ミッチ:Micchi小物作家・絵描きhttps://www.facebook.com/246413802418503/photos/pcb.246456452414238/246453269081223/?type=3
立川市在住。個性豊かなブローチなどの小物雑貨制作や、絵描きとして立川市周辺のイベントに参加。その他、ボーカリストやパフォーマーとして幅広く活動を行う。
作品から感じる双子の想い
夢の中の世界をそのまま絵にしたような不思議でガーリーな作風が特徴のミッチさん。個性的で独自の作風がしっかりと確立されているように思うが、作家としての活動はまだ約1年半というから驚きだ。いかにして、作家活動が始まったのか、その思いとルーツを聞いた。
「双子なのに似ていなくてすみません(笑)」
実はミッチさんは、以前紹介したパフォーマーのマロンさんの双子の妹。独特の世界観を持つ見た目だけでいえば、双子というのも頷ける。しかし、性格はあまり似ていないという。
周囲から「太陽と月の様だ」といわれるほど正反対のものが多い。
「歌を歌うときは私が明るくて、マロンはクールでかっこいい感じなんです」
確かに明るく朗らかでくるくると表情が変わるミッチさんは太陽のように暖かい。一方で、マロンさんは、物静かでクールな印象の中に、闇夜を煌々と照らす月明かりのような鋭い光を感じる。
それでもやはり「双子ならでは」と思う瞬間が取材中何度か垣間みえた。
ミッチさんにとって「双子であること」は、現在の作家活動につながる大きな要因の一つのようだ。
人にみてもらいたい、という思いがだんだん湧き上がってきました
「自分が本当に求めているものが売っていなくて、既存のものをリメイクするところからはじめて、ゼロからつくるようにもなって。自分のためだけに作品づくりを楽しんでいました」
作家活動をはじめるきっかけとなったのは、取材時にもお世話になった「ギャラリー&カフェ ガレリアサローネ」の存在だ。姉であるマロンさんの作品を展示してほしいという話の中で、ミッチさん自身もつくっているものがあるなら合わせて置いてみようか、という流れに。それまでは自分のためだけにつくってきたものを、人のためにつくるということに、ワクワクが止まらなかったという。
ここからミッチさんの作家活動がスタートした。
「双子展」をきっかけに絵を描きはじめる
さまざまなイベントに関わっているうちに、「双子展をやってみない?」と声がかかった。
その展示のために、初めて作品としての絵に挑戦することに。
この時が初めてとは思えないほど、クオリティが高く個性もしっかり出ている作品群に驚きを隠せず、なぜ今まで絵を描いてこなかったのか、その疑問を投げかけてみた。
「自分は絵が描けないと思ってたの」
頭に浮かんだイメージをうまく絵にすることができなかったことから、絵を描くのは苦手だと思っていたそう。表現したいものも具体的にイメージできるミッチさんはすでに絵描きとしての才能に溢れていると思うが、「絵が苦手」ということをすんなり受け入れていたのは、マロンさんの存在があるからだった。
「私が表現したいと思うものをマロンが表現してくれてたから、それだけで満足だったんです。逆にマロンも私の歌を自分の表現として満足している部分はあるみたい」
一般的にイメージする双子とはまた違った意思疎通を見せるお2人。お互いの足りないところを補い合って、2人で一つの表現を形にしているのかもしれない。
毎日が出産です
「双子展に向けて絵を描いてみたら、すんなり描けちゃったんです! 双子っていうテーマが良かったのかも」
ミッチさんの作品には双子の女の子が多く登場する。あたりまえだが、「生まれてからずっと双子」ということがミッチさんにとって表現する上でとても重要で、自然なことなのだ。
自分がみたいと思っていた絵が描けるようになった喜びは計り知れなかったようで、1日1枚毎日欠かさず絵を生み出し続けた。
毎日作品をつくり続けるのはとても大変で苦しいことの様に思うが、ミッチさんはとことん楽しんで続けている。「1日のやるべき仕事を終えて、はやく絵を描きたくて仕方ないんです」と語る表情からはワクワクとした思いが伝わってくる。
その情熱を持続できる秘訣はどこにあるのだろうか。
「とにかく今は余計な情報を入れないようにしてます」
歌をやっていたとき、人の評価や人の表現方法が気になって、思うように自分の歌が歌えなくなってしまったことがあったという。学ぶということは大切なことだが、知識を得てしまったからこそ、失くしてしまうものもある。
「知ってしまうと素直になれなくなる」というミッチさんからは、確かに子どものように無邪気に表現して、脇目もふらず夢中になっている様子が伝わってくる。
とにかく楽しむこと。これが情熱を持続させる秘訣のようだ。
絵に込められた引力
ミッチさんの作品を観ていると、絵の中に引き込まれそうになる瞬間がある。情熱だけがここまで人を惹きつける力になるのだろうか。
「発表する前に、一度マロンに見てもらいます。そこでアドバイスを貰って描き直したり、あえて書き直さなかったり。そういうやり取りがあるから絵力が2倍になっているのかも」
その言葉を聞いて、1枚の絵に込められた力強さが腑に落ちた。
ミッチさんの表現する作品には、マロンさんの思いも入っている。だからこそ、作品の中に吸い込まれてしまいそうなほどの引力を持っているのかもしれない。
何かに夢中になって、毎日が楽しかった子どもの頃を思い出し、明るい気持ちにさせてくれる作品は今回お話を聞いてミッチさんそのもののように感じた。作家としての活動はまだ始まったばかり。これからどう進化を遂げるのか、目が離せない存在だ。
文・写真/一楽まどか(けやき出版)