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赤ちゃんから大人まで、みんなで楽しむコンサート「スギテツ音楽会」

立川第三小学校の体育館で7月8日、NPO法人立川子ども劇場主催のコンサート「スギテツ音楽会 きがるにブラボー」が行われた。

2018.07.17

ポスターから備品類まですべてスタッフによる手作りで出来上がったコンサート

 

当日の気温は30度。冷房なしの体育館で、手作りのポスターを貼ったり、パイプ椅子を並べたりと、スタッフの皆さんが手際よく準備を進めていく。まさに「手作りのコンサート」という感じだ。「近頃は、こうした公演の会場に小学校の体育館を借りることも難しくなっている」と話す代表理事の中嶋さん。しっかりした活動実績があってこそ、実現したコンサートなのだろう。

 

立川子ども劇場は創設から43年、NPOとなってから15年になる、立川の子ども文化活動団体だ。1年間に5つの公演を鑑賞するほか、キャンプや子ども祭り、科学実験教室を行うなど、活動内は幅広い。

 

正会員になれるのは3歳からだが、0歳から「おひざっこ会員」として参加できるので、子育て中でも、まだ子どもが小さいからと気兼ねをすることなく、親子一緒に観劇やコンサートを楽しむことができる。

 

会員数は現在、立川、国立、昭島を合わせ約120名。ほとんどの活動は、会員以外の人も参加OKだそうだ。「会員だけでなく、地域の人たちに文化体験を届けることが、私たちのミッション」と中嶋さんは話す。

 

上演作品は会員たちで会議をして決定するが、0歳から大人まで楽しめる作品を探すのは簡単ではないという。今回の「スギテツ音楽会 きがるにブラボー」は、他の子ども劇場や、事前に下見をした会員からの「面白い」という推薦で決まったそうだ。

 

出演アーティストの「スギテツ」さんは、ピアノ担当の杉浦哲郎さんと、ヴァイオリン担当の岡田鉄平さん二人の音楽デュオ。おなじみのクラシックの曲を楽しくアレンジして、子どもから大人まで楽しませてくれるコンサートに定評があり、Eテレの小学生向け音楽番組「おんがくブラボー」のレギュラーとして、子ども達におなじみのアーティストだ。

参加社から感謝のプレゼントを贈呈

 

 

公演直前、体育館の扉が一斉に閉じられ、窓には暗幕が引かれた。

ぐっと暑さが増す中、スギテツのお二人が、ビシッときまったマエストロルックで登場。軽快なトークと美しい演奏で、たちまち会場の空気を和やかに変えてしまった。

子どもたちは、クイズに答えたり、知っているメロディーなのに、「あれ?なんか変だぞ?」と首をひねったりするうちに、すっかり夢中になっていく。ちょっとマニアックなトークに、大人も思わず笑顔になる。

「まさかこの小さい楽器を…弾いた!」と観覧者は驚いた

大人も子どもも夢中に

 

 

フィナーレには、持ってきた楽器を使ってみんなで大合奏。楽器のない人は、開演前に配ってくれた、スタッフ手作りの可愛いマラカスで参加した。この時限りのオーケストラに、参加した子どもたちは緊張の面持ち。そんな姿を、記録するため、お父さんお母さんたちは、記念写真の大撮影会になった。

 

フィナーレは大合奏

 

あっという間に1時間弱のコンサートは終わり、体育館に光と風が戻った。

公演後は、CDを購入すると、その場でスギテツのお二人がサインをしてくれる大サービス。「この日の記念に」と、順番待ちの列ができていた。

「この日の思い出に」と詰め寄る参加者たち

気さくにサインに応えるスギテツの2人

 

コンサートとサイン会の後、スギテツのお二人にお話を伺えた。

感想を尋ねると、杉浦さんは笑顔で「暑かった」と一言。音楽大学時代を多摩地域で過ごしたという岡田さんは、「思い出のある地に帰ってきて演奏ができてうれしい」と答えてくれた。

デュオ結成当初は特に子ども向けのつもりはなかったそうだが、クラシック音楽のパロディーが子どもたちに人気となり、今では日本中の学校で年に100回を超える演奏やワークショップを行っているという。現在は、次の世代に音楽のバトンを渡すべく、ライフワークとなっているそうだ。

「ただ、『子ども向け』というと、子ども目線で、子どもが楽しむものがほとんどですが、大人も一緒に楽しめるように、大人に向けても発信していきたいんです」と杉浦さん。「今は楽器を習う子どもも減っているので、未来の音楽家が育っていくように、練習が大変でイヤにならないように、音楽を楽しんでほしい、という思いで活動しています」と語ってくれた。

 

最後に、学校の体育館という会場や、楽器のコンディションがわからない状態で、各地でコンサートを開く杉浦さんに、その難しさを訪ねると「どこでもできます。生楽器ですから、音が出れば伝わると思っています」と笑顔で答えてくれた。まさにプロフェッショナル。日本中の学校から、引っ張りだこというのも納得だ。

 

少子化を始め、子ども達を取り巻く環境は、少しずつ厳しくなっているという。だからこそ、子どもにも大人にも、心の栄養を与えたいと活動を続ける人たちがいる。

 

今回、コンサートを楽しみながら、そんな人たちの熱い思いを感じた。

 

◆スギテツさんの活動はこちらから
http://www.sugitetsu.com

◆NPO法人立川子ども劇場の活動はこちらから
https://tachikawa-kodomo-gekijo.jimdo.com