2024 石田倉庫のアートな2日間〜どーも。おひさしぶりです展https://ishidasoko.wixsite.com/arts
立川市富士見町にある石田倉庫のアトリエで10月19日、20日の2日間、アートイベント「アートな2日間」が開かれた。
5年ぶりの開催に、多くの人でにぎわった。
石田倉庫
人気イベントが5年ぶりに復活!
JR 西立川駅南口から10分ほど歩いた住宅地にある「石田倉庫」は、多彩なジャンルのアーティストがアトリエを構える建物群。
40年ほど前、地元企業の石田産業㈲が自社倉庫をお金のない芸術家や美大生に貸し出して、創作を支援する取り組みから始まった。
現在も十数名のアーティストが入居して、作品制作に取り組んでいる。
「アートな2日間」のイベントは2005年に始まって以来、毎年秋に開催され、立川を代表するアートイベントとして人気を集めてきた。
近年はコロナの影響で見送られてきたが、ようやく5年ぶりの開催が実現した。
開催を心待ちにしていた地域住民や、アートファンでにぎわう石田倉庫のアトリエ。
建物はNo.3、No.5、No.6の3棟と、駐車場スロープ下にもアトリエがある
ワークショップ、体験型アート
人気を集めたのが、アート制作が体験できるワークショップ。
チョークアートアーティストの小島敦子さん(No.3 2F)のブースでは、ハロウィンのイラストをクレパスで描くワークショップが開かれ、子どもたちでにぎわった。
下絵に沿ってクレパスで色を塗り重ねていく子どもたちに、「親指を太筆、小指を小筆に見立てて、指を上手に使って描いてね。
かぼちゃの丸みを想像しながら描いていくと、立体感が出て上手に描けるよ」とアドバイス。
屋外には、体験できるアート作品も登場。茂井健司さんの作品『舞台「そら」』。
構造物に上がると鏡に映った青空が足元に広がり、まるで空を歩いているような不思議な感覚になる。
ものづくりの楽しさや、アートを身近に体験できるのも、イベント参加のいいところだ。
音楽ライブやフードも充実
倉庫前での音楽ライブでは、アトリエのアーティストで、手作りギターを手掛けるBarnaby Ralph(バーナビー・ラルフ)さんと、仲間のミュージシャンが演奏を披露。
生演奏の熱気に、会場の観客も一緒になって盛り上がりをみせた。
2日間のライブの様子は、バーナビーさんのYouTubeチャンネルにもアップされているので、ぜひチェックしてほしい。
https://www.youtube.com/channel/UC1PgN937SQNGGqTv33iNNfg
No.5 1F ブースでは、店舗デザイン、アーティスト集団の「アーティーズ」がフードを提供。
アルコール類やカフェ、焼き菓子など、メニューも充実していた。
空間演出デザイン・施工の「アーティーズ」の皆さん
https://artees.jp/
富士見町の「むぎこ製ぱん所」のブースには、たくさんの種類のパンがずらりと並んだ。
同所オーナーは「富士見町で一番人が集まるイベント。やっと開催されて私たちもうれしい」と、アトリエ祭の復活を喜ぶ声が聞こえてきた。
富士見町で人気の「街カフェCOCOON(コクーン)」もブースを出店
壁画で元気を取り戻そう!
外壁に描かれた大きな壁画は、コロナの流行で世の中に閉塞感が漂うなか、大家である石田産業㈲の前社長、石田高章氏が「元気が出るような壁画を倉庫の壁に描いてよ」と、アトリエのアーティストに呼びかけて描かれたもの。
左から、茂井健司さん、槇島藍さん、群馬直美さん、宮坂省吾さん、星野裕介さんの作品。
テーマは作家の自由に委ねられ、各人の個性が光る。
(作品タイトル)『日はまた昇る』
富士山と太陽をモチーフにした壁画は、美術家の宮坂省吾さんの作品。テーマを聞くと、「ここは富士見町だから、富士山を描きたいと思った。後ろに太陽が昇る様子を描いて、石田倉庫に日が昇り、活気を取り戻すという思いを込めた」という。
蛍光ピンクや銀色の塗料を使って、明るくポップな雰囲気に仕上げた。
「実は壁画の下のほうに、小さく石田倉庫アトリエが描いてあるんですよ」と宮坂さん。
次回のアトリエ祭では、ぜひチェックしてほしい。
壁画制作の様子を記録した動画「石田倉庫の壁画な日々」はこちら。
https://youtu.be/rEexVrkf6rg?si=vY8n4KkzmwizHKUI
最大の見どころ!アトリエ公開と作品展示
普段は入る機会がないアトリエをのぞいたり、作家自身に展示作品の解説を聞くことができるのも、アトリエ祭ならではの醍醐味。
今回は20名のアーティストが参加して、多彩な展示が並んだ。
その一部を写真とともに紹介する。
造形作家 浅田啓さん(No.3 1Fブース)
ワイヤーを使った立体物やキャラクター原型、家具製作なども手がける浅田さん。
アトリエ祭への参加は今回が初めて。
ワイヤーを加工して製作するスマホホルダーや鍋敷きなどの道具類。
遊び心がありながら、丈夫で実用性も十分。
「ただ飾る物としてではなく、使う道具として日常生活が楽しくなるものづくりを心がけている」そうだ。
製作で余った発砲スチロールを使ったワークショップも開催。
「なんの形に見えるかな?」イメージを膨らませて、自由に色を塗る子どもたち。
周りのワイヤー製作物も浅田さんの作品
https://docco.crayonsite.com/
葉画家 群馬直美さん(No.3 2Fブース)
原寸大の葉っぱや植物、野菜などを実物そっくりに精緻に描く『葉画家』の群馬直美さん。
2019 年には、英国王立園芸協会のボタニカル・アート展で最優秀賞を受賞して、世界で高い評価を受けている。
壁一面を飾ったのは、『心の琴線に触れたら投げ銭してね』と題した作品。
作品を観て心の琴線に触れたら投げ銭をしてもらい、能登の人たちの復興支援金にするという。
黒く塗り重ねた紙に、白のマスキングテープで描いているのは、亡き父にまつわる思い出や、群馬さんが『裏庭のマザーテレサ』と呼んで敬う、ドクダミへの思いなど。
「今回の展示が終わったら、また次の作品展でも展示して、永遠に投げ銭を受け入れ続け、世界中の困った人たちに寄付されるシステムにしたい」と、笑顔で語ってくれた。
以下のサイトで、群馬さんの連載コラムが読める。制作への思いや、作品例も紹介。
『公園文化WEB』https://www.midori-hanabunka.jp/gart1
美術家 宮坂 省吾さん(No.5 2Fブース)
第一回のアトリエ祭を立ち上げたメンバーの一員で、石田倉庫にアトリエを構えて20年以上になる宮坂さん。
染色した布を元に、布同士が重なって透過する様や、樹脂などの素材と融合させて生まれる色彩や空気感などを表現している。
展示のテーマは『泡』。宙の青と光が織りなす、静かで幻想的な空間に魅了された。
http://www.miyasaka-shogo.com/index.html
油絵画 伊藤寛子さん (No.3 2Fブース)
武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、平日は会社員として働きながら、週末にアトリエで制作を続けている伊藤さん。
作品では、日々の暮らしで出会った感動や、瞬間をイメージして表現しているという。
作品のテーマに悩む時期が続いたが、「何を描くかは、世界をどう見ているかにつながっている。大切なものは身近にあることがわかってきました」。
(作品タイトル)『ケセランパサラン』
仕事中に、窓越しにふわふわと空を漂うケセランパサランを見たときの情景をイメージして描いた作品。
ケセランパサランは、幸運を呼ぶといわれる不思議な生き物。
作品では、「毎日見ている風景に非日常感を出すために、空の色をピンクにした。画面に深みを持たせるために厚手の布を貼り、最終的な色のイメージに近づくように油絵具を何層も重ねた」と、こだわりを語ってくれた。
インスタグラムでも作品を紹介している。
彫刻 増井のはらさん(スロープ下・S7ブース)
中学・高校の美術教師として教壇に立つ傍ら、週末は石田倉庫のアトリエで制作に励んでいる増井さん。
モチーフに制服やジャージ姿の学生が多いのも、日ごろから学生に接しているから、影響を受けることが多いのだそう。
先日はファーレ立川アートイベントのワークショップを行うなど、活動範囲を広げている。
(作品タイトル)『もちつもたれつ』
自身の作品について、「土という素材を使って形を作り、焼き上げたものに彩色をして、一つの作品が完成する。ひとつひとつ積み上げていくところに魅力を感じます」。
(作品タイトル)『山河あり』
コロナ禍の下、福島での展示会に向けて、現地をイメージして制作したという。
雄大な山々に守られるように人々の暮らしがあるようすを表現。
柔らかい色合いと、山に包まれた女性たちの表情が穏やかだ。
https://masuinohara.tumblr.com/
盛りだくさんの、充実したイベントとなった石田倉庫の「アートな2日間」。
また来年の開催を心待ちにしたい。
■2024 石田倉庫のアートな2日間
2024年10月19日 (土) ~2014年10月20日 (日)
https://ishidasoko.wixsite.com/arts
開催場所:東京都立川市富士見町2-32-27
(取材ライター:柿本和子)