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立川ゆかりの日本画家「邨田丹陵」の魅力を知るhttps://www.tachikawa-chiikibunka.or.jp/a13-20240923/

「芸術の秋」を感じられる青く高い空の下、「続・邨田丹陵(むらた たんりょう)を学ぶ会」が、9月23日にたましんRISURUホールで開かれた。

邨田丹陵とは、あまり聞き慣れない名前だが、実は多くの日本人が観たことがある絵の作者だ。
しかも立川ゆかりの画家でもある。

今年の2月以来、2回目となる邨田丹陵について学ぶ講座に、立川市内外から約60名が参加。
丹陵愛好家の田中良明氏から、丹陵の画業や立川とのゆかりについて話を聞いた。

2024/09/23 (月) 2024/09/23 (月)
開催場所

たましんRISURUホール

2024.10.02

観たことがある“あの絵”の作者
邨田丹陵は、歴史の教科書等でよく知られる代表作「大政奉還」を描いた日本画家。
大政奉還は、1867年に京都の二条城で、江戸幕府の徳川慶喜が天皇に政権を返上するという、日本の歴史の中でも大きな出来事として知られている。
その重要な場面を描いた「大政奉還」の壁画は明治神宮外苑にある聖徳記念絵画館にある。
この絵を制作した丹陵は、伝統的な日本の絵画「やまと絵」を継承しつつ、近代日本画の新しい側面を切り開こうとした画人の一人だ。

学ぶ会では田中氏から、「やまと絵」の定義や歴史、明治・大正・昭和初期の長きに渡り活躍した丹陵の画業について、丁寧な解説がされた。
「やまと絵」は、平安時代から日本の人々や身近な風景が描かれ、多くの絵師によって独自の発展を遂げてきた。
丹陵は、1872(明治5)年に東京で生まれ、幼い頃から絵を学び、12歳にはやまと絵の土佐派に入門。
10代後半には、権威のある多くの展覧会で入選し、注目を浴びる。
その後も、繊細で端麗な歴史画や歌仙絵で受賞を重ね、多くの弟子も育てた。
しかしある時期から、日本画の大家が集まる画壇から距離を取り、独自に制作をおこなうようになる。

立川との深いつながり
丹陵は、1923(大正12)年の関東大震災で罹災したことから、大正末期から昭和初期にかけて、北多摩郡砂川村(現在の立川市砂川町)に画室を作り移住。
そこで代表作「大政奉還」の制作を始めた。

田中氏は、丹陵の「大政奉還」制作に関する様々な逸話を語った。
丹陵は、制作のため京都へ何度も足を運び、丹念な調査をおこなって、歴史上の重要な場面を描いたという。
長い年月の中で紆余曲折がありながらも、1935(昭和10)年に「大政奉還」を完成させた。

丹陵が砂川に住んでおこなっていたのは、絵の制作だけではない。
地元で土地を借りて菊作りを始め、広大な菊園を作り大変な評判となる。
そこで多くの文化人を招いたり、地元の人々と交流をしていた。
また、当時立川にあった飛行場に飛来する海外のお客のために、富士山など日本の風景を描いた色紙等を作っていたという。
人生の大半を地元の民と共に過ごした画家のエピソードを、田中氏が語った。
会の参加者も、地元と深い関係がある知られざる画家の話に、とても興味深げに耳を傾けていた。

10年以上に渡る邨田丹陵研究
画壇から一時期遠かっていたこともあり、一般に公開されている邨田丹陵に関する情報は少ない。
学ぶ会で講師を務めた田中氏は、教科書に載っていた作品から丹陵に興味を持ち、10年以上資料を探し調査を重ねていた。
時には古書店街で昔の新聞や雑誌を探し、当時の美術界の情報を集めたという。
その資料や作品をもとに、2022年の4月から5月にかけて、立川市地域文化振興財団主催で「邨田丹陵生誕150周年記念 特別展」が開催された。

田中氏は、「立川とゆかりのある丹陵のファンを増やして、地域を文化資源で盛り上げたい」と語る。

会では「源氏物語」にちなんだ丹陵の実物作品1点の展示と田中氏による解説も行われた。
大河ドラマで今人気のテーマでもあり、参加者は丹陵の精緻な筆跡を食い入るように見つめた。

邨田丹陵への注目
今年の1月から3月にかけて、たましん美術館で、展覧会「邨田丹陵 時代を描いたやまと絵師」が開催。
海外からの観光客も含め多くの人が訪れ、その繊細で美しい作品を目にした。

学ぶ会は、11月にも続きの講座を予定している。
立川ゆかりの日本画家について学び、情報を発信することで、世界から立川へ多くの人が集まることに期待したい。

◆「続・邨田丹陵(むらた たんりょう)を学ぶ会(第2回)」
日時:2024年11月23日(土)14〜15時
会場:たましんRISURUホール
HP:https://www.tachikawa-chiikibunka.or.jp/a13-20241123/

(取材ライター:いけさん)