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喜歌劇(オペレッタ)「こうもり」~すべてはシャンパンの泡のせい。~

立川市民オペラ公演2019が3月16日・17日、たましんRISURUホール大ホールで開催された。
※J.シュトラウスⅡ世 作曲 全3幕 原語上演・字幕付き(日本語台詞)
※立川市民オペラの会、(公財)立川市地域文化振興財団主催。

2019.04.08

オペラはオーケストラ付でソリスト、合唱などの音楽的要素、台詞と踊りがある演劇的要素、舞台美術を含めた「総合舞台芸術」である。

その中で喜歌劇は、「オペレッタ」といわれている。

2017年に日本で上演された海外作品では、1位「カルメン」、2位「こうもり」、3位「椿姫」(日本のオペラ年鑑による)と、「こうもり」はJ.シュトラウスⅡ世の最高傑作として、人気の演目なのが一目でわかる。今回は、市民オペラがそんな人気劇を披露した舞台を取材した。

 

本番公演に向け、プレイベント開催

オペラというと敷居が高い印象があるが、今回の 「こうもり」は 日本語の台詞で演じられ、陽気なウインナワルツにポルカと親しみすく、わかりやすい内容が人気となっている。

そうした今回の劇の魅力を伝えるため、「立川市役所ロビーコンサート」、「レクチャー&ミニコンサート」、「青少年のためのゲネプロ見学会」などプレイベントを催し、本番公演を前に市民へのアプローチも行ってきた。

2月27日(水)のたましんRISURU小ホールにて行われた「レクチャー&ミニコンサート」。

レクチャーは演出の直井研二氏によってわかりやすく、演目内容、時代考証、登場人物の相関図など全3幕を、ぎゅぎゅとつめこんだ内容で進められた。

 

(立川市地域文化振興財団より写真提供)

オペラでは、指揮者、稽古ピアニストオーケストラ、合唱、ダンス、レセプショニストなど表で活躍する19項目を超える役割を担う人々が、演出家、照明、衣装、音響デザイナー、大道具制作など裏で活躍する18項目もの様々な役どころの人々など、多くの人々が関わり、1つの舞台を造り上げていることが説明された。

中には、日本にはあまりいないプログラムの、時代考証を考えたり、観客と作品とをつなぐ重要なポジション「ドラマトゥルク」と呼ばれる役割もあり、オペラの歴史的背景にも、レクチャーを受けた来場者たちは一様に関心を持っていた。

ソリストは今回5人出演し、洒脱な台詞や軽妙な振りなど、本番さながらの全11曲の歌を交え、観客を圧倒した。

(立川市地域文化振興財団より写真提供)

(立川市地域文化振興財団より写真提供)

ソリストたちはそれぞれの役に、100人近いオーディションの中から選ばれた精鋭のプロフェッショナルである。「小ホールでもこの響きである。大ホールではいかばかりであろうか」と、来場者たちの期待が一気に高まるのを感じた。

 

市民主体で

立川市民オペラの会は有志の市民や立川市民オペラ合唱団、立川管弦楽団の代表など地域に密着したオペラの普及活動を行っている。

平成4年11月に 「TAMAらいふ21」の事業の一つとして 第 一 1 回立川市民オペラ歌劇 「カルメン」 を、立川市制50周年記念事業として第2回立川市民オペラ 歌劇「ラ・ボエーム」を 開催 。その後「合唱から学ぶ、市民オペラ学校」を経て、立川市民オペラの会を設立。 歴史を積み重ねてきた。

各所の協力を得て、市民オペラが継続開催しているのは立川の誇りといっても過言ではない。その吸引力として立川市民オペラ合唱団は、特筆すべきだ。

団員数60名を超え、1年をかけ250ページ以上もの楽譜を覚え練習を重ねてきた。
舞台での入念な立ち位置確認なども含め、最終段階の練習が大ホールで行われた。

今回、団長の岸本さん、副団長の有山さん、長年在籍されている 初期メンバーの畠山さんからお話を伺った。

合唱団に入るきっかけは「ベートーヴェ ンの第九を歌ったりしたこと」や「プロの音楽家と同じ舞台にたてること」。「若い人から年齢を重ねた人まで、幅広い年齢層の中で、コミュニケーションの場として楽しい場です。初めての人でもベテランがフォロー出来る環境は、この立川市民オペラ合唱団のよいところです」と話す。

観客のお客様が笑ってもらえるように表情をつくっていく。歌だけでなく、こういった日々の努力が演技力を磨いていくと、皆、口を揃えてやりがいについて力説していた。

畠山さんは、気仙沼出身の元教員。東日本大震災後、避難していた被災地の若者をこのオペラに招待してきた経緯や、そうした社会貢献ができることに素晴らしく感動したと話していた。

本番前日の3月15日(金)、小中高校生を対象にゲネプロ( 衣装付のリハーサル )を公開した。

 

いよいよ本番の幕が開く

本番当日、大ホールはオペラ劇場に一変し、オーケストラピットからは各々の楽器のチューニングの音が聞こえ、これから始まる舞台の華やかな雰囲気に胸が高鳴る。オーケストラは「TAMA21交響楽団」。三多摩地域で活動しているアマチュア楽団だ。

立川市地域文化振興財団より写真提供

舞台には、大きなチェスの黒白ナイトの駒が並び背景を際立たせていた。字幕は舞台両脇に30文字程度で的確に読める工夫がなされている。

 

立川市地域文化振興財団より写真提供

ソリストたちのアリアも秀逸だが、2幕で夜会の招待客に扮した市民オペラ合唱団の人々も交えた「乾杯」は素晴らしい。「ランララランランラー」と、一気に歌いあげる。それぞれの衣装を身にまとい、出演者は華やかにこの時を迎えたこと、感無量だっただろう。
2幕最後の「われら皆、兄弟姉妹」。盛り上がりを迎える。

3幕フィナーレにも歌われる「乾杯」は圧巻。復讐劇とはいえ、「すべてはシャンパンのせい」。

 

立川市地域文化振興財団より写真提供

客席一体が幸せな時間で終了する、まさに「ハッピーエンド」な時間を共有することが出来た。

この立川で、傑作オペラが見られる文化芸術の土壌が育っているということは、市民にとっても魅力的な街としてアピールできよう。また次回の公演「トゥーランドット」に期待したい。

「こうもり」のあらすじ(レクチャー配布資料より)
19世紀後半のオーストリアのとある町。「こうもり博士」ことファルケ博士は3年前、友人である金持ちの銀行家アイゼンシュタインと仮面舞踏会に出かけた。その帰途、泥酔していたファルケは仮装のこうもり姿のまま道ばたで眠り、放置され夜が明けてしまった。公衆の前で大恥をかいたファルケはいつかアイゼンシュタインに仕返しをしてやろうと目ろんでいた。そしてついに「こうもりの復讐」劇を決行する!