
TACHIKAWA
BILLBOAD
東京・立川周辺のART&CULTURE情報
敷地内に一歩入ると、地面がアスファルトから土に変わる。
サクサクと落ち葉を踏みしめながら奥に進むと、大量の薪が積んであり作業場が併設されている。

風情ある古民家も佇んでおり、東京の中だということを忘れてしまう。
急な風景の変化に立ち止まっていると、管理をしている安齋あゆみさんが出向かえてくれた。
古民家は築70年。
リノベーションされているが、畳や障子や足踏みミシンなどに囲まれ、初めて訪れる場所だがどこかホッと出来る場所だ。

都会の中で始まった農業体験
ここは「暮らしのアトリエ藍と土」の拠点、NPO法人くにたち農園の会が運営する。
同法人は、国立市谷保を拠点に活動している。
貴重な水田や畑があり、そこで産まれた昆虫やカエルなど生態系が息づく場所が残っている。
2013年にコミュニティー農園として「くにたち はたけんぼ」を開園。
以後、「農園事業」「子育て事業」を軸として田植えや稲刈りの実習や、子供が土や生き物など触れ合える機会や場づくりを積極的に行っている。
「暮らしのアトリエ藍と土」もその一環として、定期的に藍や草木染の手仕事ワークショップを開催している。

「たまたま」が「たまたま」を呼ぶ!
染色の講師もしている安齋あゆみさん。
元々は曾祖母の家が徳島で藍染をやっていた。
安斎さんも農学部の造園学科に所属しており、山で落ちている枝を拾い、細かく刻んで火をおこし草木染めをやっていた。
藍染を始めたのは、「たまたま」お墓参りの帰りに藍染をやっていた人たちと出会ったのをきっかけに、10年前から千葉の先生に師事しすることになった。
6年前、「たまたま」旅行に行ったときに、国分寺の人に出会った。
今の拠点となる場所で藍を育てており、「たくさん出来すぎてしまいどうしていいか分からない」という話を耳にした。
安斎さんは、藍染を辞めようかと思っていた時期.。
SNSで「一度、立て直すので、藍染のカメを一度処分します」と発信したところ、旅で出会った国分寺の人から「立て直すなら一緒にやりたい」と連絡が来たという。
「たまたま」出会った人が、安斎さんをここにひっぱってきた。
藍染を自宅でやることに限界を感じていた安齋さん。
その土地と古民家の管理者だった、くにたち農園の会の理事長から「始まったばかりの場所だから借りれる人がいれば有難い」と声をかけられ、安斎さんの藍染の活動はスタートした。
すべては「たまたま」のご縁によるものだった。

染色初体験リポート
古民家での初めての染色体験。
安齋さんともう一人の講師、河村英子さんから手取り足取り教わっていく。
壁には河村さんが、白いデニムから染めた世界に1つだけのの服たちが目をひく。
机の上にはビー玉、おはじき、割り箸が並んでいる。布を選び染色のワークショップがスタートする。


① 絞り染めの模様つくり
ここで行うのは「絞り染め」。
布の一部を絞って染める技法である。
まずは布にビー玉や割り箸を巻き付け、輪ゴムできつく結んでいく。
染めた時に輪ゴムの部分は色が付かないので、出来上がりが、どんな模様になるのか全く見当がるのか全く見当がつかない。
出来上がりが楽しみになる時間。
いよいよ外に出て本日のメインイベントである染める作業だ。

② 染める
ワークショップの染色は二つコースがあり一つは「藍」。
もう一つが「草木染め」だ。
今回は「草木染め」コースの方で使用される植物は「蘇芳(すおう)」。
古くから日本では伝統色として、十二単などにも使われていた植物だという。
花ではなく木の幹をぐつぐつ煮ていき、金属を入れてイオンを化学反応で染める。
海外では10円玉や、大量の1ペニーコインで焙煎したこともあるのだそうだ。

蘇芳は血液のような色だというが、この段階では見た目はかなりどす黒い。
いよいよ布を投入。
静かにかき混ぜていく。
一旦休憩を挟み、次は銅を混ぜる「胴浴」。色は次第に赤黒く変化していく。
人間の血液も鉄や銅の成分が入っており、酸素に触れると酸化鉄や酸化銅になり同じように赤黒くなるという。
これが蘇芳が血の色と言われる由縁なのだ。

ゆったりまったり贅沢な時間
ここで安齋さんから「足湯も出来ますよ」と嬉しい提案が。
蘇芳の煮出した液をぬるま湯で薄め、足を入れると至福な気持ちに包まれる。
血液の循環をよくする作用が蘇芳には含まれているという。
長雨が続いた後の久々の秋晴れの中、心地よい風を感じ鳥の声を聴きながらの足湯。なんとも贅沢な時間だ。

いよいよお披露目
液に馴染ませておいた布を水で優しく洗い、いよいよビー玉をくるんだ輪ゴムを外していく。
思いっきり広げると、全く予想してなかった模様が現れた。
赤黒い液に浸かっていた布は赤紫の自然界の深い色に、染め上がっていた。
自分で作った作品ながら思わず見惚れてしまう。

五感を研ぎ澄ましての栽培
今回受講した草木染は、11月には栗、12月は枇杷、春には梅や桜など季節に応じて材料が変わるが、一貫してここで栽培されたものを使っている。
藍も同じく畑から種をまき育て刈り取る。
その時の気候変動に応じて管理も変わる。
気温、風、日差し、季節の変化、一つ一つ1年を通して藍と対話する。
「藍は生き物ですから」と話す安齋さんの言葉に、常に藍と向き合い、育む姿勢に胸を打たれた。


新しい仲間
そしてもうすぐ新しい仲間がやってくる。
何とそれはお馬さん。
厩舎も建設中でふれあい体験も考えているという。
染める体験だけでなく、お茶づくりや畑クッキング教室に、更には古民家もレンタルスペースとして丸ごと貸してもらえるので、ぜひ遊びにきてほしい。

■暮らしのアトリエ藍と土
東京都国立市谷保5069
045-505-7200
自転車の駐輪スペース(5台ほど)あり
駐車場がないため、谷保駅北口周辺のコインパーキングをご利用ください。
JR南武線谷保駅南口から徒歩5分
国立駅、府中駅、聖蹟桜ヶ丘駅より京王バス「国17」「国18」に乗車。
「国立府中IC前」バス停より徒歩2分
(取材ライター:永田容子)