
TACHIKAWA
BILLBOAD
東京・立川周辺のART&CULTURE情報
ウィング高松
きっかけは認知症だった母がケンハモに合わせて歌ったこと

矢島さん
矢島さんがサークルを立ち上げたきっかけは、認知症になった母親とのやりとりからだった。
ベッドの上で天井ばかり見て過ごす実家の母に「何かさせたい」と思い、ピアノ講師だった矢島さんは、持ち運びしやすいという理由から、押し入れに眠っていた鍵盤ハーモニカを持参し、演奏してみせた。
最初に弾いた曲は、小柳ルミ子さんの「瀬戸の花嫁」だった。
すると、認知症だった母が演奏に合わせて一緒に歌い出したのだ。
驚いた矢島さんは「ブルーライトヨコハマ」も弾いてみた。
これも歌うことができた。
ついには、鍵盤ハーモニカを使って唱歌「日の丸の旗」を演奏してみせたのだ。
このことに矢島さんは衝撃を受け、鍵盤ハーモニカの可能性を確信した。
そこからすぐに調べて、見つけたケンハモの研修会を受講。
鍵盤ハーモニカが持つ多彩な効用を学び、このことを立川でも広めたいと思うようになった。
「ケンハモ」の効用とサークルの特色
ケンハモにはいくつかの効用があると言われている。
例えば、息を吹くことにより口腔や肺機能の衰えを防いだり、指や目や耳など同時に使うことにより脳を活性化したり、音楽+呼吸コントロールによりセロトニンが活性化したりなどがあげられる。

加えて同サークルでは、演奏する曲や当時の背景を話す時間を作るなど、回想法も取り入れている。
何気ないおしゃべりを通して、生徒さんのこれまでの経験からもたらされた日常の知恵などの情報交換も積極的に行い共有したり、季節に沿った唱歌や行事を楽しんだりと季節感も大切にしている。

参加者の皆さんの感想

鍵盤ハーモニカは電源もいらず持ち運びしやすいこともメリット
あっという間に過ぎた1時間ほどのレッスンの後、生徒へケンハモを始めた動機を聞くと、「吹くことは体にいいと思って」、「楽しく脳トレができそう」など、健康面の効果を期待して始めた人が多いようだった。
一方で、参加後の感想を聞くと、「みんなで合奏するのが楽しい」、「先生や皆さんと話すのが楽しい」など、演奏やコミュニケーションを楽しむ声が聞かれた。
81才の生徒は、「ケンハモは何才からでも大丈夫」と笑って教えてくれた。
講師の矢島さんも、「皆さん、指が動くようになってきていますし、楽譜を目で追いながら、リズムに合わせて演奏することも上手になっています」と嬉しそうだ。
取材日、クラスを見学したが、おなじみの曲に合わせてフレーズを吹くところなどは、一緒になって歌い出しそうになった。
また自分の子ども時代に、その歌手がテレビの中でキラキラしていてことが思い出されてきて、なんだか懐かしくなり、心が温かくなった。
芸術と人とコミュニティの深いつながり
矢島さんが芸術と人の関係を意識したのは、小学生の頃。
教育テレビを見ていて、古代の洞窟住居から壁画や動物の骨で作られた笛が発掘されたことを知った時だった。
矢島さんは、「壁画は図工で、笛は音楽だ。人は食べて寝るだけでは満足しない、芸術への欲求があるんだ」と思ったという。
また、ホモサピエンスにとってコミュニティを作ることは生き残るうえで重要だったこと、音楽はコミュニティの結束を高めるために行われていた儀式や祭事から生まれたとことなども知るようになる。
その後、音楽大学で音楽教育学を学び、中学校の音楽教員を経て、現在はピアノ教室で子どもから大人まで幅広い年代に教えている。
これから取り組みたいこと
矢島さんに同サークルのこれからについて聞いたところ、3つの展望を教えてくれた。

「1つ目は、継続は力なり。やり続ければ、少しずつでも上達する。また、QOL(生活の質)にもつながればいいなと思う」。
「2つ目は、発表会を開きたい。レパートリーが増えてきたので、地域の人と交流したり音楽を楽しんでもらったりする機会にしたい」。
「最後は、カラオケ店でレッスンをしてみたい。普段行かないような所にみんなでお出かけするのも楽しいと思うので」。
芸術は特別な人だけのものではない
取材中、何度も語られたことは、「芸術=生きることであり、特別なことではない」ということだ。
「有名なアーティストのコンサートを座席から聴いているだけでなく、普通の市井の人々が文化・芸術に慣れ親しむことを大切にしたい」と矢島さんは力を込めて話す。
音楽を通じて、人に寄り添い、笑い支え合うコミュニティを作ること。それが、矢島さんの目標だ。
■大人が楽しむ鍵盤ハーモニカサークル立川
レッスン:月2回/毎月第1・第3火曜日
場所:ウィング高松 高松町3-13-21
公式webサイト:
https://ss1.xrea.com/otonakenhamo.s323.xrea.com

(ライター・岡本ともこ)