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アートと人と〜ファーレ立川〜http://www.tachikawa-chiikibunka.or.jp/faretart/

東京都立川市。JR立川駅から北へ5分ほど歩くと「ファーレ立川」と呼ばれる区域があり、ここには世界36ヶ国92人の作家が手掛けた109点のパブリックアートが点在している。いわば街全体が美術館のようなものだ。

1994年にこの街がオープンしてからずっと、アートたちは行き交う人々を見つめてきた。

彼らに気付いた人は触ってみたり腰掛けてみたり、気付かずに通り過ぎたり、時にはぶつかったりもしているだろう。

6月21日、そんなファーレ立川で「夏至の日のアートツアー」が行われた。

『一年中で最も昼が長いこの日、何かが起きる!』というミステリアスなコピーで宣伝されたこのイベントは、1997年に結成され、ボランティアでアート見学のガイドや作品清掃を担ってきた「ファーレ倶楽部」が、3年前から毎年企画している見学ツアーである。

当日、朝から雲は厚い。時おり小雨がパラつく空模様にもかかわらず、集合場所の赤い植木鉢前には続々と参加者が集まってきた。総勢37名が5グループに分かれて、周辺のアート見学からスタートする。

初めて訪れた人はもちろん、リピーターにもガイドによってテイストの異なる解説が楽しめるという評判だ。

2018.07.04

 

 

和やかに作品を鑑賞しながら歩を進めるうちに時は経過し、正午になると何かが起きるーという「現場」へ移動する。

11時55分に全員が集結し、その時を待つ。10分ほど前には雲が切れて一瞬青空が覗き、観衆の期待は高まる。

しかし、12時を過ぎても雲に覆われた太陽は姿を見せることなく、惜しくも「何かが起こらず」解散となった。

 

 

 

 

ここでその「何か」の種明かしを。

ファーレ立川アートの作品No.108は、カナダの作家レベッカ・ベルモアの手による車止めの作品である。

シンプルな鏡面仕上げのステンレスプレートには、カナダの先住民族アニシナベ族の文字で「私は太陽を待つ」と彫り込まれている。この民族の血を引く作家は、ファーレ立川と別の場所に生きている自分の存在のつながりとしてこの作品を置いた。

1年に1度、夏至の日の正午の太陽がこのプレートに当たると、その反射光が正面の建物の外壁に掛けられたもう1つのプレートを照らす。そこでは日本語で書かれた「私は太陽を待つ」の文字がまばゆい光を放つ。

2つの言語の同じ言葉が重なり合うこの瞬間だけ、異なった地域が感応し合えるのだという意味がこめられている。

 

 

実のところ、前後2日くらいは位置が多少ずれるものの現象を見ることはできる。

毎年のように前後の日は晴れが多いのに、なぜか夏至当日は晴れない。上の画像は翌日撮影されたものである(11:53と12:00の撮影)。

 

カナダ人の作家が日本の「梅雨」という季節を知っていたかどうか定かではないが、めったにこのタイミングで見ることができないからこそ、より大きな期待と感動を呼ぶのだろう。来年の「何か」にぜひ期待してほしい。

 

<参考URL>
* ファーレ立川アート  http://www.tachikawa-chiikibunka.or.jp/faretart/
* ファーレ倶楽部  https://www.faretclub1997.net/