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地域とつながるアートプロ集団「たちかわサンクリーズ」の謎に迫る

富士山の見える多摩川沿いに位置する、平成16年に閉校した多摩川小学校。
この場所がリニューアルされ、平成27年からカルチャー・ファクトリー「たちかわ創造舎」として利用されていることをみなさんはご存知だろうか?

今回はこの「たちかわ創造舎」の3階を拠点に活動するアート・クリエイターたちによる「たちかわサンクリーズ」の謎に迫ってきた。

2024.09.02

「たちかわサンクリーズ」とは……

「たちかわサンクリーズ」を生み出した場所である「たちかわ創造舎」は、廃校となった立川市立多摩川小学校の校舎や体育館などの貴重な資源をいかしたカルチャー・ファクトリー。

多摩エリアの文化を担う人々が集い、地域の方々と共に歩みながら、文化芸術に関わる多岐にわたるプログラムを展開することを目的としている場である。

フィルムコミッション事業として、校舎の2階を中心に体育館、校庭、屋上、昇降口などが撮影に貸し出され、ドラマや映画、バラエティなどのロケ地として使われている。

また、創業支援などを行うインキュベーション事業として、立地の問題から一般的なビジネスでなく、制作に場所を必要とするアートクリエイターのためにシェアオフィスやシェアスペースとして3階フロアが活用されている。

その3階を拠点としているのが「たちかわサンクリーズ」。

「たちかわ創造舎3階クリエイターズ」という表現をもじった名前で「地域の人々に覚えてもらいやすいようにスポーツチームのような愛称にした」とのこと。

現在のたちかわサンクリーズは、「たちかわ創造舎」のディレクターの倉迫康史さんが代表を務めるTheater Ort(劇団)の他、演劇集団・風煉ダンス(劇団)、内野しんさん(チョークアーティスト)、大園康司さん(振付家・ダンサー舞台音響)+金子愛帆さん(ダンサー・フォトグラファー)、くちびるの会(劇団)が所属している。

それぞれ違った個性をもつ、アート・クリエイターたちだ。

ディレクターの倉迫康史さん

「たちかわ創造舎」A棟3階 「たちかわサンクリーズ」活動の拠点

この日舞台で使用する作品を作っていた「演劇集団・風煉ダンス」の演出家・林さん

 

「たちかわサンクリーズ」の活動は?
たちかわ創造舎の3階をシェアオフィスとして利用し始めて、今年で9年目。

シェアオフィス利用の任期は5年のため、現在のメンバーは2期目にあたる。

シェアオフィスのメンバーになるには面接などの審査があり、自分の活動だけでなく、地域と関わり市民と交流する熱意があることを求められる。

しかし、2期目として活動開始した頃は、奇しくも新型コロナウイルス感染症流行の全盛期。

メンバーは創造の場を得られたが、それを地域に披露したり交流したりする場を設けるのが難しい4年を経験してきている。

新型コロナウイルス感染症の流行で、世の中は変わった。

5類になって1年以上が経過していても、流行前と同様の活気が得られないのは、もちろんアートの分野に限ったことではない。

「だからといって、このまま状況に身を任せていて好転するはずもない……それならば、プロとしての活動をしながら、地域密着で子どもたちだけではなく大人も含め、いろんな芸術体験をより積極的に提供していくことが必要なのでは、と感じ『たちかわサンクリーズ』と名付け、個々の活動に任せるのではなくチームとしての発信を具体化した」という。

「たちかわ創造舎」のある学区の学校運営評議員も務めている倉迫さん。

評議員として関わっていく中で、地域で子どもたちが様々な文化体験をする機会が減っていることや、そうした機会を提供できる同年代が少ないことを実感したとも話してくれた。

これらの問題点を解決する一手としても「たちかわサンクリーズ」の活動が生きるというのだ。

子どもたちにとっては日常ではあまり接点のない「おもしろい大人」を知ってもらうこと。

これにより子どもの中に秘めてる才能が芽吹く可能性が生まれる。

一方で大人には「この街にはこういう面白い人たちがいてよかった」と思ってもらえること。

これが大人の新たなコミュニティを生む可能性になりうる。

普通と違う体験、普通と違う世界が見られる、そんな役割のスタートとして「そーぞーたいけんワークショップ」が企画された。

「そーぞーたいけんワークショップ」は何をする?
「そーぞーたいけんワークショップ」全体の対象はすべての世代だ。

クリエイターが地域の人たちに披露するだけの交流ではない。

「実はそういう事をやってみたかった」という地域の人たちと一緒に「自分たちが創作してみる」「見るだけじゃなく実際にやってみる」を体験してもらえるよう組み立てられている。

新型コロナウイルス感染症の流行を経てきた時代背景はあっても、「協働体験」の重要性は高く、ここはそれが叶う場となっている。

話を聞いたのは「たちかわサンクリーズ」の「そーぞーたいけんワークショップ」活動初回実施直後だった。

この日の講師は振付家・ダンサーの大園康司さん。

テーマは小学生向け「からだそうぞう探検」。

からだを使ってゲームをしたり遊んだりするなかでダンスの動きを発見し、最終的には一緒にダンスの振付を考えて踊ってみるワークショップだったそうだ。

立川市内のみならず、遠方からバスや電車を乗り継いで参加してくれた子どももいたという。

今回のワークショップは小学生が対象だったが、講師の大園さんは「子ども向けであることを意識しないように行った」と話してくれた。

様々な子ども向けのワークショップや創作の場は、大人がプログラムする中で子どもの限界を想定し、その手前までの内容になることが多い。

しかし「『ちょっと無理だと思うこともやってみる』を促すことで、子どもたちは大人たちの想定より先に進んでみたり、自分たちなりのアレンジを見せてくれたりするから」だというのだ。

加えて倉迫さんは「そーぞーたいけんワークショップ」について、「アートのプロによるワークショップだから感じられる、クリエイターの創造性とか芸術性とか奥深いものを感じてもらえるものにしたい」という。

プロだから促せる芸術性の奥深さを感じてもらいつつ、プロだから予測できるリスクの手前まで、目を配りながら楽しんでもらえるということができるということなのだ。

この日の講師大園康司さん

「そーぞーたいけんワークショップ」の今後の予定は下記の通り

・2024年10月20日(日)  パパママ向け写真撮影ワークショップ(講師:金子愛帆さん)
・2024年11月16日(土)  クリスマスツリーを作るワークショップ(講師:内野しんさん)
・2024年 1月13日(祝)  巨大人形を作ってあそぶワークショップ(講師:林周一さ

「たちかわサンクリーズ」メンバープロフィール
「たちかわサンクリーズ」では、出張でのワークショップや公演の依頼も受けているそう。

保育園・幼稚園、小学校・中学校・高校、福祉施設など、どんな場所でも相談可能。
お問い合わせ:たちかわ創造舎(電話:042-595-6347またはメール:info@tachikawa-sozosha.jp)

【倉迫康史】

たちかわ創造舎ディレクター。舞台演出家。社会教育士。一般社団法人Theatre Ort(シアターオルト)代表理事。

年内の活動予定→「親子で参加する演劇ワークショップ おやこちゃれんじ」くにたち市民芸術小ホール、「オトナの朗読劇 太宰治モノローグス」昭島市・マルベリーフィールド、「ファーレ立川アートミュージアム・デー 朗読劇」、子どもとおとながいっしょに楽しむ舞台vol.8『ぼくはおくりもの』」たましんRISURUホール

https://x.com/kjkurasako

「親子で参加する演劇ワークショップ おやこちゃれんじ」
https://kuzaidan.or.jp/hall/workshop-oyakochallenge/

「オトナの朗読劇 太宰治モノローグ

https://mulberry-field.com/night-readers-theater

【muunbase 内野しん】

チョークアート&ハンドレタリング作家・色遊びのレッスン認定講師・キットパスインストラクター。

チョーク・オイルパステル・ポスカを使い黒板やガラスに手描き文字&イラストで親しみやすい看板アートの制作をしています(子ども未来センターのくるりん農園の看板は私が作りました〜^O^!)。

子ども向けのイベントでは主に水性チョークのキットパスでウィンドウアートや手形アートのワークショップを多数開催。機会があったらぜひ遊びに来てくださいね♪
https://www.muunbase.com
https://www.instagram.com/muunbase/

 

【大園康司】


振付家・ダンサー/ワークショップデザイナー/舞台音響家
振付、企画・プロデュース、ワークショップなど、ダンスと社会が繋がるための活動を展開。

年令性差問わず誰もが楽しみふれあえる場づくりを目指している。

第四回エルスール財団コンテンポラリーダンス部門新人賞受賞。

青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。

振付家・ダンサーとしての活動のほか、舞台音響家としても創作に携わる。
https://twitter.com/biggardenowi
●今後の予定
音響・ムーブメント振付:
理性的な変人たちVol.4「寿歌二曲」
https://buoy.or.jp/program/hogiuta2kyoku/

出演:さいたま芸術劇場オープンシアター ダンスのある星に生まれて2024
「ラ・ラ・ラ シアターミュージアム」
https://www.saf.or.jp/stages/detail/101306/

ファシリテーター:
市民参加ダンスプロジェクト
「くにたち富士見台ものがたり」
参加者募集中!

 

【金子愛帆】


フリーのフォトグラファーとして10年ほど活動しており、出張で家族写真、お宮参り、七五三、入園入学などを撮影。

そのほか、舞台やイベントの記録撮影、学校や高齢者・障がい者福祉施設での記録撮影、商品写真の撮影なども行う。
10月20日にはたまみらこどもまつりにて「子どもを、かわいく、かっこよく、自然に撮る!写真ワークショップ」を開催予定。
https://www.instagram.com/kanekomanaho

 

【林周一】


演劇集団風煉ダンス代表、劇作家、造形作家、演出家、俳優。

圧倒的な舞台美術でスペクタクルな舞台空間の創出が好評。数々の音楽家や現代美術家とのコラボも多数。

代表作「まつろわぬ民」は音楽スペクタクル劇や朗読劇など様々な上演形態で全国ツアーを開催。

可動式の巨大人形作家として国内外で様々な巨大人形を制作。

立川では子ども達と一緒に作って演じて遊ぶ「工作おしばい」を上演している。

9/18-23新作「星の伯父さま」を上野ストアハウスで上演予定。
https://www.instagram.com/furendance

 

【山本タカ】


1988年愛知県豊橋市生まれ。劇作家・演出家。劇団「くちびるの会」代表。

くちびるの会では、大人向けの劇場公演と並行して、子ども向け演劇「紙おしばい」の創作を行う。
2022年2月、紙おしばい『こだぬききょうだいのおつかい』を創作。

全国20箇所以上で上演し、延べ1000人以上の子どもに作品を届ける。

2024年6月に続編にあたる『こだぬききょうだいと きつねのコンたろう』を創作。現在、全国を巡回中。

くちびるの会
https://www.kuchibirunokai.jp/

(取材ライター:押川映子)