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interview

立川は“住んでいい街、働いていい街” 「本社を建てるなら絶対立川」と思っていました。

立川は“住んでいい街、働いていい街” 「本社を建てるなら絶対立川」と思っていました。

清水浩代さん
株式会社壽屋 副社長

立川発祥の株式会社壽屋の社長であり夫の清水一行さんと、二人三脚で会社を牽引する副社長。JR立川駅北口の第一デパートに「ホビーショップ・コトブキヤ」があった頃は、「赤いエプロンのお姉さん」としてお店に通う子どもたちに親しまれていた。その後壽屋は、スターウォーズ、バッドマン、ファイナルファンタジー、エヴァンゲリオンまで…話題作を次々とフィギュアにし、ホビーメーカーとして海外にも進出。副社長となった現在は店頭に立つことはなくなったが、立川市内の子どもたちが夢を形にする事業を資金面で支援する「ウドラ夢たち基金」や市内小学校への「出張プラモデル教室」など、地域貢献を積極的に行っている。

壽屋さんは、今年(2023年)に70周年を迎えたとお聞きしました。御社について教えてください。

壽屋は、1953年に先代の清水一郎が創立した時は、人形と玩具を扱う小さなお店でした(写真左上:1955年頃の壽屋店内の清水一郎氏)。

その後、1966年にJR立川駅北口「第一デパート」に「人形と玩具 壽屋」を開店。1980年の“ガンプラブーム(※1)”到来もあり、模型製作に必要な材料や道具も充実させ、本格的なホビーショップとなりました(写真右上)。1984年にはオリジナルの“ガレージキット(※2)”の販売開始や、お客様をはじめイラストレーターやデザイナー、造形作家のみなさんとの交流から、オリジナル商品が次々誕生し、小売業だけでなく、プラモデルやフィギュアのホビーメーカーへ発展、海外への進出も実現しました。

その後、「第一デパート」の老朽化と立川駅北口の再開発による移転を経て、2016年サンサンロード添いに現在の新本社ビルを竣工し、現在に至ります。本社ビルには、低層階にテナント、2階に弊社ホビーショップ、テナント、3階にホール、そして上階に弊社のオフィスがあります。

※1:アニメ「機動戦士ガンダム」のシリーズに登場するモビルスーツ、モビルアーマーと呼ばれるロボットや戦艦などを立体化したプラモデルのこと。

※2:既製のプラスチックモデルに飽きたらず、自身の造形的ニーズやクオリティにこだわるマニアたちが、自分自身で造りあげた原型をもとに型取りし、レジンキャストで生産する手作りの模型のこと。

海外進出もされて、今や世界的にも有名な壽屋さんですが、新本社を都心に移転されなかったのはどうしてですか。

もちろん、お店が立川から始まったということも大きいのですが、わたしは結婚してからずっと、毎日立川に通って仕事をしているでしょう。働いている人にとっては、日中開いているお店、見える景色や吹いている風など、毎日過ごすところが豊かで心地よいことが大事なんです。立川は、飲食店や商業施設も充実していて、空が広くて風を感じられる”住んでいい街、働いていい街”。「本社を建てるなら絶対立川と思っていました。そしてこの本社の場所にご縁があったことに感謝しています」。

そして、壽屋は、感動と驚きを提供する会社、遊びや余裕も必要です。だから、本社ビルの設計には、毎日通うことになる会社が快適に過ごせるように社内でプロジェクトチームを作って、壁紙や床、照明なども全部、うちの子たち(社員)の遊び心やこだわりをふんだんに取り入れて設計しました。贅沢すぎる建物だと、よく言われます(笑)」

はい。JR立川駅北口の第一デパートに「ホビーショップ・コトブキヤ」があった頃は、「赤いエプロンのお姉さん」として私も毎日店頭に立っていたので、通ってくるお客さんや地域の子どもたちとの接点がありました。今は、店頭での接客がなくなってしまったからこそ、地域貢献の活動を大事にしています。

市内の子どもたちが夢を形にする事業を資金面で支援する「ウドラ夢たち基金」もそうですが、「夢を叶える」ために「影響していくこと」には、価値があります。以前の私は、“一緒にいて心地いい人”になりたいと思っていましたが、今は、私と話すと、何か実現に向けて行動に移せる、そんな”影響する人”になりたいと思うようになりました。 

「出張プラモデル教室」では、市内小学校11校に男性女性、新人熟練関係なく社員が出向いて、ニッパーの使い方から教えます。1回90分、もしくは45分のクラス2単位の教室なのですが、休み時間になっても水も飲まずトイレも行かずに、子どもたちが集中して座ってプラモデルを作っている姿を見て、先生が驚いていました。脳科学的にも、プラモデルを作っている時の脳波は集中しているけれどリラックスしている状態で、座禅をしている時と同じ効果があるということがわかっています。将来、立川出身の子どもたちは男女問わず、みんなニッパーの使い方を知っている、プラモデルを作ったことがあるというようになると面白いですよね(笑)

他にも、中高生が利用している「たちかわ電子図書館」でも、うちの“ものづくり”に関わる社員を中心としたメンバーが、デザインやイラスト、造形、模型工作、ライトノベルなどの選書を行ったコンテンツを提供しています。

副社長業でお忙しい中、どんな時に本を読んでいらっしゃるのでしょうか。

気になった本はAmazonから会社に送って、空き時間に少しずつ読んでいます。たまたま開いたページに、どきっとするような言葉があったりして、そういう出会いも面白いですよね。最近は忙しくて本を読む時間がほとんどないのですが、車の移動中に「Audible」や「オーディオブック」をよく聞きます。続きが気になって「早く車に乗りたい」を思うことも多々あり、気になりすぎると、会社のランチタイムに聞くこともあります。

コミュニケーションはキャッチボール
著者:伊藤守/出版社:ディスカバー21

この「コミュニケーションはキャッチボール」(著者:伊藤守/出版社:ディスカバー21)は、たぶん20年以上前から時々引っ張り出しては見ている本で、私のベースになっている本です。著者の伊藤守さんは、人と人との関係やコミュニケーション、「コーチング」に関する著作や活動で有名ですが、「コーチング」については、CoachAから定期的に送られてくるコーチングのネット配信「ハローコーチング https://coach.co.jp/」記事も、中にはスーパーフィットするものがあってとても参考になっています。

すぐ死ぬんだから
著者:内館牧子/出版社:講談社

2冊目は「audiobook」で「すぐ死ぬんだから」(著者:内館牧子/出版社:講談社)をご紹介します。内館牧子さんの作品はよく聞きます。年齢相応の考え方がとても面白くて軽快。私の年齢になると大笑いするところが沢山あって、やっぱり女性は強いな!と感じる一冊です。

ザリガニの鳴くところ
著者:ディーリア・オーエンズ/訳:友廣 純

もう一つ、こちらも「Audible」で「「ザリガニの鳴くところ」(著者:ディーリア・オーエンズ/訳:友廣 純)。長いし、ちょっとダークなストーリーだけど、女性の強さというのが、ひしひし現れていて、すごい小説だと思いました。何度もリピートして聞いています。私は、結局、映画も本も、女性主体のお話が好きなんですね。

最後に一言、メッセージをお願いします。

第一デパートでのコトブキヤが最後の日にお客様が書いてくださった壁の寄せ書きは、今も大事に保管してあります。あの頃通ってきてくれていた子たち、みんな今どうしてるかしら。近いうちに、壽屋の卒業生を募って同窓会をして再会できたらいいな。

●株式会社 壽屋 https://www.kotobukiya.co.jp/

●ウドラ夢たち基金 https://yumetachi.com/

●立川ビルボード関連記事 技術、創造力で、1店の玩具店から世界中を魅了する企業へ

https://tachikawa-billboard.com/history_list/kotobukiya

(取材ライター:小林未央)