東京・立川周辺のART＆CULTURE情報

アーチの先には
　子供たちが走り回っている公園を横目に、坂を下っていくと「ぜんざい」「あんみつ」と書かれたカラフルなのぼりと、「Sweets HATA」の看板が掲げられている、アーチがある入口が目に入る。

ベイクドイーズケーキや固めのプリンなど、洋菓子を目玉にしているカフェが多い中、和風な甘味に惹かれてアーチの前で足を止める歩行者も見かける。
アーチをくぐり抜け扉を開けると、そこには温かい部屋とかわいい飾り、「はーい」と明るい声で出迎えるオーナー、秦フサさんの声が聞こえてくる。寒さでこわばった体がふとゆるんでいくのを感じる。

オープンまで一歩一歩の活動
店を開く前は、お菓子職人としての仕事をしていたという秦さん。

しかし勤めていた店舗が縮小されることになり、自宅の入り口の所にテーブルを出し、クッキーなどを販売するところから始めた。
月一でお菓子を頒布する会を開いたり、注文を受けた所にお菓子を配って歩いたりと、地道に活動を続けてきた。
2015年、自宅を改装して「スイーツ秦」を創業。今年で10年目を迎える。

以来、秦さんは調理、接客、販売を一人で切り盛りしている。　

目移りするスイーツたち
店舗の左側にはテイクアウト用の秦さんのお手製のパウンドケーキやクッキーが並び、棚には季節の自家製ジャムが陳列されている。

ちなみに今の時期のおススメはゆずジャム。

自宅を改装した店舗では、イートインが出来るスペースもある。

一口の幸福感
和菓子屋さんで職人として働いていた経験を活かした、「ぜんざい」と「あんみつ」がイートインの看板メニューに名を連ねる。
この寒い季節にはたまらないぜんざい。あわ餅は表面がぱりっと焼きあがっていて、口の中で香ばしさが広がる。

あんこは原材料のあずきだけは買うが、後は手作り。

なるべく皮が薄くて上品な感じで柔らかく煮えるよう、苦心したと話す。

手間暇をかけて煮たあずきから出来たあんこは、甘すぎずしょっぱすぎずじっくりと噛みしめたい味である。

そして、もう一つの看板メニューのあんみつである。

つるつるの寒天、もちもちの求肥と白玉、とろりとした黒蜜も全て手作り。

寒天の上には丹精込めて煮たあんこと、赤えんどうがのっている。

あんこの甘さと赤えんどうのしょっぱさを両方堪能しながら、一緒に食べる寒天や求肥や白玉は、一口一口が至福を味わえる。

全てちょうどいい
中でもこだわりが見えるのが器だ。

ぜんざいを食べていた際、器の底の台が普通の物より大きくてしっかりしていることに気づいた。
器を持ち上げなくても、置いたまま食べられる。

底の台が絶妙な高さになっており前かがみにならなくてよいちょうどいい姿勢でスプーンを口に運ぶことが出来る。
添えられているスプーンと箸も特徴的だ。

スプーンは少し小さめで、一口がちょうどいい分量になっている。

箸はくぼみがついており握りやすい形になっている。
甘味の甘さ、器の大きさや使いやすさ、全てにおいて主張しすぎない“ちょうどいい”が何とも心地よい。

また来たくなる場所　
秦さんが特に大事にしていることは、「なるべく丁寧に作りたい」という想い。

食材の一つ一つがちゃんと主張し、調和しているぜんざいや、あんみつを一口食べればとその言葉にうなづける。
そして何より「美味しかったと言われるのが一番嬉しい」と語ってくれた。
今はさくらんぼを漬け込んでいて、バレンタインのチェリーボンボンの準備をしているのだそうだ

。「また来てください」と笑顔の秦さん。

季節のお菓子と秦さんに会いに、また来たくなってしまった。

　
地産地消の活動
　「スイーツ秦」のテイクアウトの焼き菓子で使用しているクルミは、国分寺で採れたものだ。

パウンドケーキやジャムの果物は近所の農家さんから頂いたものを使っている。
国分寺や近隣のカフェはなるべく地元で採れた食材を使い「地産地消」を心がけている店が多いことに気づく。
これは「こくベジプロジェクト」と言い、国分寺市内で採れた野菜の宣伝や、飲食店でメニューに使ってもらうなどの活動。

地元の農家さんと一体となって作っていくこの取り組みが、国分寺の独自のカフェ文化につながっているのだろう。

■手作り菓子　スイーツ秦
国分寺市南町2-14-6　フラッツ・秦1F　ガーデンテラス
国分寺南口徒歩3分　

＜営業日＞
毎週　金・土・日・月曜日　AM11：00～17：00

TEL:090-7270-4416
URL：https://sweets-hata.com/
インスタグラム　@sweetshata

(取材ライター:永田容子)