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縄文から芽吹く古代米(赤米)を広める「国分寺赤米会」

国分寺に縄文時代からの米、“赤米”を育てている「国分寺赤米会」という団体がある。会長の、龍神瑞穂(りゅうじんみずほ)さんと事務局長の前澤宏(まえざわひろし)さんに赤米の歴史や国分寺市での活動内容などについて、お話を伺った。

2025.06.25

(写真左:前澤さん/右:龍神さん)

知られざる赤米の歴史
「武蔵国分寺資料館」の資料から、まずは“赤米”の歴史から紐解いていく。
学生の頃、歴史の授業で弥生時代から稲作は始まったと習った。

しかし、縄文時代から既に稲作は存在していたのだ。

米がくっついていた縄文土器が発掘された遺跡もあるという話を聞いた時は、思わず胸が高鳴った。
古代米とは「昔の稲が持っていたと推測される特色を色濃く残す稲」という意味を持っており赤米はその中の一つである。 
栽培方法も大きく異なり、水田が始まったのは弥生時代からだという。

縄文時代の稲作はまだ土からの栽培で陸稲(おかぼ)と呼ばれている。
全国に品種改良されずに、赤米の稲作を行っているのは全国で4か所あり「四大赤米稲」と言われている。
1. 鹿児島県種子島 種子島種赤米稲
2. 長崎県対馬市  対馬種赤米稲
3. 岡山県総社市  総社種赤米稲
そして4つ目が
4. 東京都国分寺市 武蔵国分寺種赤米稲となる。

ここで国分寺市以外の3箇所が、全て神社での栽培というのに注目をしたい。

これは神様に奉納する米のため、古代の稲と栽培方法が今現在でも継承されているのだそうだ。

まさに奇跡!縄文時代の稲、国分寺市で見つかる!?
時は平成9年まで遡る。

場所は東京都国分寺市の東恋ヶ窪。

赤米の研究をしていた法政大学の先生と、史跡を管理している学芸員が、この地を訪れた時に古代米の赤米稲を確認したという。
実はここの農家が個人で赤米を栽培していたのだそうだ。

縄文時代の米が東京で現存しており、しかも栽培されていた。

これは奇跡といってもいい程の発見なのである。
国分寺市内で発見された赤米はその後「武蔵国分寺種赤米」と命名される。

発見から栽培、継承へ 国分寺赤米会発足
龍神さんと前澤さんが赤米に関わるようになったのは、公民館の講座がきっかけだったという。

講師は発見者の法政大学の先生で、赤米の歴史や発見の経緯などを学んだ。

「せっかくだから赤米をつくってみよう」という話になり、公民館で育てることになった。

意外だったのは稲が強いため、収穫量は別として、誰でも簡単にバケツで栽培が可能だということである。
バケツ栽培からのスタートだったが、関係者から「市の武蔵国分寺史跡で栽培してみませんか?」と相談がきた。

「もっと広げてみたい。広げるためにはいろんなことがやりたい」という思いから、2018年「国分寺赤米会」が発足した。


その後、史跡での耕作・教育として「わんぱく学校」(2019年)「国分寺市立第5小学校」(2020年~)と連携して栽培もはじまった。
学校では座学や、史跡内での畑でもみまきや稲刈りなどの体験し、収穫した米は給食で食べる。

畑まで連れていってもらったが、既に青々とした稲が伸びていて大切に育てられているのが分かる。


栽培は苦労の連続
私たちが食べているのは収穫されやすいように品種改良されたもの。
古代の稲は草丈が高いので倒れやすい、風に弱いなど弱点も多々あるため、一つ一つに添木をするそうだ。

その数は数百本。「脱粒(だつりゅう)」という、稲が実とバラバラ落ちてしまう現象も起きる。

そのため毎日のように畑に赴き、落ちる前に実を取るのだという。
現在「国分寺赤米会」のメンバーは約40人。

交代で畑の手入れをしている。

これだけ手間暇かけて収穫できる米はごく僅か。

「ボランティアだから出来ることです」と前澤さんは簡単に言うが、赤米の栽培方法の継承や維持は多くの人達の努力や信念で成り立っているのだ。


赤米のこれからの可能性
「国分寺赤米会」は栽培だけではなく、「赤米をもっと多くの人に知ってもらいたい」とPR活動も力をいれている。

国分寺のカフェが餅つき大会をやった際には、赤米を餅に混ぜて振舞った。

参加した人が、珍しそうに餅をほおばっているのが印象的だった。
3年前からはクラウドファンディングを利用して、加工品にも挑戦している。

作ったのは甘酒。「あかごめこまち」という名前で国分寺の酒屋さん経由で、蔵元に100本程作ってもらっている。
また赤米を使用したメニュー開発や、カフェではカレーのお米に使ってもらうなど、可能性は広がるばかりだ。

ワクワクはロマンから
インタビューに答えてくれた龍神さんも前澤さんも農業の経験はなく、公民館の講座から始まった。
2人は「縄文時代の原型に近いお米がたまたま国分寺で見つかった、それを残して広めたい」。「小学生とやれるのが楽しい」と、やりがいを語る。
「続いているのは、何より“ロマン”があるからです」と嬉しそうに話してくれた。


〈参考資料〉
『幻の赤米―国分寺の稲作について―』 武蔵国分寺跡資料館

■国分寺赤米会
団体連絡先
〒185-0011 東京都国分寺市本多4-16-16

団体FAX、電話番号:042-301-7373

団体メール:maezawa2006@icloud.com

代表者氏名:龍神 瑞穂(りゅうじん みずほ)

連絡担当者氏名:前澤 宏(まえざわ ひろし) 

(取材ライター:永田容子)