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竹下千尋:Takeshita Chihiro絵画家

[出身]東京都
[経歴] 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒。小学校教員補助員を経て、現在はこども美術教室「画塾」の講師をしながら、立川の石田倉庫にアトリエを構え、自身の作家活動を続ける。

2016.03.26

「作家」として制作中心の仕事ではなく、子どもたちに「教える」という形で美術に携わる。

[左]「羊のケイト」F4号(333×242)パネルに紙、アクリル絵具 [右]「ドローイング(ケイトのイメージ)」F0号(180×140)パネルに紙、水彩、色鉛筆

[左]「羊のケイト」F4号(333×242)パネルに紙、アクリル絵具 [右]「ドローイング(ケイトのイメージ)」F0号(180×140)パネルに紙、水彩、色鉛筆

TakeshitaChihiro_photo_02

 

3.11の後、働きながら絵を描くという環境を、とにかく変えたかった。

石田倉庫の「赤ビル」とよばれる建物の2階。竹下千鶴さんは、1つの部屋を4人でシェアして机を置き、絵画教室での仕事の合間に、ここで作品づくりを行っている。絵画教室では、幼児から小学生を中心に、絵画から工作まで幅広い造形や制作を教えており、ちょうど、机の前の壁には、これから子どもたちに教えるという教材の試作品も飾られていた。

「これまでは自宅で制作していたのですが、働きながら絵を描くという環境を、とにかく変えたかったんです」と、3.11のあと石田倉庫に入居した竹下さん。「教えるだけではなくて、自分もきちんと制作している場所を持っていることが大事なのでは」と、アトリエを探していた時、ちょうどこのアトリエのシェアの話があった。

大学では油絵を専攻。現職の前に1年間は、小学校の補助教諭をしていた。補助教諭の仕事では、教科に関係なく子どもたちに、算数や体育など、どちらかと言うと苦手な子が顕著で、子どもたちへの手が多く必要な教科の補助にあたっていたそうだ。

この経験のおかげで、はじめは「子どもが苦手」だと思っていたのが、子どもたちと接する時間が増えるにつれ、子どもに造形を教えるという仕事が「自分に合っているかも」と思うように。

「小学校で美術を教えることに目覚めたというか、子どもに接することに目覚めた感じ。お。私、意外と子どもいけるな。絵画教室の先生になってみようかしら」と。 こうして、竹下さんは「作家」として制作中心の仕事ではなく、子どもたちに「教える」という形で美術に携わる、今の仕事を選んだ。

 

自分の好きなもの(事)をひとつでもいいからもってほしい。

絵画教室の子どもたちに教えるという教材の試作品。

絵画教室の子どもたちに教えるという教材の試作品。

「これ、紙粘土にはじめに絵の具を混ぜて色の粘土を作ってから、成形しているんですよ。この手法、実は絵画教室で知った方法なんです。」と、今年のアトリエ展の展示作品の一部を見せて頂いた。まるでマジパンのかわいいお菓子みたいに並ぶクマたち。

「わたし、動物が好きで。最近は、よくクマを描くんです。自分に似てるのかな。教室の子どもたちにもよく言われるんですよ。」ゆっくりとおだやかにお話してくださる竹下さんが、額の中からこちらを見ているクマさんに重なります。

ちなみにこれまでのアトリエ展では、その年ごとにテーマを決めて制作し、「普段のアトリエ」に近い形で展示販売している。2011年はステレンボードにアクリル絵の具で作った「くつした」、2014年は「鳥」をテーマに水彩画と紙粘土で作ったマグネット、そして2015年は、クマさんシリーズの作品の展示販売を行った。身近な素材を使った親しみやすいものを使っているのは、子どもたちに造形を教える竹下さんならでは。

[左]「くつした」(2011年のアトリエ展出品作品) [右]「鳥」(2014年のアトリエ展出品作品)

[左]「くつした」(2011年のアトリエ展出品作品) [右]「鳥」(2014年のアトリエ展出品作品)

残念ながら竹下さんのホームページはないが、講師をなさっている「子ども美術教室がじゅく」のホームページに、竹下さんから子どもたちへのメッセージがある。竹下さんの絵画家としての想いは、子どもだけではなく大人の心にも届く文章だ。最後に、下記に一節を抜粋し、ご紹介させて頂く。(全文は、「子ども美術教室がじゅく/講師紹介ページ」で、全文を読むことが出来る。

外部リンク:http://www.gajyuku.com/staff/chihiro/chihiro_takeshita.html

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自分の好きなもの(事)をひとつでもいいからもってほしい。 絵の先生のくせにこう言ったら怒られちゃうかもしれないけど、絵を描くことじゃなくてもいい。サッカーでも野球でもいい。歌でもダンスでも虫を憶えることでも、動物を世話することでもなんでもいい。 おそらくそれが自分の中で(自分の生きていく中で)支えになるから。 私がそうだったから。今でもそうだから。

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