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もんでんゆうこ:Yuko Monden線画家http://kyky72.wix.com/monsketch

出身:長崎県
日野市在住。下書きをせずにペンで絵を描く線画家。永沢まこと氏に師事。現在はカルチャー教室講師や保育園絵画講師、イラストレーターとして多摩地域を中心に活動している。不定期で絵画教室も開催。

2016.08.02

日野のまちを描く

線画家・もんでんゆうこさんにお会いすべく訪れたのは、中央線日野駅からほど近い「キョテン107」。ここは日野駅周辺活性化に取り組む「賑わいのあるまちづくり」プロジェクト(ひのプロ)が運営するコミュニティスペース。
「こんにちは!」と朗らかな声が店内に広がり、もんでんさんが現れる。

多摩信用金庫が毎月1日に発行している多摩地域の魅力や旬の情報をまとめた総合情報紙「広報たまちいき」では、表紙の『多摩歩き』(写真は5月号vol.36)を連載。もんでんさんが実際にまちを歩き、出会った場所・人・ものをイラストマップで紹介している。

多摩信用金庫が毎月1日に発行している多摩地域の魅力や旬の情報をまとめた総合情報紙「広報たまちいき」では、表紙の『多摩歩き』(写真は5月号vol.36)を連載。もんでんさんが実際にまちを歩き、出会った場所・人・ものをイラストマップで紹介している。

線画家として活動の幅を広げるもんでんさん。日野市在住のため時々訪れるというキョテン107で、絵画制作の裏側をお聞きした。

「初めて絵の仕事をしたのが日野だったんです。市内にあるお店の絵を描かせてもらったら、お店の人が買い取ってくれて。その絵を見た人が日野の『日野宿寺社めぐりマップ』を作ってくれないかと声をかけてくれました。そしてそれを見た人が今度は『ひのカフェロードマップ』を作りたいと。さらにそれが『多摩歩き』につながりました。ひとつの仕事が次々につながっていったんです」

もんでんさんのスタート地点とも言うべき日野。ではキョテン107に訪れたきっかけは?
「ここ(キョテン107)に初めて来たのは、日野駅界隈の『多摩歩き』の取材時でした。中にはたくさん人がいて、恐る恐る扉を開けたんですが…みなさん初対面なのに『食べなよ』『飲みなよ』ともてなしてくれて(笑)。とてもアットホームな雰囲気でした」

店内には「プロフィールBOX」と呼ばれる箱がずらり。箱スペースを借りると(500円/月)、自由に自分を表現できる空間として利用できるという。
「プロフィールBOXの話も聞いて、早速作らせて貰いました。その後もイベントがあると参加しています。ここに来たことで色んな人と出会い、つながりが広がりました」

もんでんさんのプロフィールBOX。中にはポストカード(1枚100円)やもんでんさんと関わりのある永沢氏の本が。

もんでんさんのプロフィールBOX。中にはポストカード(1枚100円)やもんでんさんと関わりのある永沢氏の本が。

 

ペンスケッチとの出会い

「小さいころから絵を描くのが好きでした。私は飽きやすい性質で、習字やピアノにも通いましたが、どれも長続きしませんでした。その中で、絵だけはずっと続けられたんです」
もんでんさんがペンスケッチをはじめたのは、2002年。当時暮らしていた岡山で「ペンスケッチ教室」に出会ったのがきっかけだった。

「最初は習い事として楽しんでいたんですが、東京に来て永沢まこと先生の教室に通ってから変わりました。『やるならプロを目指さないと意味がない!』って先生がおっしゃったんです。もとから絵を描くことを仕事にしたい思いが私にもあったんですね(笑)。先生の言葉で『プロになってやる!』とやる気になりました」

「描きたい!」と思ったときに描けるよう、常にスケッチブックとペンを持ち歩くようにしているそう。

「描きたい!」と思ったときに描けるよう、常にスケッチブックとペンを持ち歩くようにしているそう。

継続は力なりですね、と微笑むもんでんさん。今でも心に留めている永沢先生の言葉があるという。

“野球では、塁に出たらホームに戻ってこないといけない。それと同じように、一度ペンを取ったら描き切らないといけない”

「“苦楽(くるたの)しい”と呼んでいるのですが…絵を描くのが好きで、絵を描いていると楽しいんです。でも描き切るまで苦しいときもあります。そのときには先生の言葉を思い出しますね。そうしてがんばると、絵が完成したとき大きな達成感があるんです」

日野市・高幡不動尊のパノラマ絵(3220㎜×285㎜)。細かく書き込まれた風景には、臨場感がある。

日野市・高幡不動尊のパノラマ絵(3220㎜×285㎜)。細かく書き込まれた風景には、臨場感がある。

作品を見せていただくと、ペンならではの“線の表情”をより強く感じた。少し太かったり、細かったり、まっすぐな線、曲がっている線…もんでんさんの巧みなペン使いが独特の風合いを生み出している。

 

純粋に絵を描くことを楽しみたい

もんでんさんは、大人・子どもに限らずペンスケッチ教室の講師も勤めている。4年目を迎える保育園での教室は、もんでんさんにとっても良い刺激になっているようだ。

「子どもたちは自由ですね。だから絵も自由。最近だと五輪のマークとブラジルの国旗を題材にしたんですが…、五輪の輪っかをぜんぶ横に並べて描いたり、ブラジルの国旗も全然違う色にしたりするんです。おそらく子どもたちの中にすでにイメージがあるんですね(笑)。『いいよ、そのまま描きなよ!』って声をかけています」
「きちんと描くことは求めてはいません。それぞれの子どもたちのいいところを褒めてあげるようにしています」
きれいに描くことは、矯正することになる。ただ楽しく絵を描いてほしい、という言葉にもんでんさんの「描くこと」に対する思いが表れているように感じた。

いつも持ち歩いているというスケッチブックには、もんでんさんの見た景色が1ページごとに描かれている。おじさんの背中、子どもたちの日常、何気ない小道。どの絵も「どこかで見たことがある」ような、ありふれた風景。けれど目にした瞬間とほっと心が和らいだり、ふふっと笑ってしまったり。

そう、もんでんさんの絵は動いている絵だ。眺めていると、まるでその場に居合わせたかのように、まちの雑踏や木々のざわめき、人の話し声が聞こえてくる。普通の「線」が動きのある「風景」に変わる。その感動をぜひ体感してもらいたい。
作品を眺めながら、もんでんさんの「目」で見た風景をじっくり味わった。

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