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東京・立川周辺のART&CULTURE情報

「回遊」KOH(提供:ギャラリー国立)
今春、武蔵野美術大学油絵学科3年生になるKOHさんだが、絵を描き始めたきっかけは、高校で美術クラスを選択したことだという。
特定のモチーフを描くというよりも、油絵具を幾重にも重ね、平面上に空間を作り出すことを追求してきた。

KOHさん
— 本展のコンセプトを教えて下さい
以前からの制作テーマでもある「空間への手がかり」を、油絵具の透明性と塗り重ねることによってできる層を使って、どのように美しく深く表現するか。
それに対する実験的な行為、タイトルにもありますが「解析」を試みた展示になったと思います。
— なぜ、あえて油絵具なのでしょうか?
油絵具というと布に描くもので、立体的な質感といったイメージがあるかもしれませんが、発明当時の油絵具は、今よりも柔らかく、板(パネル)に平滑に重ねていくのが向いている素材でした。
自分はその時代の表現に惹かれていることもあり、絵具を塗り重ねる中で、空間や光が見えてくる瞬間がとても好きなのです。
― 青色が印象的な作品が多いですね。
絵画は、遠くのものを描くときや空気感を表現するとき、青みがかった色味を使います。
なので、空間を薄く覆っているイメージを作りだすために、ブルー系の色味を使用しています。

「漂流する観察」KOH(提供:ギャラリー国立)
— 創作のアイディアが出る時はどんな時ですか
描いている最中に生まれてくることが多いです。
手を動かし続けていると、例えばモチーフが決まっていなかったとしても、「この辺に何か見えるな」とか「樹を描きたいな」とか、そういうイメージが出てくる。
だから、常に描くこと、まずは手を動かすことを大切にしています。
― 学業との両立は大変ではなかったですか
まずは、場所の問題がありました。
12月には大学も閉まってしまうので、大きな作品をどこで描くか。
もう一つは、スケジュールの問題です。
制作上、乾燥というのも大事なプロセスになりますし、サイズによっては体力もいる。
そうなると、4枚も5枚も一緒には描けませんので、どう管理して順番を付けるか。
その間に、期末レポートも入ってきて。
とは言っても、気まぐれに行った方がいい時もあるので、大まかな計画といった感じです。
― 本展の注目ポイントはありますか
大前提として、好きなように観て欲しいというのがあります。
その上で、絵具の色の重なりだったり滲みだったりが、複雑に重なることで生まれる空間性を観てもらえたら嬉しいなと思っています。
実際の展覧会を通して学生らが学ぶ機会を
本展には、同じく現役の美大生である、田村優太さん(武蔵野美術大学2年・空間演出デザイン)と柳沢怜皇さん(東京造形大学3年・映像)がクリエイターとして参加している。
主催者であるギャラリー国立の高橋新樹さんは、「学生が経験を積める機会を提供していきたい」と語る。
取材した当日もギャラリー内で、田村さんとKOHさんによる展示設計の打ち合わせや、柳沢さんによる動画撮影が行われていた。
*記載された学年は、2025年2月現在。


左から、高橋さん、田村さん、KOHさん、柳沢さん
アイディアと技術を出し合って作り上げた展示空間
3月12日(火)~3月18日(水)、グランデュオ立川のショーウィンドーでは、KOHさんによる新作「吸い込まれてもいい」が特別展示された。
1.8m×1.2mの大型作品で、朝方など時間帯によってはアーケードの天井から光が注ぎ、現実と想像の世界が一体となって、絵画の中に木漏れ日が差しんでいるようにも見えてくる、幻想的な作品だ。

「吸い込まれてもいい」KOH/グランデュオ立川 ショーウィンドー(提供:ギャラリー国立)
同施設8F多摩の小径では、KOHさんと田村さんが工夫して作り上げた展示空間が広がっていた。
通常の白い壁のギャラリーと違って百貨店らしい模様のある壁に展示するため、どうしたら作品の世界観が伝わるか、共存できる形を模索したという。
また、柳沢さんが撮影編集したインタビュー映像も展示され、作家の思いを知れる重要な役割を果たしていた。

展示風景/展示空間デザイン:田村優太さん

インタビュー映像/映像制作:柳沢怜皇さん
多摩地域の文化芸術の未来に期待
KOHさんをはじめアーティストを志す若者にとって、今回のように多くの人々が行き交う場所で展示することは、大きなチャレンジであり、チャンスでもあるだろう。
これからも、立川市や周辺地域で学生や若者を応援する展示イベントが増えていったら、多摩地域の文化芸術の未来は更に盛り上がるのではないかと期待している。
■開催概要
東京五美大公募展「ここから」2025 大賞受賞記念
グランプリKOH個展「光の解析」
会期:2026年2月27日(金)– 3月31日(火)
会場:グランデュオ立川 8F 多摩の小径
時間:10:00–20:30(日曜・祝日は10:00–20:00)
※最終日は15:00まで
※営業時間が変更になる場合があります。
最新情報は、グランデュオ立川の公式HPをご確認ください。

提供:ギャラリー国立
展覧会の詳細は、ギャラリー国立・公式サイトをご覧ください。
https://www.gallery-kunitachi.com/
(取材ライター/岡本ともこ)