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「地域の文化を残し、伝えていきたい」 ミニ企画展「桃の節句」

2023年1月31日~3月5日まで立川市歴史民俗資料館(以降、資料館)と川越道緑地古民家園(以降、古民家園)で、
市民から寄贈された数々のひな人形を展示したミニ企画展「桃の節句」が開催されている。

2023.02.22

明治・大正・昭和・平成のひな人形が勢ぞろい
通常は文化財として収蔵スペースで大切に、そして安全に保管されている明治、大正、昭和のひな人形の中から、約40飾りが桃の節句を前に資料館、古民家園におでまし。

適切な空間を保ちながら全ての人形の顔、道具が見えるようレイアウトされており、ゆっくり見ることができる。

ひな人形(資料館内ラウンジ)

ひな人形(古民家園オカッテ:食事の準備、囲炉裏を中心に日常の接客、家族の食事の部屋)

資料館に入ると、華やかな毛氈(もうせん)が敷かれた七段飾りが迎えてくれる。

どの人形もやさしく微笑みかけてくれているようで、お囃子も聞こえそうな空間だ。

華やかな七段飾り(資料館入口正面)

後ろを振り返ると、明治時代のひな人形が展示されている。

装束は絹製、金屏風の絵は手描きとのことで大変貴重なものであり、時代を経て深みを増している。

明治、大正、昭和初期、人形飾りは高級品だったそうだ。
装束の他に人形の「顔」の変化を見るのもおもしろい。

屏風、ぼんぼり、お膳、菱台、重箱、箪笥、御所車など様々な道具の素材も、木や紙から現代では扱いやすいプラスティックに変わってきているという。

ひな人形(資料館内ラウンジ)明治時代

ひな人形(資料館内ラウンジ)明治時代

ひな人形(資料館内ラウンジ)時代不明

ひな人形七段飾り(古民家園オク:最上級の客を接待するための部屋)

ミニ企画展「桃の節句」展示前後の作業
例年、両施設あわせて約40飾りのひな人形・道具、その他の浮世人形の展示準備には、臨時職員とともに五月人形も含めて1年かけて行う。

古民家園の今回の展示では、収蔵スペースのある資料館から梱包箱を運ぶためワンボックスカーで2往復し、展示作業に4名で5時間近くかかったそうだ。

1か月間の展示のあとはひな人形、道具の汚れを一つ一つハケで落とし、破損の有無、数の確認を行い、梱包し箱に収める。

大変繊細なもので、すべて手作業で行っている。

破損があった場合には適切な処置を考えて補修することもある。

特に、古民家園ではひな人形を展示している主屋にある囲炉裏の灰や、開放している縁側からの砂埃が人形や道具の細かい隙間に入り込み、汚れを落とすのが大変だ。
収蔵スペースに収めたあとも、次の開催までに新たな寄贈品が加わることもあり、限られたスペースでの展示に向けて、その構成を考えることも大事な仕事の一つとなる。

資料館、古民家園の役割とは
立川市教育委員会生涯学習推進センター文化財係の学芸員・漆畑真紀子さんは
「文化財を含む資料には所有者からお預かりしているもの、寄贈いただいたものがある。

それらを持っているだけでなく地域の歴史、文化を含めて残し、市民の皆さんに知っていただくために活用する場をつくることも大切だと考えている。

年10回の企画展のほか、体験学習や出張授業などを通して地域の文化を伝えていきたい」と話していた。

立川市教育委員会生涯学習推進センター文化財係 学芸員 漆畑真紀子さん

文化財係・古民家園担当の久保義彦さんは、
「170年という歴史ある古民家を、手を加えていくのではなく、現状を残し、見学していただく皆さんに当時の暮らしや季節を見て、感じてもらいたい。

そのためにシルバー人材センターの方も毎日、古民家、庭の手入れに協力してくださっている。

季節ごとに表情を変える庭もぜひ見てほしい」と目を細めた。

立川市教育委員会生涯学習推進センター文化財係 久保義彦さん

市民から寄贈を受けた際にはその品を受け取るだけではなく、当時の様子やその品に由来する話などを丁寧に聞き、

資料などで客観的に調査、検証し「真実」を伝える役割も担っているそうだ。

5月には端午の節句の企画展が両施設で予定されている。

様々な人形、飾りを通してその時代や暮らしを想像してはどうだろうか。

立川市歴史民俗資料館
資料館の場所は、故井上重雄氏より市の文化財保護のために寄贈を受けた土地である。

市の歴史や文化、自然風土に関する市民の知識と理解を深め、市民文化の向上に寄与するため、昭和60(1985)年12月1日に開館。

12月1日は立川市制記念日にあたる。

立川市歴史民俗資料館

◆川越道緑地古民家園
平成5年3月に移築復元された立川市指定有形文化財「小林家住宅」と、平成28年4月に移築復元された立川市指定有形民俗文化財「須﨑家内蔵」が公開されている。

川越道緑地古民家園

<参考>
立川市歴史民俗資料館
https://www.city.tachikawa.lg.jp/shogaigakushu/kosodate/kyoiku/iinkai/shiryokan/rekishiminzoku/index.html
川越道緑地古民家園
https://www.city.tachikawa.lg.jp/shogaigakushu/shisetsu/bunkazai/002.html

(取材ライター:後藤直子)