散策型まちなか演劇「ロスト・イン・ファーレ~宇宙家族、立川で迷子になる~」
JR立川駅から北へ5分ほど歩くと「ファーレ立川」と呼ばれる区域があり、ここには世界36ヶ国92人の作家が手掛けた109点のパブリックアートが点在している。
「ファーレ立川アートミュージアム・デー2020秋」として10月18日、時間を区切った散策型まちなか演劇「ロスト・イン・ファーレ ~宇宙家族、立川で迷子になる~」が催された。
アート星の宇宙人たち、突如現る
突如、アートマーケット付近に白衣を着た研究員らしき男たちが現れる。
「このあたりに宇宙人らしい怪しい人物を見かけたという通報がありました。皆さん、見かけましたでしょうか」。
こんな一言から、劇はスタートする。
物語ははるか遠く、アートと科学が発達したアート星から、ゆかいな宇宙人の家族が、宇宙船の故障で地球に緊急着陸したことから始まる。
宇宙人たちの目的は、銀河の辺境にある星々のアート観光。
アート星の科学の力をもってすれば、現地人たちに見つかることはない、はずだった…。
しかし宇宙船の故障とともにシールドが消滅。彼らの姿は地球人に丸見えとなる。
こうして、宇宙人と地球人のファーストコンタクトが始まったのだ。
「宇宙人たちと別れたくない!」 アートを五感で楽しんだ1日
自分たちを見えてないと思っている宇宙人。様子を伺う研究員たち。
宇宙人家族はアートマーケットの商品を眺めたり、誰かの顔をのぞき込んだりしているうちに、やがて自分たちが人間に見えていることがわかり、驚きの表情を見せた。
ファーレのアート作品「私は太陽を待つ」の前では、「これなんて書いてあるの?」「どんな意味なの?」などジェスチャー。
作品「半分の車」ではポーズを取って写真に撮ってもらったり、作品「母と子を殺した父親のようなもの」「父親に殺された子を受精させた父親のようなもの」を見ては怯え、作品「会話」では音楽にあわせて3人で椅子取りゲームをはじめるなど大はしゃぎ。
最後は作品「見知らぬ人」の前にある石畳の中の土が露出したところに杖を突き立て、その周りでアート星と交信するための踊りを始めた。
踊りの最後、地球人たちのエネルギーも借りて杖に念を注ぐと、作品「訪問者」と同じ形をした杖の上の部分がまわり、交信は成功した。
踊り終えた宇宙人たちは、やがてペデストリアンデッキを上って女性総合センター・アイムに向けて消えていくところで、この物語が終わる。
公演は3回行われ、各回延べ90~120人ほどの観客が参加。
公演中、4,5歳ぐらいの女の子が、宇宙人家族ととても仲良くなり、「宇宙人たちと別れたくない!」と泣いてしまうほど、物語の世界に入り込んでしまった一幕も。
ファーレ立川のアート作品の魅力に、多くの人たちが触れ、楽しんだ1日となった。
◆まちなか劇『ロスト・イン・ファーレ ~宇宙家族、立川で迷子になる~』
脚本・演出:倉迫康史(たちかわ創造舎/Theatre Ort)
出演:林周一(風煉ダンス)、うえもとしほ(すこやかクラブ)、
衣裳:井上のぞみ(舞踏団ねねむ)
小道具:長谷川愛美
企画・制作:たちかわ創造舎