人と自然を輪でつなぐマーケット「ROOT LOOP MARKET 2024」https://www.fukunaga-print.co.jp/shikoutsushin/news/2024/rootloopmarket/
GREEN SPRINGSの人気イベント「GREEN HOOP MARKET」を手がけた、紙の可能性を追求し続ける「福永紙工」。
街中にありながら豊かな自然が楽しめる国営昭和記念公園で11月16日・17日、「人と自然の循環」をテーマにしたマーケット「ROOT LOOP MARKET 2024」を開催した。
環境への取り組みが求められている今、私たちにできることは何だろう、そんなことを考える「きっかけになって欲しい」との思いから始まったこのイベントは、たくさんの情熱と笑顔、そして出会いに溢れていた。
国営昭和記念公園みどりの文化ゾーンゆめひろば
イベント当日、美しく色づく紅葉とさわやかな空気を感じながら、広場を横切りマーケット会場の花みどり文化センターに入ると、明るく気持ちのいい空間が広がっていた。
通路を分けて、ゆったりとお店が並んでいる。
主に、衣服、アクセサリー、コスメやアロマ、アンティーク、作家作品、古書、フードといった感じだ。
会場の奥に進むと、洋らん展など他のイベントも開催されていた。
マーケットは穏やかな雰囲気で、お客さんと店主の方が会話をされている姿も見られる。
アロマが販売されているためか、いい香りがして、それぞれのお店には素敵な商品が並んでいた。
建築家・寺田尚樹との恊働プロジェクト「テラダモケイ」など紙を使ったワークショップは、老若男女問わず盛況で、参加者たちは熱中していた。
福永紙工さんに聞く、「ROOT LOOP MARKET」とは?
今回のイベントの企画・運営を行った福永紙工企画室の山田祥子さんと佐原光さんにお話を伺った。
<福永紙工株式会社>
■立川市にある紙の印刷加工会社。1963年創業。
2006年から他分野のクリエーターと恊働し、オリジナル製品を開発。数々の受賞歴がある。
店舗やイベントの企画・運営も手がける。
――「人と自然の循環」をテーマにした理由を教えて下さい。
(山田さん)近年、日本のみならず世界中で災害が増えていますが、私自身、そのことがずっと気になっていました。
今回、昭和記念公園でイベントを開催するにあたって、担当の方とお話しする機会があったのですが、自然そのものを大切に考えて維持管理を行っていると知って、共感するものがありました。
私たちの会社でも、商品を作る際にどうしても出てしまう端材を、地域の幼稚園や作家さんにお渡しするなど、ごみをなるべく出さないような取り組みを続けていましたので、それらのことから、「人と自然の循環」というテーマが浮かびました。
また、押し付けるのではなく、ふと気づいてもらえるきっかけを作りたいという思いもあり、環境に関心があり循環に取り組んでいるショップさんや作家さんにお声がけして、マーケットを開催することにしました。
――来場されたお客様の反応はいかがですか?
(山田さん)第1回ということで、どれだけの人が来て下さるのか心配だったのですが、マーケットを目指して来られたお客様以外にも、公園や他のイベントを目的に来場された方が、足を止めて下さることもすごく多かったですね。
(佐原さん)昭和記念公園には幅広い年齢層の方がご来園されますので、どんな方でも何か目に留まるものがあればいいなと思って企画しました。
お買い物やワークショップとそれぞれの楽しみ方を見つけていただけたようです。
(山田さん)「出会い」のストーリーもありましたね。
たまたま来ていた方がふと立ち寄って、初めてお店を知って商品を買って下さったり、初めて出会った出店者さん同士が、思いを共有して助け合ったり、すごく素敵だなって思うんですよ。
これも、ひとつの循環ですよね。自然も人もつながりながら共に生きていく。そういうことを大事にしていきたいですね。
――福永紙工さんは様々な分野との「恊働」を大切にされてきた、とお聞きしました。
(山田さん)そうですね。福永紙工は、2023年に創業60周年を迎えましたが、デザイナーさんと商品を開発するようになったのは、2006年からのことです。
その時から、同じ目線で作るというやり方を続けてきました。
私たちができる役割は「作ること」ですし、デザイナーさんの役割は「考えること」です。
この二つがあって、物は作られるのだと考えています。
ですから、一方的ではない関係性を大切にしてきました。
今回のマーケットでも、思いやテーマを共有できる人たちにお声がけをして、それぞれの役割を果たしながら一緒にマーケットを作りました。
――今回のイベントを含め、福永紙工さんのこれからの展望を教えて下さい。
(山田さん)「ROOT LOOP MARKET」については、昭和記念公園さんと一緒に作っていくという形で、これからも続けていきたいと考えています。
(佐原さん)福永紙工は、時代が変わっても愛される製品づくりを目指してきました。
発表してきた製品は300点以上に上りますが、発売から10年経ってもなお手に取っていただける製品が数多くあります。
例えば、今年9月には2011年設立のプロジェクト『テラダモケイ』個展が開催されました。
長く続けてきたことが結びついて、新たなものになっていることを感じます。
これからも今までやってきたことを持って、新しいことに取り組んでいきたいと考えています。
出店者の紹介
マーケットに参加した出店者は、全20組。
その内、取材した17日の出店者は16組だった。
その中から3組の店主さんのインタビューと、全店の販売風景をご紹介したい。
▽「RELIEFWEAR」
■身体の不調を機に開発した「養生のための機能服」
■Webサイト/ https://reliefwear.jp/
――「人と自然の循環」について、取り組んでいることを教えて下さい。
生地のアップサイクルですね。生地メーカーさんからデッドストック生地を買い取らせて頂いて、オリジナルのパンツを不定期で作っています。
とても上質な生地なのですが、半端に余ってしまったり、使われなくなったりしたものが、メーカーさんの倉庫には、結構、眠っているんですよ。
それを救出して、製品づくりに活用しています。
――お店のテーマにあげている「身につける養生」とは何ですか?
「身につける養生」とは、日々身につける衣服の不要なストレスをなくし、「着るものから体や心を整えていこう」という意味を込めています。
例えば、骨盤で穿いてお腹の部分を締め付けないようなパンツを製品化しています。
袴や道着など日本の伝統的な衣服に倣って作りました。
お祭り着の股引きをベースにしたものもあります。
私自身、盲腸の手術をした時にお腹周りに不快感が出てしまった時期があって、そこで、色々と調べてみたところ、ウエスト部分には骨がないので、締め付けると内臓に負担がかかりやすく、逆に、骨盤には大きな骨があり丈夫であるということが分かりました。
昔の人は理にかなった着方をしていたんですね。
そこから、このパンツのアイディアが生まれました。
また、身体の中心の丹田を意識できるような仕様にもしています。
丹田を意識すると、体の軸や、呼吸を深く意識できると言われているんですよ。
――これからチャレンジしていきたいことはありますか?
衣服だけではなくて、お花やアロマなど、さまざまなジャンルの方たちと一緒に「体と心を大事にする養生」というものを提案していけたらと思っています。
▽「mutou」
■木の雑貨やアクセサリーの制作販売
■Instagram / https://www.instagram.com/m_b_mutou
――「人と自然の循環」について、取り組んでいることを教えて下さい。
まずは、余すことなく木材を使い切ることを心掛けています。
端材の利用は、なかなか難しいのですが、細かいパーツに使用するなど工夫しています。
例えば、こちらのアクセサリーは、薄いボードを作る際に出た端材から作ったものです。
他にも、木のチップを商品の一部として有効活用しています。
新しいお買い物も楽しいですが、長く使ってもらいたいので、デザインも工夫しています。
経年劣化を楽しみつつ、いつかアンティークになったらいいなと思っています。
先日、商品をご購入下さったご夫婦と、「子どもたちにもいつか使ってもらいたいね」なんて話したりもしたんですよ。
――木工を始めたきっかけはなんですか?
実は、私はものづくりとは全く関係のないサラリーマンをしていまして、日曜日だけ、国立にある『クミタテ』というシェア工房で製作をしています。
仕事で上手くいかないことが続いて、落ち込んでいたある日、奥さんがアウトドア雑誌を持ってきて、「スプーンの作り方が載っているよ。やってみない?」って言ったんです。
始まりはそこからですね。
作ってみたら、没頭してしまって、いつの間にか時間が過ぎていました。
とても楽しくて、情熱を傾けられるものを見つけたと感じました。
それからは、奥さんはアクセサリー担当で、一緒に少しずつ、独学でやってきました。
――これからチャレンジしていきたいことはありますか?
ものづくりを始めたことで、没頭できる時間ができました。
これからも、自分の人生に情熱を持てる時間を作っていきたい。
いつか自分たちの工房を持ちたいという夢もありますね。
▽「reMio」
■国産オーガニックコスメブランド
■Webサイト/ https://remio.jp/
――「人と自然の循環」について、取り組んでいることを教えて下さい。
私たちは、オイルや化粧水など、スキンケアを中心に展開しているのですが、自然由来のもの、世界各地の伝統的な手法で作られているものを取り扱っています。
植物の力で肌に足りないものを補うなど人と自然が調和して気持ちよく過ごせることを大切にしています。
――パッケージなど、デザインへのこだわりはありますか?
化粧品というと女性的なイメージがあると思いますが、私たちの製品はユニセックスなデザインを採用しています。
また、パケージを展開すると内側に使い方を記載して紙媒体の削減を目指しました。
今後も資材選択とデザインでさらにシンプルさを考えていきます。
――これからチャレンジしていきたいことはありますか?
これまでは、主にヨーロッパから原料を輸入していましたが、今回、米油を使用した商品を開発しました。
これからは、日本のものとの出会いも大切にしていきたいですね。
もう一つは、「香り」ですね。
コロナ以降、精油を求めるお客様が増えました。
香りは人に心地よさを与えるものだと多くの方が経験されたのかもしれませんね。
▽「Osoto」
■暮らしに寄り添うリネンの大人服
■Instagram / https://www.instagram.com/osoto3
▽「SAEDECO」
■アクセサリーデザインとヴィンテージ小物
■Webサイト/ https://www.saedeco.com/
▽「Rain drops antiques」
■骨董品
■Instagram/ https://www.instagram.com/drops2007
▽「SETTE」
■ルーツローズラディッシュ 総代理店/日本製造所
■Webサイト/ https://sette-japan.com
▽「PALM」
■アクセサリー
■Instagram/ https://www.instagram.com/palm_mercerie
▽「VV」
■ジュエリー・アクセサリー
■Webサイト/ https://www.vvjewelry.jp/
▽「AROPO」
■空間サプリ AROPO(世界6か国で特許取得製品)
■Webサイト/ https://www.aropo.jp/
▽「ソラシカ散歩」
■古道具と雑貨
■Webサイト/ https://www.sorashika-sanpo.com/
▽「にわとり文庫」
■国内・海外の古書
■Webサイト/ https://niwatoribunko.ocnk.net/
▽「よのなか」
■ピーナッツバターメイカー
■Instagram/ https://www.instagram.com/yononaka_peanutbutter
▽「カンナパン」
■土鍋パン・焼き菓子
■Instagram/ https://www.instagram.com/miharu725
▽「Adam’s awesome PIE」
■りんご問屋が作るアップルパイ
■Webサイト/ https://www.adamsawesomepie.co.jp/
▽「SUPER PAPER MARKET」
■福永紙工のオリジナル製品
■Webサイト/ https://s-p-m.jp/
※急遽、出店見合わせ
▽「Petit Musée」
■アンティーク
■Webサイト/ https://www.petit-musee.com/
<16日の出店者>
▽「大滝智子」
■陶磁器
■Instagram/ https://www.instagram.com/hanatsuyu12
▽「CHALEUR」
■ガラス雑貨・古いもの
■Instagram/ https://www.instagram.com/chaleur101
▽「clap,clap,claps」
■植物造形
■Instagram/ https://www.instagram.com/clap_clap_claps
新しい未来への一歩
マーケットという形で、自分のお気に入りを探しながら環境に貢献できるというのは、嬉しい取り組みだ。
店主の方のアイディアと情熱をお聞きするのも楽しかった。
こういったお店を応援することで、環境に配慮することが当たり前の社会になるといいなと思う。
私たちひとりひとりが出来ることは小さいが、自然も人も輪になれば、新しく前向きな明日が見えてくるかもしれない。
そんなことに気づかされたイベントだった。ぜひ、次回も楽しみにしたい。
◇「ROOT LOOP MARKET 2024」
|開催日/2024年11月16日(土)‐17日(日)
|会場/国営昭和記念公園・花みどり文化センター
|主催/国営昭和記念公園・共催/福永紙工株式会社
◇国営昭和記念公園
|開園時間・休館日、イベント情報等は、Webサイトをご覧ください。
|Webサイト/ https://www.showakinen-koen.jp/
◇福永紙工株式会社
|Webサイト/ https://www.fukunaga-print.co.jp/
(ライター/岡本ともこ)