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DAY2 「Campus Harmony」で巡る音楽の古今東西

受付開始時からたくさんの人が集まる。事前予約の方も当日参加の方もそれぞれの列に並び、地域の人達の姿でにぎわうロビー
DAY2 「Campus Harmony」は、国立音楽大学キャンパスで、学生と教員が参加者とともに作り上げる周年記念イベントだ。
事前申し込みが必要なワークショップや、当日参加可能な体験コーナー、専門的な研究をわかりやすく伝える展示といった、対象年齢や音楽経験を問わず、誰もが音楽に親しめる一日として企画されている。
国立音楽大学の瀧川淳教授がプロデュースする同イベントは、現在と過去、西洋と東洋が混在する、音楽の多彩な歴史を一日で体験できる貴重な内容となっている。

タイムテーブルを見て、どこに行こうか迷ってしまうほどのプログラムになっている:写真提供 国立音楽大学


過去・現在・未来を旅するような音楽イベント

音楽データサイエンス・ワークショップではグランドピアノとAIが掛け合わされた最新の音楽体験が用意されていた
始めに訪れた音楽データサイエンス・ワークショップは、「くにおん生が驚くほど上手にピアノを演奏しよう」と題される、最先端技術を合わせた試み。
参加者の弾く簡単な音階の演奏を分析してAIがアドバイスをするプログラムを、学生たちが教員のヒントをもとに発展させ作り上げたという。

ピアノ演奏になれている人も、そうでない人も音楽と科学のコラボレーションを前にして緊張がみえるよう。ここでしかできない価値ある音楽体験になる
実際にピアノに触れて簡単な演奏をするだけで、国立音楽大学の学生として、どのくらいのレベルにあるか判定してもらえる。
このシステムを作成するため、多くの学生のデータをAIに読み込ませたという。
音楽をどう活用するか、学生たちのアイデアは自由に広がりを持っている。

指の動きをカメラが撮影し、ピアノの音を電子的に分析する装置と連動しているという。最新技術を人間の動きや音楽に掛け合わせる実験的な試みだ
図書館で行われた「タイムトリップ1926!蓄音機で聴く100年前の音楽」では、同館が所蔵しているビクトローラVV8-30という、貴重な蓄音機がお披露目された。
約100年前に製造されたものだという。

図書館の防音設備の整った視聴室は満席立ち見状態となり、関心の高さが伝わってきた。世代を問わず、年配の方の姿も多い
13時30分からの回ではベートーヴェンの、交響曲第5番「運命」より第一楽章と、ピアノソナタ「月光」より抜粋が流された。
静かな空間にレコードの柔らかい音が響き、会場にいる人たちは聞き入っていた。
100年前のノイズにも、それぞれのディスクごとの違いがあった。

蓄音機は電気を一切使わず手動のゼンマイ式だ。鑑賞後は実物を近くで見ようと、前方に人が集まった
一枚5分ほどのディスクを途中で入れ替えながら一曲を聴いていく。
その際に鉄製の針も交換するため、曲は途中で中断される。
時間のゆとりも含めて現代にはない音楽体験となる。
蓄音機のレコードはとても貴重なもので、「現在流通しているLPレコードでは使われていない素材」と説明があった。
音楽遺産として大切にメンテナンスしながら、実際に公開していくことが今の時代においても求められているようだ。

一曲分になる数枚のディスクをまとめたケースをアルバムと言うそうだ。写真などのアルバムはこのディスクケースの方式からきているということ
音楽デザイン・ワークショップでは、新たな驚きが待っていた。
音楽デザイン専修の研究室で開発された音楽演奏・創作アプリを使って、即興劇をつくる催しだ。
「クルミワリアライズ」という企画の名前は、チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽「くるみ割り人形」からきている。

教室内は、一見すると音楽とはかかわりのないような光景だが、PCの中のアプリにはたくさんの音が詰まっている。参加者の様子から、直感的に音を楽しむ様子が見て取れる
好きな音を画面上に配置して、そのパネルに手をかざすと音が出る仕組みだ。
PCの画面がこの世で唯一の楽器のようになる。
最後にはお馴染みの「くるみ割り人形」の原曲に合わせて、思い思いの音を合わせる合奏の時間も。
そこにヴァイオリン奏者も加わって、デジタルとアナログの競演にもなっていた。
学生がメンターとなって参加者の自由な発想を、アプリを通して表現させる手伝いをしているのが印象的だ。

実際の楽器の音を自由に取り込む録音機能も使いこなしていく参加者。好きな楽器や音の出る物を思い思いに選んでいた
教室前のロビーには、このアプリが表示されたモニタが設置されていた。
ワークショップの参加を待つ子ども達は、すぐにアプリケーションの使い方になじんでいるよう。
簡単な動作で画面のパネルから様々な音を作る仕組みは、バリアフリーに楽しめる音楽の可能性を持っている。

夢中でモニタの前で音を鳴らす子ども達は運動と様々な音が連動する楽しさを体現している。このアプリは小学校での講座などでも人気があるそうだ
小ホールと大ホールで開かれる2つのコンサート
講堂では、2つのコンサートが用意されていた。
このコンサートはそれぞれ事前のワークショップと連動しており、参加者を巻き込んだ舞台となる。
小ホールでは「みんなでお祝いしよう、くにおん100周年!くにおんゆかりの曲によるコンサート」が行われた。
くにおん所縁の音楽家として、久石譲さんの曲が鍵盤楽器専修の野村優羽さんの電子オルガンで演奏され、スタジオジブリの映画音楽で親しまれる「さんぽ」では、会場がその力強く多彩な音の中に歌声を合わせた。

卒業生である山崎先生の指揮で「大切なもの」を合唱する現役くにおん生たち。歌詞の意味は美しいハーモニーに深く乗せられていた:写真提供 国立音楽大学
合唱曲「大切なもの」を作詞・作曲した山崎朋子先生を舞台に迎えたインタビューでは、国立音楽大学時代の思い出や、作曲秘話などが語られた。来場者とのQ&Aでは、子ども達が本物の音楽家と対話できる貴重な時間に。
村松崇継コーナーの命の歌では、竹内幸大さんの繊細なピアノ演奏に会場は静かに聞き入っていた。

アンコールの合唱では、子どもだけでなく保護者達もこのイベントを通じて音楽に癒されているようだった:写真提供 国立音楽大学
イベントの最後には事前のワークショップに集まって練習を重ねた子どもたちによる踊りや歌が発表された。
ワークショップを運営する音楽教育専修の学生たちは子ども達に寄り添って歌い、音に合わせて体を動かす喜びを共に体感していたように見えた。

藤田玄播がくにおんで青春時代を過ごした思いが込められた作品は、今も大切に奏でられ続けていることが伝わってくる:写真提供 国立音楽大学
16時30分から大ホールで、最後のイベント「教科書にのっている曲を生の演奏で聴こう!」が開催された。
DAY2のフィナーレにふさわしく、荘厳なオルガンのある舞台で100周年を記念して学生公募から選ばれた「A memorable fanfare ~for KMC’s 100th anniversary~」が鳴り響いた。
続いて吹奏楽によるくにおん卒業生、藤田玄播による「キャンパス・フェスティバル・マーチ」が演奏された。

現役くにおん生と附属校の高校生が入り混じったオーケストラでは、圧巻のオペラ曲が響き渡った:写真提供 国立音楽大学
タイトルにあるように、教科書に載っている、音楽の授業で聴いたことのある曲が生で演奏される贅沢な音楽体験になった。

ジャズ専修の学生たちのバンド演奏では、各楽器の音がそれぞれに主張しながら、一つのリズム、一つの音楽を創り出していた:写真提供 国立音楽大学
ジャズ専修の学生たちのバンド演奏も、大きな舞台に負けない力を発揮し、即興を交えた奏法で聴衆の心をつかんでいた。
「I Got Rhythm」「Tea For Two」「What A Wonderful Word」と、どれも耳になじんだ曲ばかりだ。

ミュージカルの舞台には、オーケストラのほかにミュージカル・コースの学生が登場し、歌いながら民衆の役を演じる。そこにワークショップを受講した人たちも加わり、大迫力の演出となっていた:写真提供 国立音楽大学
コンサートのラストナンバーとなる「1日の終わりに~民衆の歌」は、ミュージカル「レ・ミゼラブル」でも特に人気のある場面で使われている曲だ。
オーケストラによる演奏と高揚感のある歌の力は観客の感情を動かし、ホールを一つにする音楽の力となって、一日の最後を締めくくった。
イベント全体が低年齢の子どもたちにも配慮され、出入り自由とし、ドアを開けたままのホールで行われるコンサートは、非常にまれなものだろう。
プロデューサーの瀧川教授の抱く、音楽教育の裾野を広げていくための想いが込められている。
立川駅からモノレールですぐのところに、「音楽を愛し皆で共有しよう」という想いを持つ場がある幸いを、実感する一日となった。
「くにおん100フェス!」は終了したが、今後も一般に公開された企画などをチェックして、ぜひ足を運んでほしい。

雨が降る中、集まった大勢の人々。ホールから出てくると、思い思いに感想を話しながら、笑顔で帰路に着いた
■国立音楽大学
東京都立川市柏町5-5-1
国立音楽大学 – くにたちおんがくだいがく – 公式ホームページ
国立音楽大学100周年[国立音楽大学100周年特設サイト – くにたちおんがくだいがく]
(取材ライター:設樂ゆう子)