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倉迫康史:Kurasako Kojiたちかわ創造舎チーフ・ディレクター、Theatre Ort主宰http://tachikawa-sozosha.jp/

宮崎県出身/1969,11,25
舞台演出家、放送作家。早稲田大学政経学部卒。洗足学園音楽大学、桜美林大学非常勤講師。演劇やリーディング、コミュニケーションのワークショップも数多く行う。

2016.03.31

「40手前で、自分の暮らすエリアを豊かにしたいって欲望が芽生えました」

 

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立川エリアの創作基地「たちかわ創造舎」

校舎の窓から見えるのはのんびり流れる多摩川と広い緑の河川敷。眺めていると、心がほどけてやわらかくなってくる。これ以上ないくらい絶好のロケーションの「たちかわ創造舎」。晴天の3月、プロジェクトのチーフ・ディレクターである倉迫康史さんに会いに行った。

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「たちかわ創造舎」は2015年9月にオープン。旧多摩川小学校の校舎を活用してNPO法人アートネットワーク・ジャパン(以下ANJ)が企画運営し、創業支援の「インキュベーション・センター事業」、「フィルムコミッション事業」(校舎2階は専用の撮影スペース)、「サイクル・ステーション事業」を展開中。校舎の中はワークショップのイベントやサイクリングの休憩所として利用する人、はたまたロケ隊のスタッフ、役者さんなど、多種多様な雰囲気が入り交じっていて活気がある。

この施設のチーフ・ディレクターである倉迫さんは、こちらの運営活動のほか大学講師、放送作家の顔も持つ。そんな多彩な彼の一番軸となっているのは、舞台の演出だ。

 

演劇を通して、社会に関わる。

倉迫さんは、大学入学と同時に宮崎から上京し、在学中に東京の小劇場を知り、2年生の時にはニューヨークに滞在して本場のエンタメを体感した。政治経済学を専攻していた故、4年生になる頃には“演劇を通して、社会を変えてけたら”という夢がみつかる。卒業後の2年間、昼はチケットぴあに勤務、夜は俳優養成所に通って武者修行し、25歳の時に初めて仲間と劇団を旗揚げした。それから20年。夢への想いは46歳になる今も一貫している。

2007年には劇団「Theatre Ort」(シアター・オルト)を立ち上げ「よみきかせ」の気軽さと「おしばい」の迫力を合わせた「よみしばい」や、子供やファミリーに向けた音楽劇的な作品を多数上演している。

校舎4階にある演劇の稽古場。木製の仕切りの奥には小道具がいっぱい。放課後感が漂う。

校舎4階にある演劇の稽古場。木製の仕切りの奥には小道具がいっぱい。放課後感が漂う。

「僕は、演出家として生きてますが、演劇をやっていられればそれだけでしあわせです、というタイプではないんです。演劇をちゃんと続けながら、日本の社会の中でちゃんと演劇が有効にはたらいている、そういう状況をつくっていきたいですね。これまで都心で活動してきて、これから自分の住んでいるエリアでやってみたいとちょうど考えていた時に、旧多摩川小学校有効活用事業者の話が舞い込んできました。あ、これは面白いんじゃないかと」

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2013年、ANJが旧多摩川小学校の新しい活用事業者に選ばれた。「ANJが運営している『にしすがも創造舎』(こちらも廃校活用)ではアソシエイト・アーティストとして地域で上演するお芝居やワークショップの講師など、10年ほどサポートしていたので、運営や企画の経験を活かせるのは、とてもいい流れでした。それと2000年代以降、東京の街自体がいわゆる成長社会から成熟社会に切り替わっていくことを実感していたのもその頃で。

都心のテンポから地方にも目が向けられるような空気も感じていました。8年前から隣の日野市に暮らしているのですが、40歳を目前にして演劇やアートで自分の住むエリアを豊かにしていきたいっていう欲望が強くなったんです」

 

立川のアーティスト、立川のアートイベントのつなぎ目に

「去年の9月にオープンして、僕らは2020年まで5年の運営が決まっています。今、まちの人とだんだんつながりができているので、まちのみなさんと一緒にもっと立川の芸術文化を盛り上げたいですね。僕たちとしては5年ではすまないとおもっています(笑)。

例えば、ここと、アート・イン・ファームの井上農園さんと、たくさんのアーティストがアトリエを持っている石田倉庫さんは全部富士見町にある。その共通項でアートフェスができたらより大きなムーヴメントになるんじゃないかとか。あと、僕はやはり舞台の人間なので、人が集まってくるような地域の劇場文化を育成したいですね。

たちかわ創造舎は、そんな地域の芸術の創作基地にしたいんです」と、わくわく話す倉迫さん。これからの5年がとても楽しみだ。

たちかわ創造舎のスタッフと。

たちかわ創造舎のスタッフと。