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佇むことの意味に触れ、心静かに作品と向き合うひととき「佇む」展

3月16日~20日の5日間、ルミネ立川9階ルミネラウンジで、線画家もんでんゆうこさんと空間時間ディレクター遠藤ちえさんによる「佇む」展が開催された。

展示された空間には、キラキラとしたルミネ立川店内の印象とは真逆の、大人が自分の浮き沈みと向き合い、それを肯定できる空間があった。

2024.03.26

絵画とビデオとインスタレーション

「佇む」展は、被爆被害地である長崎県出身のもんでんさんの「観たこと」「聴いたこと」「感じたこと」を自分が生きてきた印として、表現していきたいとの思いが込められている。

「仕事もあり、家庭もあり、自分の好きなこともあり、今後歳を取っていくにつれてどうなっていくのか?」と悩むエルダー世代に、作家の2人が「自身を振り返り、今後を考える機会になってほしい」との思いで作られた展示空間であった。

画布に描かれた、もんでんさんの線画を見ているとそれだけで、頭の中に様々な思考がめぐり、そこに遠藤さんが作り上げた空間演出が加わることで、描かれた線画の中にいるような錯覚を覚える。

ラウンジ内には、作品を描く過程のもんでんさんの様子を撮影した、遠藤さんの動画作品が流れ、作家同士の敬意と共に尊敬の念をもって、制作されてきた過程も感じられる空間となっていた。

もんでんさん作品「メッセージーNAGASAKIー」

もんでんさん作品「メッセージーNAGASAKIー」1枚の絵の中にまったく印象のちがう場面が描かれている

遠藤さん作品「佇む人と『灯りの小筐(あかりのこばこ)』」

ひとつひとつ違った表情の「光と陰」はまるで、それぞれの人の生き方を映し出すかのよう

もんでんゆうこさん×遠藤ちえさんで作られた神秘的な空間

もんでんゆうこ氏×遠藤ちえ氏。2人の出会い
2014年頃から開催されていた「日野宿通り賑わいのある街づくりプロジェクト(通称ひのプロ)」主催の「キャナルマーケット」。

このキャナルマーケットに古道具店を営む遠藤氏のご主人が出店し、そこで会話をしたことが、もんでんさんと遠藤さんの出会いだったという。

お互いがお互いのアートへの興味関心をもち、お互いの子どもが同じ学校に通っているという偶然、日野の地域活動が盛んになった時期など、「複数の事が重なったことで産まれた縁だ」と2人は話してくれた。

今では旅行や食事、ウォーキングまで、一緒に過ごす時間が多いという2人。

けれどもアーティストとして相手への思いをそれぞれに伺えば、お互いへの尊敬の念を込めた熱量で、2人が語りだす。

大人になり、これほど相手を敬いながら、共有ができるものがあるのは、実は偶然ではなく、必然だったと思わされる。

「絵画は描き終えて終わりではない」
もんでんさんと遠藤さんは、2020年東京都及び公益財団法人東京都歴史文化財団が立ち上げた「アートにエールを!東京プロジェクト」から共同作品を作っているという。
「絵画って出来たら終わりでなくて出来るまでのプロセスって言うのがいろいろ悩みつつ作っていく過程がある。

その過程を遠藤さんが遠藤さんの感覚で切り取ってくれる。

自分の作品とはまた全然違う面を映し出してくれるような、全然違うものとしてまた創出してくれる」と、もんでんさんは遠藤さんと共同展示を行った理由を語ってくれた。 <

 

一方で遠藤さんは「この絵のテーマを聞いたとき『結構重いし、腹を決めたな。』と思った。

いつもの明るくって華やかなタッチではない、新しい魅力を見せてもらった、とこの撮影を通して思った。

真剣に自分の内側に向き合うような制作をするんだなと」と撮影時の様子を振り返る。

 

アーティストとして、また友人として共に人生を歩む2人。

作品としても、自身にとっても重いテーマであったが、一方で2人が醸し出す温かみも感じることのできる作品展となっていた。

◆もんでんゆうこさん / 線画家、イラストレーター
1971年生まれ 長崎出身
2005年 画家永沢まこと氏に師事、ペン1本で描く技法でスケッチをはじめる。
2013年 イラストレーターとして活動開始。多摩信用金庫発行「広報たまちいき」の1面イラストマップ連載を8年間担当し、以降、観光協会、JR情報誌、多摩動物公園、大学など多数の依頼を受けている。
2019年 線画家として表現活動を開始。躍動感ある鮮やかな色彩でヨゾラ(夜空)シリーズや動物などをテーマに作品を制作。日中友好ながさき美術展にも出展。
2020年 「多摩平の森アートプロジェクト」に参加し、アートがもたらす人と人との交流の機会を創出する。
2021年 出身地長崎の原爆をテーマに「メッセージーNAGASAKIー」
2024年 「イマジンーHIROSHIMAー」を制作。恒久的な平和の大切さを伝える。
「あなたのためのオーダーメイド絵画」などお客様に喜んでいただける作品制作にも取り組む。

◆遠藤ちえさん / 空間時間ディレクター
「いつもの景色が違う表情を見せる」をコンセプトに、新たな「体験の時間」を作り出す、イベントの企画、空間プロデュース、インスタレーションを行う、空間演出チームのディレクター兼代表。
2011年、2014年と東京都指定有形文化財・自由学園明日館にて、音楽家近田ゆうき氏と「音楽×建築」のコラボレーションライブを主催。
2016~2020年 実践女子大学建築デザイン研究室(高田典夫名誉教授)との共同企画「光の庭」「光の森ー言葉と灯りとーいなぎ暮らす暮らす」「光の森 │ 日野市立中央図書館ー灯りが紡ぐ物語」など、大学、地域コミュニティ、公共施設との協働イベントに企画・運営で携わる。

(取材ライター:押川映子)