立川の街と人がもっと好きになる「ファーレ立川ナイトツアー」
9月20日、ファーレ立川で街区向けのナイトツアーが開催された。
ファーレ立川エリアに勤める人が、退勤後にその足で参加できるよう企画されたアート鑑賞イベントだ。
参加者はファーレ倶楽部のガイドと共に約1時間、日没後ならではのアートの魅力を堪能した。
ファーレ立川
ファーレ倶楽部による熟練されたガイド
ファーレ倶楽部のみなさん。「ナイトツアー行っちゃうぞ」のポーズ
ツアーは、街全体がしっかりと暗くなった18時30分から始まった。
参加者9名とガイド9名の計18名が、3チームに分かれてツアーに繰り出した。
ツアーはガイドによる一方的な作品紹介ではなく、参加者と共に作品について考え、作者の意図に思いをはせるインタラクティブな時間だった。
「これは何に見えますか」「どうやって作ったと思いますか」など問いかけに対し、参加者は想像を膨らませて考えたり、新たな発見に感嘆の声を漏らしたりしていた。
往々にして無味乾燥になりがちなアート鑑賞が、ガイドの工夫によりインスピレーションに満ちたコミュニケーションの場となっていた。
ファーレ倶楽部によるガイドの工夫は、内容だけにとどまらない。
安全面やスムーズな進行のための配慮も行き届いており、「自転車が来ました。端に寄ってください」「階段があります。1列になり足元に注意して登りましょう」などの声がけがあった。
驚きと発見の街”で新たな街の魅力に出会う
ファーレ立川のコンセプトの1つに“驚きと発見の街”がある。
その言葉どおり、ナイトツアーは普段私たちが暮らし働く見慣れた街のなかで、様々な“驚き”と“発見”を与えてくれた。
例えば、こちらの風景。
ありふれたビル街の景色のように思えるが、実はこの中にアート作品が隠れている。
上の方を見上げると、赤くペイントされた「円」が見えてくるのだ。
この完全な「円」は、特定の場所でしか見ることができず、さらにはビルの最上部であるため、晴天の昼間は眩しくて見上げることができない。
「こんなところに、こんな作品が隠れていたのか」という存在自体への新鮮な驚きがあった。
また、普段何気なく視界に入っている作品に意外な制作意図があり驚いたことも。
その1つが、このビルの壁面に付けられたネオンのアートだ。
この作品は、作者の故郷であるギリシャの「空の色」を表現しているのだそう。
立川の夜空にギリシャの空が浮かんでいるとは、何とも不思議でどことなくロマンチックだ。
以前は「何かカラフルなものが光っているな」とだけ思っていたが、今後はこれを見かけるたびに遠い異国の空を想像するようになるだろう。
さらに、アートと触れ合い体験することによる“発見”もあった。
この蛇がたくさんついた作品は、逆方向を向いた2人が隣合わせで座れるようになっている。
「座ってみますか」と勧められ腰を下ろしてみると、想像との違いに驚いた。
逆方向を向いて座るので、パーティションで区切られた座席のようにパーソナルな空間になるかと思いきや、相手との距離は意外にもとても近い。
対面で膝を突き合わせて座るほど息苦しくはないが、視線はまっすぐと交されるので、相手に心の奥底までさらけ出してしまいそうな雰囲気がある。
同じ作者による作品は日本国内にもいくつかあるが、このように誰でも気軽に座れるのは立川だけという。
実際に触れて体験することで、作品の新しい一面を発見することができた。
いつもの街で体験した特別なアート体験
ツアーの終わりは、「ファーレ立川は、朝昼晩、春夏秋冬、いつ来ても楽しめる場所となっています。ぜひ色々なシーンで楽しんでみてください」と締めくくられた。
ライトアップされた作品はもちろん、昼間と姿が変わらない作品も、金曜の夜のゆったりとした時間の中で、楽しく鑑賞することができた。
ファーレ立川アートは人々がせわしなく行き交う街で静かにたたずんでいる。彼らは私たちに注目を促したり、直接語りかけてくることはない。ただ同時に、ふとしたきっかけで興味を持った人に、いつでも新鮮な驚きと発見を与えてくれるのだ。
「もっと立川が好きになる。ちょっと誰かに話したくなる。」そんな貴重な体験をした夜だった。
(取材ライター:栗原かぼす)