Interview「地域の人をモデルにしたポートレイト展 セル画を使い表現」
立川駅北口の多摩信用金庫本店2階に、「地域貢献スペース」としてギャラリースペースが開設されている。
穏やかな日差しの下、ギャラリー内では8人のポートレイトが行き交う人にやさしく微笑んでいた。
2023年2月3日まで「PORTRAIT STUDIES」 HOKUTO NARIKIYOと題し、展覧会を開催していたアーティストの成清北斗さんに作品に関して話しを聞いた。
Nomado Art ノマドアート 成清北斗さん
―描かれている人は?
「私を含め8人すべてが多摩地域にゆかりのある人物。
展示会場は、多くの人が訪れる新街区のグリーンスプリングス広場と直結している。ガラス越しに、外を歩く人の目に触れて欲しいと思った。
『この人知っている人かな?』『誰かに似ているな!』と親しみを感じてもらい、ふらっと立ち寄ってもらえればうれしい。
アートを美術館やギャラリーといった特別な場所で専門家や愛好家だけが楽しむものではなく、
普通の人が気軽に参加できる展覧会やワークショップを作り出せたら。
そうすることで、自然な形でアートと市民との距離が縮まことにつながれば」。
―セル画を使用されたのはなぜ?
「セル画はかつてのアニメーション制作で使用されていた素材。
現在ではデジタル化により、セル画の技法は失われつつある。
SNSやWebによるデジタルイメージ全盛の今だからこそ、敢えてかつての動画制作につかわれたセル画を素材に使用してみたかった」。
―どの様にして描いた?
「モデルの方の写真を何枚か撮り、写真を観てセルの表側に輪郭を描き、そして裏側から色を塗り重ね厚みをもたせた。
デジタルではなくセルに直接手で描くことでアーティストの存在意義を表現したかった。
カメラのフィルターを通し、人物の一瞬を切り取った写真からアーティストとして感じたその人物の内面から醸し出される『時間』『温かみ』『内面』を描き表現。
セルという単なる『モノ』に、人間が色を重ねることで、平面に厚みを与え着彩し、そこに生じた『ズレ』『ユガミ』『ブレ』が、デジタルでは表現できない『リアリティー』につながると考えた」。
―タイトルのSTUDISESとはどういう意味ですか?
習作という意味。アートプロジェクトとは『できごと』として、その過程にこそ意義があると考えているため、あえて完成を目的としていない『STUDIES=習作』と表現した。
このセル画を起点とした技法や面白さを、自分のものにしアートプロジェクトとして今後、発展させていきたいと考えている。
成清北斗さんのアートに対する熱く深い思いを感じた時間であった。セル画に描かれた8人の生き生きとした表情とその微笑みと内面を映し出すアーティストの想いが醸し出したポートレイトをより多くの人に見てもらいたいと思う。
◆成清北斗さん
大阪府出身。立川市文化振興推進委員会委員。立川文化芸術のまちづくり協議会企画運営委員。
非営利芸術団体「Nomado Art ノマドアート」代表でアートプロジェクト、造形ワークショップの企画・実施などアートと市民を繋げる活動を展開している多摩地域を活動拠点としているアーティスト。
◆多摩信用金庫本店地域貢献スペース
多摩信用金庫本店2階にあり、地域を知る、地域を楽しむ、地域とつながる等、様々なテーマで文化・芸術を中心に多摩地域の魅力を発信する拠点(多摩信用金庫本店地域貢献スペース利用規定より引用)
(取材ライター:竹之内敬介)