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志慶真 健三:Kenzou Shigemaステンドハウス・アモー主催https://www.amo-stained.co.jp

日本のステンドグラスの歴史は、明治時代まで遡る。

文明開化によって西洋建築が建設されるようになり、建築や室内の装飾品として制作されるようになった。

2024.08.15

扉を開くと、そこは大人もワクワクの工房

国立駅南口の旭通りから少し入った所に、ステンドグラスの看板の建物が目に入る。
「ステンドハウス・アモー」。
ここはステンドグラス職人の志慶真健三さんが主催している、工房と教室である。
一日体験教室で初めて訪れた時、緊張気味でドアを開けると志慶真さんが「道はすぐ分かりましたか?」と温かく迎えてくれた。
棚にはカット前の大きなステンドグラス、工具、ランプなどの装飾品がずらりと並べられ、椅子に座るなり思わず、ぐるりと360度見渡してしまう。
緊張はすぐ解け、気分が高揚してしまった。

体験教室で作るのはポケットティッシュ入れ。

型紙に合わせて、ガラスを選んでいく。

ガラス一つとっても、表面の模様、手触り、色んな表情があることに気づく。

「同系色にしようか?」「ここには模様が入ってるのにしようか?」。

とても楽しい作業ではあるが、悩んでしまいなかなか決められない。

ガラス選びの後は「ハンダゴテ」という熱を帯びた工具を使用。

ハンダ(鉛・鈴の合金)を溶かして、ガラス同士をくっつけていく。

これがまた微妙で繊細な加減を要するのだ。

ちょっと加熱しすぎると、金属はすぐにぽたぽた溶けて垂れてしまう。

あたふたする私に志慶真さんのサポートが入る。

絶妙のタイミングで溶かして、手際よく伸ばし接着する。

スムーズな職人の技に思わず唸ってしまう。
丁寧に縁を磨いて、いよいよ完成。

世界でただ一つのステンドグラスのポケットティッシュケースに、思わず惚れ惚れしてしまう。
気が付けばあっという間に2時間経っており、ホクホクしながら大切に持ち帰った。

 

ステンドグラスとの出会いは突然に

教室・工房名の「ステンドハウス・アモー」。

イタリア語かと思いきや、店名の「アモー(amo)」というのは、「アサシエイション、オブ、モラル」の意訳だそうだ。

「良心的団体」という意味が込められている。

志慶真さんは工房・教室を初めて43年の大ベテラン。

しかし、初めから職人を目指していた訳ではなかった。
会社勤めで仕事に忙殺される日々。

心が疲れてしまった時、銀座のデパートでステンドグラス展をやっていたのを、たまたま目にしたのが運命の出会いだった。
後ろからライトで照らされたステンドグラスが、とても素晴らしく、思わず見入ってしまう。
すぐさま東京から藤沢まで車を走らせ、友人の紹介で知ったステンドグラスの教室に通い始めた。
「作りだしたら、もう楽しかったんです」。
目を輝かせて語る志慶真さん。 
今では考えられないが、国立の駅前はたくさんの松の木が生い茂り、緑が溢れていたそうだ。

自然が好きな志慶真さんに取って国立は子供の頃から特別な場所だった。

そんな思い入れのある場所で、工房と教室「ステンドハウス・アモー」は誕生した。

聞かなければ分からなかった、ステンドグラスの役割
ステンドグラスといえば教会のイメージが強いが、志慶真さんの工房には普通の戸建てや、建築会社からの注文が多い。
注文を受けると、その家に足を運び、施主と直接会って打合せをする。

その時、必ず東西南北、その家を外から見てまわるのだそうだ。
隣の家や壁との距離、木の生えてる場所、太陽の光の射し具合などチェックしていく。
徹底して観察するのは、ステンドグラスは光を取り入れる役割があるからだ。
単に目隠しではなく、外の風景も取り入れる。
「家の窓は、内と外を遮断するものではない、つなげるもの」。
思わずぐっとくる。 
「綺麗だなー」とただ眺めていたステンドグラス、しかし初めて知った制作過程、志慶真さんの職人魂に、思わず聞き入ってしまう。

一期一会の出会い

一日体験の他に、教室もある。

通ってる生徒の年齢層を聞くと老若男女と幅広く、20年、30年通っている生徒もいるそうだ。
教室と工房を開いてよかったことは「ありすぎて分からない」と答える志慶真さん。

仕事を受けたらその時、その時、精一杯作ってきた。

様々な人とめぐり逢う中、仕事も人も一期一会の出会いだ。
そんな色んな人とめぐり逢い、助けてもらった。

「助けたことは覚えてないけど、助けてもらったことは覚えている」。
一言、一言に感謝の想いがあふれ出る。

趣味は、釣りと山登り。

ハゼ釣りが好きで都内の川に行ってたが、近年の猛暑であまり外には出歩かなくなった。

しかし最近日傘の良さを体感し、愛用してるのだそう。

「こんなにいい物を何で今まで使わなかったのだろう」と日傘について、この日一番の笑顔で目を細め嬉しそうに語ってくれた。

ステンドグラスを作る用事がなくても、また来たいと思ったのは私だけではないはずだ。

<ステンドハウス・アモー>
東京都国立市東1丁目18-13

※電話でのお問い合わせ
携帯:090-1695-1965(ショートメールでもOK)
TEL FAX:042-576-2552(固定電話の場合は教室時間内におねがいします)
E-Mail amo.stained@gmail.com
HP https://www.amo-stained.co.jp

(取材ライター:永田容子)