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お江戸へタイムスリップ!「浮世絵 歌川広重《名所江戸百景》」展https://www.tamashinmuseum.org/post/edohyaku

浮世絵といえばゴッホをはじめ西洋の画家たちに大きな影響を与えた日本の美術。
その絵師である歌川広重は数多くの風景画を手掛け、昔も今も国内外で人気だ。

広重の風景画シリーズで最晩年に描かれ大ヒットした「名所江戸百景」の展覧会が、立川のたましん美術館で9月16日まで開催されている。

2024/07/20 (土) 2024/09/16 (月)
開催場所

たましん美術館

2024.08.07

立川駅北口から、モノレール沿いの開放的な遊歩道サンサンロードを行くとすぐ左手にある「たましん美術館」。
中に入ると大きな蜂の巣のオブジェ《たまりば》(長谷川仁)が迎えてくれる。
これもアート作品の一つで、子供が喜びそうな楽しいエントランスとなっている。
その奥の青い壁の中が展覧会場。
ここがお江戸への入り口だ。

初めての浮世絵展覧会
落ち着いた雰囲気の展示室に並んでいるのは150年以上前の東京、「江戸」の風景を描いた浮世絵。
日本橋や上野、新宿、両国などの街並みと多摩地域の景色、そしてそこで過ごした人々の生活が生き生きと描かれている。
これらは歌川広重晩年の最高傑作「名所江戸百景」の中から選ばれた約40点と、多摩地域を描いた歌川広重、葛飾北斎らによる10点の浮世絵だ。

展覧会を担当した、たましん美術館学芸員の藤森梨衣さんに話を聞いた。
「浮世絵だけの展覧会は、たましん美術館では今回が初めてなんです」。
会場では様々な意欲的な取り組みがなされている。

名所江戸百景
歌川広重が描いた「名所江戸百景」は、斬新な構図と鮮やかな色彩が特徴の浮世絵だ。
「カメラがない時代なのに、人や街並みをよく捉えて描いている」と藤森さん。
人だけでなく犬や猫といった動物の自然な描写や、ドローンもないのに上空高くからの視点で描かれた風景もあり、見るほどにその描写力に驚かされる。
会場では情緒あふれる春夏秋冬の江戸の風景が、4つの空間に分かれて展示されている。
入り口から奥まで作品を見ていくと、まるで江戸で1年を過ごしている気持ちになれる。

みどころ満載の展示
展覧会では子供も大人も存分に楽しめる仕掛けがたくさん用意されている。
全て藤森さん考案の新しい試みだ。

見どころその1:分かりやすい解説
作品ごとに貼られている解説文がとても分かりやすく、江戸のことを誰でも身近に感じられるように工夫されている。
どこの街の風景でどんな風習が描かれているのか、広重による表現の意図などが、親しみやすい話し言葉で書かれ、加えて漢字に読み仮名がふられているため、子供にも読みやすい。

見どころその2:ワークシート
展覧会を見て気に入った作品の名前や、その好きなところを自分で書き込んだり、記載されたクイズに回答したりできる紙が会場入り口に置かれている。
作品や解説文を最後までしっかり観ないと答えられない内容だ。
小中学生用と高校生・大人用、全年齢用とあって、子供も大人も主体的に学べる。
「他の美術館でも子供用のワークシートはあったが、大人の自分もやりたかった」と藤森さん。
大人用のクイズに挑戦してみたが、なかなか難しく、真剣に答えを探したので浮世絵に少し詳しくなった。

見どころその3:クイズ
いくつかの浮世絵のそばにパネルが貼ってあり、作品に描かれた人々の生活や風景についてのクイズが書かれている。
パネルはめくれるようになっており、その下に答えと解説がある。
クイズの答えを考えるうちに、作品をよく見る観察力と想像力が鍛えられる。

見どころその4:浮世絵の作り方
浮世絵は、絵師が描いた線を木の板に彫って絵具を塗って、紙に転写してできる版画だ。
その工程は全て手作業で、それぞれ職人が分担して浮世絵を作る。
今回、絵が彫られた木の板「版木」の実物も展示されている。
「アナログな手作業の技術に注目してほしい」と藤森さん。
会場には同じ絵柄を摺った、2枚の作品が比較できるよう展示されている。
摺りによって色味やグラデーションが違っていて、手作業であることが分かっておもしろい。

多摩の風景
会場には「名所江戸百景」に加えて、多摩地域の風景が描かれた浮世絵が飾られている。
多摩川や小金井、吉祥寺の井の頭の池など、身近な場所の昔の姿は今と見比べるととても興味深い。
多摩地域は、昔から絵に描かれるほど魅力的な場所なのだと改めて感じられる。

夏休みの自由研究にも
今回の展覧会では、作品を飾る高さを通常より10センチは下げているという。
夏休みの宿題のために小学生が来館することを想定し、子供が観やすい位置にしたという。
これもたましん美術館では初めての試み。
「子供の頃から美術館に親しんでほしい」と藤森さんは願いを語った。
会場には「美術館でのおやくそく」と書かれたシートも置かれている。
「はなすときは小さな声で」「作品を大切にしよう」などいくつかのマナーが、広重が描いた可愛い動物や人の絵と共に載っている。
私たち大人もちゃんと守りたいマナーだ。

「昔の人々がどのような生活をしていたのか、絵師がそれをどのように描きたかったのか、浮世絵を観て思いを馳せてほしい」と藤森さん。

今年の夏はどこへ行こうかと考えている方は、涼しい美術館でお江戸へタイムスリップしてみてはどうだろうか。

■企画展「浮世絵 歌川広重《名所江戸百景》」
会場:たましん美術館/立川
会期:2024年7月20日(土)~9月16日(月・祝)
主催:公益財団法人たましん地域文化財団
HP:https://www.tamashinmuseum.org/
(取材ライター:いけさん)