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稀有で多彩な、世界の素晴らしさを伝えた人「堀内誠一展」https://play2020.jp/article/seiichi_horiuchi/

多くのクリエイターに影響を与えてきた堀内誠一の多彩な仕事を、ひとことで説明するのは難しい。
しかし、彼が伝えたかったのは、『世界はこんなに、素晴らしい』ではなかったか。展覧会を企画した林綾野さんは語る。

3組のクリエイターが空間デザインを手がけた、3つの展覧会を同時に体験できる「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」が、PLAY!MUSEUM で1月22日から4月6日まで開催している。

「回顧展ではなく、未来へと開かれた展覧会にしたい」との思いから始まった新しい挑戦が、どのようなワクワクを見せてくれるのか。

(トップ画像/「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」メインヴィジュアル ©Seiichi Horiuchi )

2025/01/22 (水) 2025/04/06 (日)
開催場所

PLAY!MUSEUM

2025.01.30

■堀内誠一
1932年、東京生まれ。デザイナー、アートディレクター、絵本作家などジャンルを超えて活躍。
「BRUTUS」「POPEYE」など雑誌のロゴデザインや「anan」創刊時のアートディレクターとして、コンセプト作り、誌面の企画やデザインを手がけ、ヴィジュアル雑誌の黄金期を築く。

絵本作家としては「くろうまブランキー」「たろうのおでかけ」「ぐるんぱのようちえん」など多くのロングセラー作品を生み出した。

挿絵も多数。1973年〜81年にかけて、家族と共にパリ近郊に移住。世界各地を巡り歩き、旅行記やガイド本を出版。

友人らに宛てた絵入りの手紙は楽しく魅力あふれていた。1987年、54歳で逝去。

堀内誠一 © Seiichi Horiuchi

 

3組のクリエイターによる3つの堀内誠一展
本展は、「FASHION」「FANTASY」「FUTURE」の3つの個性的な堀内誠一展を同時に巡ることが出来る趣向で、有山達也さん、設計事務所imaの小林恭さんとマナさん、三宅瑠人さん・岡崎由佳さんの3組が、各セクションの空間デザインを手がけた。

 

開催された経緯と2つの挑戦
開幕前日に開かれた内覧会には、堀内誠一さんの長女・堀内花子さん、本展キュレーターの林綾野さん、FASHION展の空間デザインを手がけたアートディレクター・グラフィックデザイナーの有山達也さん、FANTASY展の空間デザインを手がけた設計事務所imaの小林恭さんとマナさん、PLAY!プロデューサーの草刈大介さんが、登壇した。

プロデューサーの草刈さんは「以前より堀内さんの展覧会を開催したいと希望しており、PLAY!MUSEUM のコンセプトである『絵とことばの美術館』として、アートの楽しさや奥深さを伝えるには、堀内さんの多彩な仕事がぴったりだと考えていた」と話す。

また、キュレーターの林さんは「2021年から全国8会場、『堀内誠一 絵の世界展』を巡回したが、それとは違う新しい堀内誠一展を作りたいとの思いがあり、2つの挑戦をした」という。

ひとつめは、クリエイターの方々と一緒に展覧会を作り上げること。

二つ目は、回顧展ではなく未来へと続く展覧会することであった。

左から、草刈大介さん・林綾野さん・堀内花子さん・有山達也さん・マナさん・小林恭さん

 

FASHION / 時代の熱量を感じる
会場内は圧倒的な密度の濃さで、誌面の様にうねる壁に「anan」の表紙やヴィジュアル写真が溢れていた。

堀内さんは、1970年の「anan」創刊から49号までアートディレクターとして、デザインだけでなく、コンセプト作りや編集など、当時新しいメディアであったヴィジュアル雑誌を作り上げた。

FASHION展の空間デザインを手がけた有山達也さんは話す。

「堀内さんがディレクションした『anan』を読むと、自由な雰囲気や大らかさ、人間礼賛のようなパワーを感じる。新しい時代を切り拓こうという堀内さんのメッセージが立ち上がっていた」。

「anan」は、ファッション雑誌だ。

しかし、堀内さんはファッションを洋服だけとはとらえていなかった。「生きて、愛して、歌って !!!!!!! それが『アンアン』のファッションです」。

これは「anan」7号に書かれたアンアンという雑誌の在り方への宣言だが、創刊した1970年代における堀内さんからの「大きく変わろうとしていた新時代へのメッセージ」ともとれるだろう。

「anan」表紙(11号、1970年)平凡社 ©マガジンハウス © Seiichi Horiuchi

見どころは、創刊1周年記念号・全ページ、数メートルにわたっての展示だ。

アートディレクターとして2002年の創刊から2015年まで、雑誌「ku:nel」を手がけた有山さんも「驚くほどの自由なデザインと込められた熱量をぜひ感じて欲しい」と述べた。

■「FASHION」・空間デザイン /有山達也
|| アートディレクター、グラフィックデザイナー

 

FANTASY / 絵本の世界に没入する
迷路のような通路を進むと、絵本の世界が広がっていく。

どこからか音楽も聞こえてきて、たどり着いた広場では、大きなぐるんぱが待っていた。

「FANTASY」展 空間模型(設計事務所ima)©Seiichi Horiuchi

ファンタジーって何だろう?

FANTASY展の空間デザインを担当したimaの小林恭さんとマナさんは、まずはそこから考えたという。

色々な答えがあると思うが、ふたりは「不思議な世界観」ととらえ、「小人になって絵本の世界に入り込むのはどうだろうか」と思いついた。

そこで大きな絵本を間仕切りとして9つの部屋をつくり、それぞれの空間で原画をはじめ絵本の世界を楽しめるようにした。

「FANTASY」展 空間模型(設計事務所ima)©Seiichi Horiuchi

「てがみのえほん」お話の本棚

「堀内さんがクスっと笑ってくれるような、楽しい空間を目指した。ぜひ、ゆっくりと絵本の世界に没入して頂けたら。

また、大きなサイズに引き伸ばしても、間延びすることのない堀内さんの絵の素晴しさも感じてほしい」と、小林恭さんとマナさんは笑顔で語った。

■「FANTASY」・空間デザイン /設計事務所ima 小林恭+マナ
|| 建築家・インテリアデザイナー

 

FUTURE / 100人のクリエイターが推す堀内作品とコメント
一面の黄色と積み重さなるキューブが印象的な空間は、生きる喜びをイメージしているという。

「私たちに遺してくれたもの、それは喜びだ」。

詩人・谷川俊太郎さんの言葉だが、全体を包むテーマでもある。

本展では、堀内さんを敬愛するクリエイターらが推薦する堀内作品と堀内さんから受け取ったものや未来へ伝えたい言葉が並べて展示されている。

推薦:松浦弥太郎さん/《セーヌ左岸》1981年 ©Seiichi Horiuchi

推薦:名久井直子さん/「あかずきん」(1970年)福音館書店 ©Seiichi Horiuchi

「何もなくなった戦後の大きなうねりの中で、堀内さんが伝えたかったことは、『それでも世界は素晴らしい』ということではなかったか」とキュレーターの林さんは熱く語る。

「その思いが、多様なクリエイターたちの眼差しを通して今の人たちに伝わったら。そして、少しでも未来をひらく勇気とヒントになったら」と本展に込めた思いを述べた。

展示を観る中で、ひとりの人が成し遂げたとは思えない多彩な仕事と作品の素晴らしさに、堀内さんの才能がどれだけ稀有なものか、分かってきた。

そして、クリエイターや周りの人々にいかに愛されていたかも伝わってきた。

3つの展覧会を巡って、堀内さんが残したものは作品ばかりでなく、かけがえのない温かさだったのかもしれないと感じた。

だから、堀内さんの仕事に触れたとき、肯定されたような気持に包まれるのだろう。会場を出る頃には、なんだか元気が出てきた。

■「FUTURE」・空間デザイン /三宅瑠人・岡崎由佳
|| デザイナー

 

オリジナル商品が楽しめる、ミュージアムショップとブックカフェ
ミュージアムショップでは、ビスケットポーチやハンカチ、ステーショナリーやお菓子など、堀内誠一展オリジナルグッズが多数、販売される。

中でもおすすめは、公式アートブック『世界はこんなに』。

堀内誠一の絵や写真、言葉が散りばめられた夢のような一冊だ。

堀内誠一展・限定ネームステッカー/内覧会で人気だった

隣にあるブックカフェでは、堀内さんが携わった本とコラボメニューが楽しめる。

展覧会を巡った後は、ゆっくりとひと息つくのもいいかもしれない。

今回の展覧会には、堀内誠一さんの仕事がぎゅっと詰まっていた。

どこを観ても楽しめる見どころいっぱいの展覧会なので、たっぷりと時間をとって、足を運んでみてはいかがだろうか。

■「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」
会期/2025年1月22日(水)~4月6日(日)
会場/PLAY!MUSEUM (東京・立川)
開館時間/10:00~17:00(土日祝は18:00まで/入場は閉館の30分前まで)
入場料/一般1,800円、大学生1,200円、高校生1,000円、中・小学生600円
*未就学児無料、いずれも税込み
休館日/2025年2月16日(日)
住所/東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2F
WEBサイト/ https://play2020.jp/museum/

◎「堀内誠一展」PLAY! PARK の関連企画
ぐるんぱの物語を楽しむあそびやワークショップを開催。
詳しくは下記サイトをご覧ください。
Webサイト/ https://play2020.jp/article/park_seiichi/

「ぐるんぱのようちえん」(1965年)福音館書店 ©Seiichi Horiuchi

(ライター・岡本ともこ)