マロン/マロンチックパフォーマーhttps://www.facebook.com/Marrontic-295036427346768
立川市在住。弾き語りやパフォーマンスなど舞台上での表現の他に、絵描きとしても活動。バンド「Theピーズ」のTシャツイラストなども手掛ける。
自分の枠をつくらない自由なスタイルで
まず間違いなく「普通ではない」と誰もが感じるその風貌。
立川を拠点に、独特の感性を存分に発揮するパフォーマンスが魅力で、全国的に活動を行うマロンさん。
紙袋をかぶって歌い踊るガールズロックユニット「V/ORDER」やマロンチック名義での弾き語り、既存の曲に合わせて口パクで繰り広げる刺激的なパフォーマンス、さらにはイラストレーション等、その活動は多岐にわたる。
魅力的なパフォーマンスは一度観るとクセになる。まずは動画でその世界観に浸ってほしい。
取材当日、そのパフォーマンススタイルからどんなに奇抜で破天荒な人物なのかとハラハラしていたが、実際にお会いすると、丁寧で柔らかい雰囲気をまとっていたことが驚きだった。
見た目やパフォーマンスとは裏腹に、シャイな印象を漂わせるマロンさんが、いかにして現在のスタイルでパフォーマンスを行うようになったのか、そのルーツと想いを聞いた。
何かになりきることが楽しくて
松田聖子のレコードをかけて、鏡の前で口パクしながら踊り、本人になりきることに夢中になっていたそう。「今日はザ・ベストテンの軽井沢中継!とイメージをふくらませて遊んでいました」
ところが中学生になった頃から、歌手になるということが「夢でしかない」と感じ始める。
「歌手という夢を口に出すのが恥ずかしくなってしまったんです」
それでも歌うことや、好きな人になりきることは大好きで、大人になってもやめなかった。
21歳の時に組んだガールズコピーバンドでは、「クールで強い女」を演じていたという。「変身願望があったので最初は楽しくやっていたんです。でも、段々本来の自分とのギャップに違和感を覚えました」と語る。
この頃から「自分が何をやりたいのか」ということを真剣に考え始め、弾き語りを始めることに。自分の言葉で表現することの気持ちよさに初めて感動し、等身大の自分を包み隠さず伝えることに目覚めた瞬間だった。
夢を叶えるストイックな情熱
マロンさんの自己表現方法の一つにイラストがある。歌手になる夢に消極的だった中学高校時代、「大好きなバンドにイラストで関わりたい」という想いで絵の専門学校へ進学。
80年代のバンドブームで生まれた「Theピーズ」に夢中だったマロンさん。手紙と一緒に作品を入れたり、自分で録音したカセットを同封したりと試行錯誤を繰り返す内、メンバーに覚えてもらったのだという。過去を思い出し「今だったら完全に危ない人ですよね」と笑う。
そのひたむきな情熱が実を結び、Tシャツデザインを手がけることに。
マロンさんの性格と作風のギャップがメンバーの目には新鮮に映ったのかもしれない。そして、何よりもその努力と熱量が、夢を叶えるまでに至った大きな要因なのだと感じた。
弾き語りとイラスト。すでに表現方法の引き出しがあるマロンさん。それでもまだすべてを出し切るには足りていなかった。
「喜怒哀楽全部が詰まったサーカスみたいなパフォーマンスがしたい」
「サーカスやピエロが好き」というマロンさん。その理由は、普段おどけていて明るいピエロも、実は裏では哀しみや切なさを秘めている。そんな二面性が自分に似ていたのだという。「ただ楽しくみんなでさわいでいるライブはまぶしすぎて苦手でした。でもだからといってずっと暗いだけなのは嫌。両方の要素があってこその自分なんです」
そこで、自分が持っているすべての感情を表現したい! という想いが動き始める。しかし、弾き語りだけでは喜びや哀しみしか表現することが出来なかったという。
「怒り」を表現するにはどうすればいいかを考えて始めたのが、激しい感情を身体すべてでアウトプットするパフォーマンスだった。
「弾き語りだけでは、ただ可愛いで終わってしまう。それが気持ち悪くて。もっと私はドロドロした感情も持っているんだぞ!って言いたかったんです」
弾き語りでは「喜び」「哀しみ」、パフォーマンスでは「怒り」。イラストではポップさと狂気。人間が持つ多面性を、それぞれの表現手法に当てはめるスタイルはまさに「自由」。マロンさんの活動が多岐にわたる理由が垣間見えた気がした。
一見すると世の中には流されないようにみえるマロンさんも、日常生活では人の目を気にすることがあるという。しかし、パフォーマンスのこととなると自身の軸は一切ブレない。周りにどう思われるかは気にせずに、「自分を表現する」ことを自然にやってのけてしまうのだ。
世の中に囚われて作り上げた自分表現ではなく、マロンさんの生き様をそのままパフォーマンスにぶつけるからこそ、真摯に伝わるものがあるのではないだろうか。表現者としてこれ以上ないほどに真っ当な軸がマロンさんの中に存在している。
[文・写真/一樂まどか(けやき出版)]