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安東 桂:Ando Kei銅板造形家http://keiando.com/

[出身]大分県
[経歴] 東京学芸大学卒。空間を装飾する大きなレリーフから、小さな動植物をモチーフとしたものまで、幅広い銅板造形作品を制作。オーダーメイドも可能で、2010年には、立川市役所新庁舎受付カウンターをデザイン、施工した。

2016.03.26

銅板を叩いて伸ばして、バーナーで熱しながら曲げて溶接して、形にしていく。

『ほしわたり』素材:銅・木パネル・アクリル/サイズ:650×800×60mm

『ほしわたり』素材:銅・木パネル・アクリル/サイズ:650×800×60mm 

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銅という素材とその表現の面白さに出会ったのは、大学に入ってから。

 石田倉庫にある、蔦の絡まるアトリエNo.3の2階、ガラス作家のかたとシェアしているというアトリエの奥に、安東さんの作業机がある。机の上には、まだ加工されていない銅板、作業途中のキノコの部品、それからスケッチ画やペンチやピンセットなどの道具が並ぶ。ここが安東さんの作品が生まれる場所だ。

 「銅は、緑錆(りょくしょう)といって、表面の酸化によって色が変わるんですよ。」と安東さん。10円玉色の銅板を叩いて伸ばして、バーナーで熱しながら曲げて溶接して、形にしていく。バーナーの炎の熱でみるみる色の変わる銅。さらに熱した銅を水につけるとジュッと音がして、色が赤褐色に変化した。この色の出方は偶然のもので、それもまた銅板造形の魅力のひとつなのだと言う。バラバラだった部品が安東さんの手によって、あっという間にキノコが完成した。まるで魔法のような作業である。

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 大学に入るまでは、単純に絵を描くのが好きだった安東さんが、銅という素材とその表現の面白さに出会ったのは、大学に入ってから。卒業後も銅板造形を続け、2015年の6月末には、最初に個展を開いてから10年の節目の個展「夏至」を開いた。この個展では、自作フレームドラム奏者の久田祐三さんの楽器の一部を作るという実験的コラボレーション作品も制作、展示した。

 

自分が出逢った好きな言葉を書き留めておいて、そこからイメージをふくらませて。

[左]On my way home I remember only good days [中央]みんないってしまう[右]Hello Hello

[左]On my way home I remember only good days [中央]みんないってしまう[右]Hello Hello

 安東さんの手仕事から生まれるのは、空間を装飾する大きなレリーフもあれば、絵本の世界からひょっこり飛び出してきたような、小さな不思議で可愛い動植物の小さな作品もある。彼女は、歌や詩、小さかった頃に読んでもらった絵本など、自分が出逢った好きな言葉を書き留めておいて、そこからイメージをふくらませて作品を作る。

 例えば、『On my way home I remember only good days』は、歌詞からイメージして生まれたもの。 作品を見ているうちに、夕焼け空の下、ハナウタを歌いながら、自転車をこいでいる自分が見えてきた。家への帰り道は、たしかに楽しかったことしか思い出さないかもと、心の奥が懐かしいような、愛おしいような気持ちに…。 と、そんな感想を抱いた私に「作品と心が通じたのかもしれないですね」と、安東さん。「作品と心が通じる」という言葉も、とても居心地よく心に響いた。

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 アトリエ展で開催される銅板造形ワークショップで体験できるピンバッジと、展示作品。   安東さんは、毎年開催の石田倉庫のアトリエ展で、自身のアトリエを公開、作品の展示販売、ワークショップを行っている。

 ワークショップでは、数種類の型のアルミのベースに、金槌で銅や真鍮のメッシュを叩いて模様を打ち付けて、オリジナルのピンバッジを作ることができる。 興味があるかたはアトリエ展にも足を運んで、銅板造形という普段馴染みのないアートを、ぜひ体験して欲しい。