TACHIKAWA
BILLBOAD

TACHIKAWA BILLBOAD東京・立川周辺のART&CULTURE情報

artists

桂笹丸: Katsura Sasamaru落語家/昭島市観光親善大使

落語と聞いて何を思い浮かべるだろうか。扇子と手ぬぐい、粋な人情話、古き良き日本の大衆芸能。
そんな枠を飛び越え、ヒップホップや即興演劇などとコラボレーションする落語家がいる。

昭島市出身の落語家、桂笹丸(かつら・ささまる)さんの生き様は、まるで一本の新作落語を聞いているかのように、面白く、そして心を揺さぶる。

2025.08.21

運命を決めた朝4時の出会い
笹丸さんと落語との出会いは、大学時代に遡る。

公認会計士を目指して勉強漬けの日々を送る中、図書館でふと手に取った落語のCDに衝撃を受けたのが始まりだった。

「たった一人のしゃべりだけで、こんなに世界が広がるのか」。話芸の魅力に引き込まれていった。

転機が訪れたのは会計士の試験に落ち、進路に迷っていたある朝4時。

たまたまつけたテレビに映っていたのは、のちに師匠となる桂竹丸氏だった。

新作落語を披露する姿を見て、「落語って、こんなに自由なんだ!」と一目惚れ。

弟子入りを決意したが、父親からは反対され、友人たちも離れていったという。

それでも笹丸さんは、その道を諦めなかった。

 

「待ち伏せ」して弟子入り
その後の行動力はすさまじく、昼夜問わず働き、「落語で食べていけなくなった時のために」と一年間で100万円を貯めた。

次に師匠の出演スケジュールを調べ上げ、池袋演芸場のエレベーター前で待ち伏せ。

師匠に直談判し、見事弟子入りを果たす。

不登校の少年が、言葉の表現者になるまで
まるで少年漫画のようなドラマティックなエピソードが続くが、実は笹丸さんには不登校・引きこもりの経験がある。

「毎日決まったことをするのが苦手すぎて」と笑いながら話すが、何者でもなかった時期のこの経験は、奇しくも今の笹丸さんの土台をつくることになる。

地域交流の場として開催され、前座時代から出演している「あおぞら寄席」(昭島市)

この日の演目のひとつ、古典落語の「紺屋高尾」では、笹丸さんが描く物語の世界に引き込まれ、みな涙ぐんでいた

 

高校を辞めた後、ヒップホップに夢中になると同時に、漫画の原作者になろうと小説を書いてみるなど、言葉による表現をずっと追い求め続けてきた笹丸さん。

その探求心が今、新作落語を生み出す糧となり、古典落語に新しい命を吹き込むことにも生かされている。

落語は登場人物の心情を多くは語らない特徴があるため、登場人物に対して「なぜそうしたのか?」と疑問が生じがちだ。

そうした疑問1つ1つを深く掘り下げ、現代に生きる私たちの心に響くよう再構築する。

妥協を許さず、時には自ら取材をして疑問を解明する笹丸さんの姿勢は、「自分が納得できないものは人前で披露できない」という強い信念のあらわれだ。

柔和な笑顔と心に響く美声で快活に語る笹丸さん。高座に上がるまでの裏話は、驚きに満ちていた
「芸を磨く」とは、技術の研鑽にとどまらず、知性や感性までも同時に磨き上げていく営みなのだ

「落語は観るもの」から「関わる文化」へ
純粋な落語ファンからは「本当に落語が好きなのか?」と疑問を投げかけられることもある。

しかし笹丸さんの狙いは明確だ。「僕を入り口に落語を知って、落語を好きになってくれたらそれでいいんです」。
この純粋な想いこそが、様々な人々との交流へとつながっている。

2022年には地元・昭島で後援会が発足し、年数回の落語会を一緒につくり上げる仲間が増えた。

そこでは「応援する」というより「一緒に落語を楽しむ」空気が自然に広がり、輪は昭島から市外、そして全国へと広がっている。

さらに8月31日(日)にはたましんRISURUホール(立川市市民会館)で音楽劇「シンデレラ」にストーリーテラーとして出演。

落語を知らない人でも親しめる舞台を通じて、「立川から落語に触れてほしい」という笹丸さんの思いが形になる。寄席の高座だけにとどまらず、人と人を結び、新しい楽しみ方を開いていく笹丸さんの落語は今、観るだけの芸から、誰もが一緒に関われる文化へと歩みを進めている。

8月31日(日)にはオペラやミュージカルともコラボ
高座にあがるだけではなく、様々なジャンルの仕事をこなし、年齢・居住地問わず、落語のファンを着実に増やしている

「落語だけは辞めたいと思ったことがない」
その言葉通り、ほぼ毎日高座に上がる笹丸さん。

社会人向けの話し方セミナーや子ども向け落語教室のみならず、ラップやDJ、日舞など、様々なジャンルのアーティストやクリエイターと連携している。

一見、奇抜に思える活動も、全ては「落語の面白さを、より多くの人に伝えたい」という一心から。

2024年には地元・昭島市の観光親善大使にも就任し、地域に根差した活動にも力を入れている。

笹丸さんの活動の根底には、落語という言葉の芸術を、人と人をつなぐ新しい文化へと進化させたいという強い意志も感じられる。

本当に落語が好きで、落語の力を信じているのだ。

笹丸さんは全国の小・中学校で積極的に落語講座を行っている

今秋からはNHK学園(国立市)で高校生に向け落語の授業を行う予定

教育から仮面ライダーまで。広がる夢と挑戦
「中・高生の頃、教師になりたいと思っていたこともある。

教育関係の仕事は今後も積極的に受けていきたい」

「次はダンサーとのコラボを実現させたい」

「ラジオのパーソナリティーをやってみたい」

「大好きな仮面ライダーとコラボしたい」と、楽しそうに今後の構想を語る笹丸さん。

異能の落語家が作り上げる空間は、ただ笑わせてくれるだけではない。

落語家と、演目の登場人物たちの生き様そのものが、私たちに「難しく考えず、好きなことに正直に、自分らしく生きること」の楽しさを教えてくれる。

先行きが見えないこんな時代だからこそ、懐かしくも新しい笹丸さんの落語の世界を、ぜひ体感してほしい。

■プロフィール:桂笹丸(かつら・ささまる)
* 本名:小川夢貴(おがわ ゆめたか)
* 生年月日:1989年7月1日/東京都昭島市出身
* 学歴・経歴:高卒認定 → 東京経済大学 → 落語家の道へ
* 師匠:桂竹丸(落語芸術協会所属)
* 入門:2014年/前座名「竹わ」
* 二ツ目昇進:2018年/現芸名「桂笹丸」
* 芸風:古典落語+現代要素(ラップ・即興・演劇など)
* 活動:音詞噺メンバー、即興演劇出演、舞台・学校講演、地域活動など
* 趣味:ヒップホップ、ポケモン、散歩、DJ、日本舞踊(若柳流)
* その他:2024年昭島市観光親善大使就任

桂笹丸さん 公式SNS・発信媒体一覧
・X(旧Twitter)   https://x.com/sasa_chiku
・Instagram   https://www.instagram.com/chikuwa.sasamaru
・Facebook   https://www.facebook.com/sasa.chiku
・YouTube   https://www.youtube.com/@sasamarudouga

(取材・ライター:西野早苗)