発酵食を学んで買って・旅に出る博覧会「発酵で旅する東京の森」
立川・GREEN SPRINGS 2F 「TAKEOFF-SITE」にて11月5日~12月4日まで、多摩エリアと47都道府県の発酵食が集まる博覧会「発酵で旅する東京の森」が開催されている。
初日の11月5日、秋の夕暮れ時からお披露目会、続けて多摩を代表する酒蔵3社による角打ちが行われた。
日本酒、味噌、醤油・・・毎日お世話になっている発酵食
GREEN SPRINGSの鮮やかな階段を上る
立川駅方面からGREEN SPRINGS入り口である幅広の階段を上り、建物に沿って右に進むと、入口に行儀よく並んだ樽酒が目にとまる。
そこが「発酵で旅する東京の森」開催場所、TAKEOFF-SITEだ。
中に入り歩みを進めると中央には味噌、醤油、鰹節、納豆など日本の食卓には欠かせない様々な発酵食が手書きの説明と共に並んでいる。
毎日何気なく食べているが、言われてみれば発酵食は身近な存在だ。
そして、壁際にある冷蔵庫の中からは、ガラス越しに日本酒やビールが背筋をピンと伸ばしてこちらを向いている。
「冷えていますよ。さあ、どうぞ」と声をかけられているようだ。
さらに会場奥に進むと47都道府県それぞれで育まれた様々な発酵食が、ここでも丁寧な手書きの説明と共に紹介されていた。
GREEN SPRINGS 2F TAKEOFF-SITE 樽酒がお出迎え
料理に欠かせない醤油、めんつゆ
⽴⾶⻨酒醸造所のクラフトビール
姿勢よく、美しく並ぶ日本酒と発泡酒
多摩地区の発酵食展示エリア
初めて目にするものも
47都道府県の発酵食展示エリア
主催者、プロデューサー、酒蔵3社の思い
お披露目会では、主催である青梅線エリア女子旅推進委員会委員の福生市役所 生活環境部 シティセールス推進課 まちの魅力創造グループ 住友 健吾。
仕事のため大阪からオンライン参加のプロデューサー 小倉ヒラク。
そして多摩を代表する酒蔵3社、石川酒造、田村酒造場、小澤酒造が会場の参加者に向けてそれぞれ思いを語ったので紹介しよう。
青梅線エリア女子旅推進委員会委員 住友 健吾さん
青梅線エリアの新たな魅力「発酵文化」の発信が使命
青梅線エリアの魅力をさらに発信していきたいという思いから平成30年度に青梅線沿線、立川市、昭島市、福生市、羽村市、青梅市の5つの自治体から構成され発足した「青梅線エリア女子旅推進委員会」。
これまで、旅行雑誌「ことりっぷ」の製作や、フォトコンテストや謎解きゲームの開催などにより、青梅線エリアの魅力を発信してきたが、新たな魅力として「発酵」をテーマに今年度、新たに企画された。
青梅線エリアを含む多摩地域には、日本文化の象徴ともいえる発酵文化が多数存在している。
文化というのは昨日今日できるものではなく、長い時間、長い年月をかけてできるもの。発酵文化を歴史的価値あるものと認識し、身近にある発酵文化の魅力を一人でも多くの方に知ってもらうことを目的としている。
プロデューサー 小倉ヒラクさんからのコメント
◆イベントについて
「3年前に渋谷ヒカリエで47都道府県の発酵文化を紹介する、Fermentation Tourism Nippon展という展覧会が開催された。
それがだんだん色んな地域に展開され、西東京5市への声かけとなり今回の博覧会が実現した」。
◆水と森の大切さ
「住まいは山梨県国道411号線沿いにある。国道411号線は青梅街道と呼ばれ、青梅から山を登って甲府盆地に通じており、裏甲州街道として江戸時代から人々の往来が多くあった。
大菩薩エリアは秩父とも接し、水が湧いている山々がある水源地帯。
今回の博覧会に向け、大菩薩峠を抜けて西東京との間を何度も往復したことで、国道411号線は人の往来だけでなく水の流れもつかさどっていることがよく分かった。
3酒蔵で使っている水は、県境の山々から流れてきているピュアで微生物が元気になるミネラルが沢山入っている優れた水だ。
「東京の森が大事」とよく言われるが、その具体的な答えを見つけたように思う。
きれいな水がないと生まれない発酵文化、そして日常の食が発酵食に支えられていることから、水が生まれる森を大事にしたほうがいいということに気づいた。
「発酵で旅する東京の森」は、森の大事さ、森が生み出す水の大事さ、そしてその水が生み出す発酵文化の食の面白さ、これら全てが繋がっていることをメッセージにこめてタイトルとしてつけている。
お酒を飲む時には、森と水の関係性、水に育まれてきた東京で昔から続く伝統的な生活や民族の習慣をイメージしながら楽しんでいただきたい」。
◆酒蔵の思い
石川酒造 営業部 小池 貴宏さん
「華やかな食卓をお酒で支える酒造り」が醸造精神。
人は食事なしでは生きていけないが、アルコールはなくてもいける。
しかし、食卓の中にアルコールが入ることでコミュニケーションが生まれる。
そのような楽しい食事の時間のお手伝いができたらというのが酒造りの精神。
田村酒造場 営業部 牛久 岩雄さん
嘉泉はまぼろしのお酒と言われている。
昭和48年に発売して、今でも蔵で売れ筋。昭和48年、お酒は級別に販売されていた(等級制度)。
当時、本来は一級酒となるものを二級酒として販売していた。
そのため「いいものが手ごろな値段で買える、嘉泉はまぼろしの酒だ」といわれており、これが商品名「まぼろしの酒 嘉泉」となった。
小澤酒造 プランニング&デザイン室 吉﨑 真之介さん
「酒蔵のある多摩川上流域の御嶽渓谷は、豊かな自然が広がる。
その中でも澤乃井の生まれた沢井地区は、清涼で豊かな水が流れることからそう呼ばれた名水郷。
酒銘の「澤乃井」はその地名に由来する。お飲みになるお客様に奥多摩の自然の息吹を感じていただけるような酒造りを目指している」。
小倉ヒラクさんは「一番ボディがあるのが小澤さんのお酒。水質が秩父山系の硬い水で、かなり辛口でどっしりと重たいお酒になっている。
ずっと林業従事者、木こりの皆さんに飲まれ、充実感や『飲んだぞ』というインパクトを大事にしているお酒だと聞いた。
今日、午前中小澤さんのお酒を飲んでいたが、まさにその通りで、お腹の中でちょっとあったかくなる、そういうお酒を造っている」と話していた。
「発酵で旅する東京の森」体験ツアー
小倉ヒラクがアテンドし、発酵食と発酵文化を実際に体験する日帰りバスツアーが企画されている。
酒蔵見学、ブルーワリー見学&テイスティング、パン、チーズなどの発酵食の現場を巡る。
多摩の発酵文化の魅力を深く知ることができる良い機会となるだろう。
発酵デザイナー・小倉ヒラクと巡る。多摩の発酵再発見!日帰りバスツアー
https://hakko-department.com/blogs/info/higaeri-tourism
発酵で旅する東京の森
https://fermentation-tourism.tokyo/
石川酒造株式会社
https://www.tamajiman.co.jp/
田村酒造場
https://www.seishu-kasen.com/
小澤酒造株式会社
http://www.sawanoi-sake.com/
(取材ライター:後藤直子)