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第8回TACHIKAWAいったい音楽まつり「立川でドーナツになる2Days」

メイン会場17カ所、サテライト会場5カ所、立川いったいWeek出張いったい音楽会場3カ所と300弱の団体1200人以上の人々が参加しての音楽フェス。

スタッフ、演奏する人、聞く人、ステージクルーと呼ばれるボランティアスタッフそれぞれがあっての「立川いったい音楽祭り」が5月18日・19日、開催された。

2019.06.10

「輪になり和になり話になっていく」
「立川いったい音楽祭り」、略称「いったい」の音楽ジャンルは様々。クラシックからヘビーメタルまで多岐に渡るのも大きな特徴の1つ。十人十色ジャンルが違っていても同じ音楽を奏でる仲間。上手い下手もあっていい。全国的にも希有なイベントだ。

多摩地区では府中がジャズを中心とした「ジャズin府中」を秋に開催している。互いに交流しイベントを盛り上げて来た。

 

実行委員長の梶原哲也さんを皆、親しみをこめて「ちゃぼさん」と呼ぶ。「いったい」の「つ」を表したポーズをとるのが運営スタッフと、中央がちゃぼさんだ。
8回目となる「いったい」だが、前身として「おとなバンドフェスティバル」にも関わっているので10年間走り続けてきた。
ちゃぼさんは自身もプロのドラマーとして華やかな表舞台の芸能界で活躍、また音響現場での裏方も経験。そのような経歴から実行委員6人から始まったこの「いったい」に委員長として関わってきたのは自然の流れなのだろう。

 

「ここまで大きなイベントになるとは思ってもみなかった。音楽を通じ、皆で立川を盛り上げていこうと熱く語りあってきた」。

各会場に足を運び、担当者にイベントの趣旨への理解を求め場所の提供をお願いしてまわった。最初の頃は、機材をそれぞれが持ち込みだったため、壊れたりなどのトラブルも多く、路上ライブを行う上での苦労は数えきれない。

行政との関わりや組織が大きくなるにつれての軋轢、大きな音へのクレーム、安全確保のための警備員配備などなど、その1つ1つの問題に、スタッフ一丸となって知恵を出し合いクリアにしていった。何よりイベントに力を貸してくれる人、盛り上げる人、お互いの力があったからこそ続けられてきたのだろう。

今年の「いったい」を盛り上げるアイテム、1枚1000円のオリジナルタオルはあっという間に完売した。会場で流すジングル(イベントを印象づけるオリジナルの短い音源)はこのタオルが必要不可欠で、みんなでタオルを回す光景があちらこちらで見られた。

 

そしてなによりちゃぼさんが嬉しかったこと、それは「いったい」のプログラムを持っている人が多かったことだった。配布前に、プログラム片手に各会場を渡り歩いている人が多く目立った。そしてこのプログラムにもこだわりがある。

各会場にはDirectorを置き、名前を明記。それぞれのDirectorが各会場の責任者となる。これからの市民イベントは「いったい」からの発信で、こうした運営が主流になっていくかもしれない。

 

「ありがとう」の持つちから
ちゃぼさんは今回、「周囲の人に感謝していることを伝え合うことの大切さ」をメッセージに、「ありがとう」の言葉を明確に力強く打ち出した。

「いったい」前夜祭は5月12日(日)たましんRISURUホール(立川市市民会館)大ホールでアメリカ空軍太平洋音楽隊パシフィック・ショーケース コンサートを開催。そこで「ありがとう」を言う練習をしたのだ。会場全体で「ありがとう」という言葉が響き渡った。
出演者説明会でも「ありがとね!」「ありがとう~~」。共通のイメージを共有することで「いったい」の核をつくった。

「立川でドーナツになる2Days」人の輪を大事にしてきた、ちゃぼさん。もちろん当日は至るところで「ありがとう」の声。そこには今回を最後に「いったい」の実行委員長を退く、ちゃぼさんの「今まで関わってきた人すべてに感謝」という想いがつまっている。

ちゃぼさんに「次の委員長を紹介して下さい」とお願いした所、「俺が決めちゃダメでしょう。新しい“いったい”は新しく。私が何も決めずに去るべき。だからこそ、これから何がうまれるかにワクワクする」。組織に執着したり、しがらみの中でがんじがらめになる人が多いなか、なんとも潔い言葉だった。

「やりたい事はまだまだたくさんある。次のステップへ」。その目は新しい未来をみつめていた。