてあっても少し音量を小さくしたり、演技だけの場面では大きくするなど、指揮者の判断で楽譜に書いてある指示から変えていくこともまれではない。

このように、オペラ演奏には特有の難しさがあるのだ。

楽団員の日常

楽団員は学生・社会人と、勉学、仕事をしながら楽団に所属し演奏活動をしている。

演奏レベルを落とさないためには多忙であっても、毎日の練習が欠かせない。

また、楽譜を読み込み、曲の解釈などを研究することも必要だ。

しかし、楽団員にとってそれは日常の一部であり、特に大変だと思うことはないという。

TBSK管弦楽団

 

1音、1フレーズまで極める細やかな指揮者の指導

たましんRISURUホール地下1階の練習会場には、TBSK管弦楽団の奏者たちが指揮者・古谷誠一さんを中心に放射線状にパートごとに座っている。

日も暮れた18時30分ちょうどに練習が始まった。

指揮棒が振られ演奏が始まったと思うと、数小節進んだところでストップの合図。指揮者の指示が入る。

「ここはピアノ(小さく)」「ここからクレッシェンド(だんだん大きく)」「ここはブレス(息継ぎ)をいれて」など細やかな指示とあわせて、なぜそうするのかを団員に伝える。

また、各楽器の音色にもコメントがなされる。

指揮者は多くの楽器が一斉に鳴っている状態で、それぞれの楽器の音を聴き分け、指示を出すから驚きだ。

 

熱い指導をされる指揮者 古谷誠一さん

続いて vol1で紹介したオーディションで選ばれたソリストから2名に、立川市民オペラの魅力、今回の公演の見どころなどについて聞いた。

 ソリストから見た立川市民オペラ合唱団の魅力

江水妙子さん(3/19サントゥッツァ)  鈴木俊介さん(3/19トゥリッドゥ)

 

トゥリッドゥ役のテノール・鈴木俊介さんは、2021年3月「トゥーランドット」に続いて立川市民オペラ2回目の出演。

「規模の大きさ、練習期間の長さ、声楽を専門としていない人たち(合唱団員)の挑戦とその活気、そしてプロの自身もドキっとするほどの厳しい練習など、多くの刺激を与えてくれます」。

サントゥッツァ役のソプラノ・江水妙子さんは、以前他の公演で経験したサントゥッツァ役をもう一度やりたいと強く思いオーディションを受け、見事その役を射止めた。

「これまでに経験したことがない稽古期間の長さと回数で、サントゥッツァ像が何回も変わり、サントゥッツァ像の実像に迫ることができ、勉強になっている。

また、純粋にオペラを楽しんでいる参加者とともに舞台を作り上げる喜びを感じている。オペラ歌手で良かったと思える瞬間である」。

 

「カヴァレリア・ルスティカーナ」の難しさ

鈴木さんは「歌うこと自体の難易度が高い役のため、表現をしようとする前に、きちんとその曲を歌うこと。

そうすることで結果的に、表現につながることを恩師から教えてもらった。

オペラは西洋文化ではあるが、カヴァレリアの物語にある人間の普遍的な感情は、日本の人にも伝わるものだと思っている」と話す。

江水さんは「極端な場面があるものの、現代にも通じるところがあり、観客も共感できるのではと思う。

『伝える』ことは難しい。自分が感じたままに歌うと『伝わらない』と、自分の思いを出しきった時ほど『なにか違う』と言われたことがあり、

これらの経験から役に入りすぎず客観的に歌い、演じることが必要だと思っている」と話す。

2人とも、これまでの経験や数多くの学びから、難しさとの付き合い方や表現についての考えをお持ちであることが伝わってきた。

ソリスト

 

「カヴァレリア・ルスティカーナ」の見どころ

「立川市民オペラ合唱団の活力が一番だと思う。幕が開き、ソロのあとに大勢の村人たちが歌う場面は、観客の視点を舞台にぐっとひきつけてくれる」と鈴木さん。

「トゥリッドゥとサントゥッツァの二重唱」と江水さん。そして「いろいろな解釈ができる場面で、オペラが終わったあとに観客がどう思うのか興味がある」と続けた。

本番は3月18日(土)16:00開演(15:15開場)、19日(日)14:00開演(13:15開場)、たましんRISURUホール(立川市市民会館)大ホール。

合唱団、ソリスト、オーケストラの長期にわたる熱のこもった練習の集大成を同じ空間で見て、感じてはいかがだろうか。

TBSK管弦楽団とソリストの皆さんで全員集合!

 

公演詳細 クリック↓

 

◆立川市民オペラ

https://tachikawaoperaassociation.jimdofree.com/

◆立川市民オペラ合唱団

https://tachikawaoperachoir.jimdofree.com/

◆TBSK管弦楽団

https://tbsk-orch.com/

◆連載企画vol.1「立川市民オペラ2023 マスカーニ作曲 歌劇カヴァレリア・ルスティカーナ」を追う」

https://tachikawa-billboard.com/report_list/opera2022_vol1

◆連載企画vol.2「立川市民オペラ2023 マスカーニ作曲 歌劇カヴァレリア・ルスティカーナを追う」

https://tachikawa-billboard.com/report_list/opera2022_vol2

◆連載企画vol.3「立川市民オペラ2023 合唱団員の生の声」

https://tachikawa-billboard.com/report_list/opera2022_vol3

 (取材ライター:後藤直子)