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山田 モエコ:Yamada MoekoCat for Light 代表/デザイナー/イラストレーター

立川市から新青梅街道を渡り、武蔵村山市にはいると、にぎやかなセミの声と眩い日差しに、一気に夏が押し寄せてくる。

「Cat for Light」の自宅兼工房の玄関を開けると、とても大きな猫とモエコさん夫婦が出迎えてくれた。

「Cat for Light」はデザインから製作までの全工程を、デザイナー担当のモエコさんと製作担当の智也さんとで行うアパレルブランドである。

2025.08.01

「Cat for Lightの始まり」
「猫のアイテムってファンシーでかわいらしいものが多い。欲しくはなるけれど可愛すぎて自分達のテイストと合わない。

そんな時、飼い猫の『うしお』の面白い写真が撮れたんです。

ちょうど旦那さんが自作のTシャツを作っていたこともあり、イラスト化してTシャツにしたら面白いと思い自分達で作りました。

作ってみたら自分達のテイストにぴったりで、他にも欲しい人が必ずいるはずだと商品化しネットショップを立ち上げました」と互いの記憶を辿り合う。

「ブランド名Cat for Light」
「最初のデザインは、好きだったバンドBad Brainsのアルバムジャケットのパロディから『うしお』のイラストを展開しました。

Bad Brainsファンの方に怒られるかなとドキドキしながらの製作でしたが、想像していたよりも好評で。

きっかけをくれたBad Brainsの別アルバム『Rock for Light』から名前をもらいました。

造語なので意味が大丈夫か不安でアメリカの友達に確認もしました。

そうしたら、『Cat for Light』も『CAT BRAINS』も、和訳がいい感じで言葉の収まりもよかったんです」と笑いの絶えない会話が続いていく。

「Cat for Light」の名前の由来にもなった初めてのデザイン

「デザインへの拘り」
「デザインは好きな音楽や映画を参考にアイデアを膨らませています。

納得いく『うしお』の写真が撮れるまで撮影をし、イラストに起こす時は可愛過ぎず、でも可愛さも必要、そして何より『うしお』に見えなければならない。

表情には本当にこだわっていて1ミリ単位での調整をしているので、一番時間がかかります。

いましろたかしさんの『化け猫あんずちゃん』という漫画があるんですけど、その世界観が『うしお』と通ずるものがあるんですよ。

動物的なかわいらしさはないけど、なんか愛おしい存在というか。

お寺で飼われていた猫がなぜか30年過ぎても死なずに、人間サイズの化け猫になって世の中年男性と同じく普通に生活している漫画です。

もし、『うしお』が話せたら語尾に「にゃー」とか付かずに普通のおじさんのような話し方なんじゃないかなと想像しているんです。

こういう捉え方は共感を生みますし、どうにかデザインにも落とし込んでいきたい要素です。

実は猫が好きというより『うしお』が好きというファンも増えてきてくれているので『うしお』らしさを大切に表現していきたいです。

やってみたいデザインやアイテムのアイデアが沢山あるんです」と言葉を弾ませる。

「うしおに食べさせてもらっているよね」
「女子美術大学在学中にバンド活動をしていて卒業しても、バンド活動を中心に写真屋さんで働いていました。

今思えば、美術、バンド活動、写真と経験してきたことが『うしお』を通して活かされ繋がった感じがしています」と振り返る。

「作業は二人で」
「量産もやろうと思えばできるけれど、何枚も刷るときにおこるズレやムラがとても愛おしく、自分達で刷る作業がとても楽しい。

二人ですべてを完結できるので小ロットでのコラボや限定品も作りやすい。

私たちの手から『うしお』が離れてしまわないペースで作り続けていきたい」と製作工程を見せてくれた。

一枚一枚丁寧に刷っていく

ウエストポーチも、手刷りで総柄布を作り智也さんが型紙からたちあげ縫製まで行う

「好きなものでつながっていきたい」
「取り扱い店舗が少なくネット販売なので、イベント出店などで会うお客さん達がデザインやアイデアの話で盛り上がり楽しんでもらえているのを見ると、とても励みになります。

今は子育てとの両立でなかなか出店が難しいんですけれど、猫イベントも含め音楽やマルシェなど拘りのある様々なジャンルのイベントに出店していきたいです。

そして、できるなら一点物の展示即売会もやってみたいですね。

いつか『うしお』も連れて行きたいです」と活動意欲は尽きない。

「運命的な『うしお』との出会い」
「当時、弟と3人でシェアハウスに住んでいたんですけれど。

猫を飼いたくて、買うなら白黒の八割れがいい、どこかに猫が居ないかなと思っていたら。

『裏の駐車場にいるぞ』と言われて、すぐに洗濯籠で雀の罠のようなものを作り捕まえに行きました。

捕獲した日はそのまま洗濯籠で過ごしてもらったのですが、翌日籠を開けたら猫なのに徹夜したのかなと思うくらい同じ格好でこちらを睨んでいて、慣れるのに3か月ほどかかりました。

あれが『うしお』の猫生で最初で最後の徹夜だったじゃないかな」と『うしお』との捕獲劇を話してくれた。

山田モエコさんが代表/デザイナーを務める「Cat for Light」のモデル猫『うしお』の子猫時代

今でこそ、穏やかにどっしりかまえる「うしお」だが、子猫の時は、病院に連れて行くとピンポン玉のように逃げ回る活発な子猫だったという。

家族になった時、白黒で牛みたいだから『うしお』と名付けたのですが、まさか名前の通り牛のように大きくなるとは思っていませんでした。

モエコさんの話す言葉のすべてに『うしお』への深い愛が溢れていた。

■Cat for Light
HP:https://catforlight.com
Instagram:catforlight
X:CatforLight

(取材ライター: 高橋真理)