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石田倉庫　アトリエがオープンになる2日間
富士見町にある石田倉庫アトリエは、元は石田産業の小麦粉倉庫だった場所や物置などを地域の芸術家たちに貸し出している。

二階建ての二棟と、独立した小さな２つの建物、立体駐車場の上階に上がるスロープの下のスペースと、最近では珍しい大規模なアトリエ群になっている。

イベントの看板がかかるNO.３の入り口付近。中はどんなになっているのだろう

「アートな2日間」は、コロナ禍のお休みを経て、今回18回を迎えるアトリエ祭だ。

入居年数も、活動内容も違う石田倉庫の入居者たちが協力し、春から準備をしていたそう。

そのアーティストたちの一部から、今年展示している作品や、石田倉庫アトリエへの想いなど、お話を聞いてきた。

NO.3広いスペースを活用したアトリエ群

「TEZBO」高井吉一さんはこの旋盤で金属から作品を生み出している

まずは、NO.３の一階にて、長年こちらを職場としている高井吉一さんに話を聞いた。

高井吉一：Takai Yoshikazu | 立川ビルボード
高井さんは、この場所で長年制作活動を続けている金工の作家だ。

以前は池袋にあるホテルのチャペルにあるアーチを手掛けるなど、3メートル以上の大きな作品をここで手掛けたそう。

金属のペンは時間の経過を感じさせる風情が懐かしく手に取りたくなる「チビエン」

「チビエン」シリーズは、机の中にある「ちびた」鉛筆から着想を得たそう。

小さくなるまで使い込まれた鉛筆には、「削られるたびに、それを使って書いた時間が蓄積されていく」という。

一本一本に、作られるプロセスでかけられた時間が込められ、アート作品となっている。
本作をアトリエ祭に出した際、「かわいい」という来場者の反応が新鮮だったそう。

作品に対するお客さんからの手応えを見るテストの場になっていると語ってくれた。

幾重にも数字が刻み込まれたペン。キャップを外して後ろに回すとぴったり着けられる仕掛けだ

ペンに刻印された数字が意味深なシリーズ。

高井さんは、刻みこむ数字を「不規則にしようと試みたが、制作する中で、この世に真にランダムな数字はない」と思い至ったと語ってくれた。

常に新しいことを思考し続ける高井さんの小宇宙が、形になって生み出されている。

中二階に作られたスペースには、高井さんの作品の椅子が並んでいる

高井さんにとって「アトリエは職場であることはもちろん、秘密基地でもある」という。

中二階には、作品の椅子が並べられ、高井さんの好きなものが詰まっているようだ。

高井さんのアトリエからは、どっしりと思考を続け、制作に反映させてきた時の重みが感じられた。

造形作家　dedcco浅田啓さんのワイヤーアート作品

同じフロアの反対側には、造形作家dedccoの浅田啓さんがワイヤーアートの作品を展示していた。

力強さと繊細さを併せ持つワイヤーアートの特性を生かして生活になじむような作品が並んでいた。

その一角で、ワークショップ「スポンジで工作をしよう」を開催。

大きな人形を制作した際にでた端材のスポンジを再利用しようと、企画したそうだ。

スポンジを使ったワークショップには、子ども達が次々に立ち寄っていた。山ほどあるスポンジから好きな色を選んで、毛糸などちりばめている

近所に住む子ども達が、思い思いにカットしたスポンジを飾っていた。

その保護者は「小学生と幼稚園生がいっしょにできるワークショップがなかなかないので、ありがたい」と話していた。

予約なしでふらっと立ち寄れるのもアトリエ祭の魅力と言うことだ。

SUBARU監督の制作した被り物は強烈なインパクトだが、かぶってみたい人が続出だった

二階では、映像作家SUBARUさんの作品上映が。

石田倉庫のアトリエ祭を扱ったドキュメンタリー作品が、新企画として流された。

昨年初めてアトリエ祭に来て、石田倉庫の魅力と出会ったSUBARU監督による、臨場感あふれる発見のドキュメンタリーになっている。

プロジェクターで投影される映画SUBARU監督の「アートな二日間」

この作品によって、立川の映画文化とアトリエ文化が融合するきっかけが生まれ、第11回立川映画祭で立川賞を受賞した。

石田倉庫アトリエの場の持つ力を、映像として一本の作品にまとめあげている。

二階の奥のスペースでは葉画家の群馬直美さんが一面の壁に作品を展示している

葉脈を緻密に描いた作品が個性的な、葉画家の群馬直美さん。

大きな白壁は、もともと自分で柱を立てて作ったそう。

ちょうど群馬さんの立っている位置は、床の色が変わっていた。

普段は部屋の中央に座って制作をしているということで、その痕跡がしっかりと残されていることが分かる。
植物をじっくり観察した作品からは、命と向き合う真摯な姿勢が見て取れる。

シンプルな構図の作品によって、日常に寄り添うアートの姿が確立されている。

2025年から入居の室内バーベキュースペース

にぎやかなイラストが誘う室内バーべキュースペース

石田倉庫の物置のような小屋を改装したバーべキュースペース「HANASAKASU」は、2025年の春からの入居。

手ぶらで室内バーベキューができるとあって、住人が石田倉庫に訪れるきっかけになりそうだ。

外側からは想像できないようなきれいな空色の室内は、いつでも晴れの気分で過ごせそう

ご主人の話では、「この蔵のようなスペースはとても古く、改装するのに苦労した」ということ。

手をかけてリフォームした室内スペースは中と外のギャップに驚く。

持ち込みはNGだが、中にはお酒類もおいてあり、充実しているそうだ。

近頃では見ることのない、レトロな炭をおこすストーブ

今年初参加になる「HANASAKU」は、アトリエ祭のフードコーナーで焼き鳥を販売していた。

ここにある火起こしストーブで炭火焼の炭を運んでいた。

朝早くから準備に余念がなく、来場した多くのお客さんが焼き鳥を買っていった。
アトリエとバーベキューという異色のコンビネーションだが、休日などを過ごす憩いの場として、新たに利用する人を増やすことになるかもしれない。

地域にアートマーケット～より広く開かれた場に～

地域アートマーケットに集まる人々。体験ブースにも興味を持って足を止めている

今年の新企画として、NO.５の建屋奥で「地域アートマーケット」が行われた。

立川や近隣のアート活動をしている人に代表自ら声をかけて、出店するブースが集まったということ。

「HEXION」革製品にマーブル模様をつける体験ができる

革製品を扱う「HEXION」は、東大和から来ているそう。

今回は本革のカードケースや、カットした革にマーブリングをしてコースターなどにする、ワークショップを行っていた。

出店したことで、石田倉庫　アトリエの作家たちの工夫の凝らされた作品に触れられたという。
あなただけの革製品 | 丁寧なカスタマイズで誕生する最幸のオリジナルレザーグッズ – HEXION（ヘクション）

猫好きは足を止めずにいられない「Cat　for Light」のネコグッズのブース

「可愛すぎないネコ」をアイコンにしたネコグッズを扱う「Cat for Light」のブースもあった。

制作者の山田モエコさんは、武蔵村山市から来ていた。

聞くと、代表が声をかけて出店者が集まったそう。

人と人のつながりが、アトリエ祭を盛り上げていることがわかる。

山田 モエコ：Yamada Moeko | 立川ビルボード
新企画を盛り込んだことで、これまで以上に地域の作家たちの活動や繋がりを活性化させるきっかけになっているようだった。

後半は、NO.５とスロープ下の作家たち、代表の想いを紹介する。

■2025 石田倉庫のアートな2日間
2025年11月8日 (土) ～11月9日 (日)
https://ishidasoko.wixsite.com/arts
開催場所：東京都立川市富士見町2-32-27

2024 石田倉庫のアートな2日間〜どーも。おひさしぶりです展 | 立川ビルボード

(取材ライター：設樂ゆう子)