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ARTS COUNCIL TACHIKAWA「文化は街をつくる 街は文化も育てる」

立川文化芸術のまちづくり協議会の10周年を記念し12月4日、コトブキヤホールで「立川市の文化 私たちの未来」と題したARTS COUNCIL TACHIKAWA基調講演が開かれた。

アーツカウンシル(Arts Council)とはイギリスで発祥したもので、文化芸術振興に取り組む専門的な組織であり近年、日本でも全国各地でアーツカウンシルを設立する動きが進んでいる。

今回の講演会では、日本国内に広がる地域アーツカウンシルの先行事例などを参考に、地域の住民や産業、アーティスト、市民活動団体、そして文化行政をつなぐ立川市の文化芸術の未来が語られた。

2022.12.08

「ARTS COUNCIL TACHIKAWA」の可能性、そして未来

立川市と共に主催した立川文化芸術のまちづくり協議会は、2004年に制定された立川市文化芸術のまちづくり条例の理念に基づき、文化芸術の育つ環境づくりを目的として、2009年12月に設立。

これまで文化芸術の情報収集と配信、人材育成、交流や連携強化、そして文化芸術活動の支援などを行ってきた。

今回は活動の10周年を記念し、これまでも協議や視察など重ねてきた「ARTS COUNCIL TACHIKAWA」の可能性や、立川の未来を考えるためのシンポジウムとして企画した。

冒頭、立川市副市長で (公財)立川市地域文化振興財団の理事長も務める田中良明さんは

「助成金の交付など協議会は、立川市の文化芸術支援のため下支えしてくれている。本日の事業でどのような意見が出るか、楽しみにしている」と挨拶。

来場した60名余りの参加者と共に、10周年記念事業の幕が開いた。

 

世界における日本、そして地方の文化芸術施策を語る

第1部では、文化政策研究者で芸術学の博士である太下義之さんを招き、基調講演「50分de文化政策 −50分で日本の文化政策を読み解いてみる−」が行われた。

世界の先進国と比べた、日本の文化事業への支出対比などデータで示し、文化庁の京都府への移転などにも触れ「いかに日本が文化や芸術振興に力を入れていないか」を解説。

これまでの歴史や経緯の中で、近年は文化芸術に「観光」「まちづくり」「国際交流」「福祉」「教育」「産業」を連携させ、「文化と経済を車の両輪として見る」取り組みへと移行している現状などを語った。

またオリンピックを契機にイギリスで発祥し世界から注目を集めた「アーツカウンシル」。
成功した起因や、具体的事例など紹介され、「文化芸術の支援に関し、専門家のいる組織」として、「なぜ日本版アーツカウンシルが必要か」について説明された。

 

全国でも稀有な“市民が主体”の街、立川

第2部では、太下さんと共に、武蔵野美術大学名誉教授の今井良朗さん、国立音楽大学准教授の瀧川淳さん、ウドラ夢たち基金副代表の新海きよみさんが、立川にゆかりのある有識者として登壇。

同協議会の副委員長で、たちかわ創造舎ディレクターの倉迫康史さんのファシリテートにより、パネルディスカッション「立川市の文化 私たちの未来」が催された。

立川では市民が主体となった活動が多いことに触れ、今井さんは

「国は方向性を示すが、誰がそれを具体的に進めるのかが文化芸術では課題。立川市は全体が硬直していない。

市民、団体、企業、自治体がフラットな関係で話し合いができているのが、とても面白い。

協議会がすでにアーツカウンシル的な役割を担っており、財団や自治体との相乗効果も進んでいるので、立川であれば国の施策を具現化できると思う」と語った。

立川市役所で文化芸術の担当部長も務めていた新海さんは

「急激な社会変化の時、文化芸術の支援はまっさきに切られる傾向にあるが、コロナは自治体にとって相当大きなインパクトだったことが予想される」

と自治体としての立場と現状を話し、

「だがアートや文化が盛んな街は大きな魅力を持ち、市民が自分たちの街に誇りを持てる根本となる。

次世代を担う子どもたちに、今後さらに文化芸術に触れる機会の多い街を目指すべき」と立川としてのあるべき姿を話した。

瀧川さんは「音楽の世界において1プレイヤーでもある。音楽は世代を超えて感動を共有できるもの。

学生たちも地域に参加し、連携するが一過性になってしまうのが課題。後進へつなげ、自走する仕組みが必要で、そこに予算の支援をしていくことが必要」

と学生の地域活動への参加について課題を示した。

こうした立川での話を聞いた太下さんは「“市民が主体”と全国各地の自治体は話すが、本当に市民が主役になっている地域は少ない。

立川市はファーレ倶楽部など、積極的に活動する市民も多く、それを支援するための協議会と文化財団の双方、そして自治体が連携していることが、全国ではない成功事例だと思う。

ただ今は関わる人の熱意で続いているが、継続性が問題。将来を見越した施策が求められている」と見解を述べた。

パネルディスカッション終了後は、交流会が催され、各団体の活動PRや意見交換など行われ、10周年記念事業は盛会のもと、幕を閉じた。

(取材ライター:高木誠)