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「ONE PIECE ONLY」展 ここでしか見られない 宝箱をあけようhttps://one-piece-only.play2020.jp/

写真:入り口でカラフルな宝箱がお出迎え。展覧会ではどんなお宝が見つかるか期待感が高まる

10月8日、「PLAY! MUSEUM」で「ONE PIECE ONLY」展の内覧会が行われた。

本展キュレーターで「集英社マンガアートヘリテージ」プロデューサー岡本正史さんのギャラリートークから、本展覧会の魅力を紹介する。

2024/10/09 (水) 2025/01/13 (月)
開催場所

PLAY! MUSEUM

2024.10.16

展覧会誕生秘話と5つのお宝ポイント

キュレーターの岡本正史氏(右)とPLAY!プロデューサー草刈大介氏(左)

内覧会は、会場入口にある『ONE PIECE』主人公ルフィの大きな壁画前から始まった。

まずは、PLAY!プロデューサーの草刈大介さんとキュレーターで「集英社マンガアートヘリテージ」プロデューサー岡本正史さんがそれぞれに展覧会を紹介した。

「ONE PIECE ONLY」展は2年ほど前、草刈さんが初対面の岡本さんに相談を持ち掛け始まった企画だという。

草刈さんは、本展覧会の見どころを大きく5つに分けて紹介した。

手作業で貼られた1ページ1ページが会場を覆っている。思い入れのある場面を探して、立ち止まってしまう

1つ目は、象徴的なTHE WALLという140mの長大な壁だ。

『ONE PIECE』のコミックスをばらして貼られているそう。

2つ目は、各展示室に置かれた19個の宝箱。その中には、

コミックスメイキングの過程が時系列を逆にして収納されている。

3つ目のファクトリーでは、印刷会社と製本会社の協力で今年に入ってから撮り下ろした映像作品。

マンガを作る過程をエンターテインメントとして切り取っているという。

THE WALLの回廊の上部には、カラープリントの工程を可視化する展示が空中に展開する

4つ目は、岡本さんの行っている「集英社マンガアート」としての『ONE PIECE』作品100点。

様々な手法で描かれ、印刷される一枚一枚の絵が、マンガの未来を考える機会になっている。
最後に5つ目の参加型のコーナーでは、来場者が絵を書いてその集合が一つの空間を作り出していくものだ。

絵を書くための部屋が用意されている。子どもだけでなく大人も参加して盛り上がろう

これらの5つを柱に、漫画家が書いた作品がアートになっていくプロセスを見せる展覧会となっているそうだ。

宝箱の一番大きなものは、その印刷技術を著したアーカイブだ。オフセット印刷という技術で二つの巨大なローラーが収納されている

キュレーターの岡本さんは、「誰も見たことがない」というキーワードから、マンガのアーカイブとして、作家や編集の仕事を超え、マクロにとらえた産業的な側面を保存する目的を披露した。

そのアーカイブが本展覧会を通して、私たち読者の前に展開する新鮮な視点が、本展覧会を誰も見たことのなかった展覧会として成り立たせていることが分かる。

巨大な物語となる『ONE PIECE』の出発地点

中央の広い展示室で、マンガアートの成り立ちについて話す草刈さんと岡本さん。マンガアートへの想いが伝わってくるトークを行った

内覧会は、作品の近くでギャラリートークが行われるツアー形式で進行する。
マンガは一人の作家が書いているだけでは、私たち一人一人のもとには届かないということだ。

作家の筆の先に、作品が完成し、それが印刷されることで、人々の間に広がり、アニメ化されたり、映画化されたり、たくさんの商品やイベントでキャラクターが利用され私たちにもっと身近になっていく。

草刈さんが言う『ONE PIECE』は「とんでもないマンガ」だという意味は、こうした巨大な背景をもって、大量のコミックが長期間排出され続けていることから明らかにされる。

この空間には最後の宝箱がある。ぜひその目でじっくり見てきてほしい

岡本さんは、すでに失われてしまった印刷技術もあるが、「集英社マンガアート」では、様々な技術も含めて芸術と捉えて活動している。

本展覧会には、その発想から生まれた、『ONE PIECE』のアートが数多く展示されている。

作家の才能と、印刷技術が合わさって生み出される、多くの人を巻き込む、現代芸術としてのマンガアートにつながっていると実感できる話だった。

マンガ文化創造の現場をアーカイブする
マンガというアートを考えたときに、 「週刊少年ジャンプ」とコミックスが生まれる現場の重要性が、彼らの話からはっきりと浮かび上がってくる。

その直接的な展示方法として、映像インスタレーションが用意されている。
写真技術で町をミニチュアに見せる世界観を表現する、写真家の本城直季さんによる映像作品は、3面スクリーンの迫力ある画面に投影される。

彼の手によって撮影された8Kの高精細な映像は、作業や機械の動作の隅々まで捉え、目の前に提示している。

真っ暗な空間に入ると、自分の存在が消え印刷所の景色の一部になったような感覚になる。マンガになるため、印刷されることを待つ紙の映像

本インスタレーションは、雑誌やコミックスを多くの読者の元に届けるためには、絶え間ない努力がなされていることを改めて教えてくれる。

人によっては、自宅に転がっているようなマンガ本にどれほどの苦労がなされているか、忘れていることを気づかせてくれるインスタレーションだ。

コンベアに載せられた一冊一冊のコミックは、産み出されたことを祝福されているような輝きを放って見える。

大きく映された手の映像からは、機械化・工業化の裏にも、コントロールする人々の姿を感じることができる

「ONE PIECE ONLY」展の背景を知ることで、マンガを読むという日常の中の一ページが、一つの文化の渦中にあると実感できた。

そのうえで、今の時代の人々が『ONE PIECE』にここまで心惹かれる訳は、人物の成長を通して一人一人の冒険心が刺激され、もっと広い世界へと意識が導かれるからではないだろうか。

始めの1話から1000話を超える超巨大な作品となった背景に、読者をクルーとして参加させ、共に生きてきたと思わせる作品の力があるだろう。

その現象を作り、世に生み出し続けてきたアーカイブが本展覧会の宝として見出せる。

ミュージアムショップでは、貴重な金の装丁のアイテムが購入可能。壁に貼られた大型ポスターを眺めるのも楽しい

『ONE PIECE』を好きだった人、今も好きな人、ずっと追いかけている人、作品を知る人ならだれもが、新しい見方を得られるのではないだろうか。

ここでは、実際に来て参加することで、作品の魅力にもっと近づくことができる。

この秋冬シーズン、ここでしか見られない『ONE PIECE』の宝を探しに立川へ行こう!

立川駅から徒歩10分。北口から遊歩道を抜け、緑あふれる2階に上がり、突き当り左手にミュージアムはある

■「ONE PIECE ONLY」展
「誰も見たことがない」ワンピース。
2024年10月9日(水)〜2025年1月13日(月・祝)
北米公開に先立ち、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開催
https://one-piece-only.play2020.jp/

(取材ライター:設樂ゆう子)