小倉千紗(Ogura chisa)水引アーティストhttps://www.instagram.com/chisa.greenleaf/?hl=ja
「水引」とは祝儀袋や不祝儀袋など、結婚式の祝儀袋など格式あるシーンで献げられるものを飾るために用いられる飾り紐のこと。
細く美しい紐で作られた鶴や亀、松竹梅、宝船などが水引細工として代表的なものとなる。
この水引細工に心奪われ、熱き思いを寄せて活躍する水引アーティスト・小倉千紗さんに話を聞いた。
伝統文化の「水引細工」で、新しい世界観を創造
生まれは千葉県松戸市。父親の仕事の関係で、6歳の時に立川市に越してきた。
「もの作りをしていると大人しいタイプの人間に見られがちですが、どちらかというと体育会系。日本女子体育大学出身で、スポーツ指導が出来る幼稚園の先生を目指していたんです」と小倉さんは目を細め話す。
中学生の頃は卓球好きな父親の影響と、福原愛選手から再燃した国内での卓球ブームが重なり、卓球の腕前は年々、上達。
席を吹奏楽部に置いていたが、大会の時だけ招集される卓球部員として学校公認で兼務していた。
もの作りの楽しさのきっかけは母親からだった。
編み物の楽しさをきっかけに、もの作りの世界へ
「友達とゴム縄跳びがしたくて、母にゴム編みを教わったんです。
そこから編み物が大好きに」。
編むことの楽しさに没頭し、当時小学生の小遣いでも気軽に買えた、毛糸と編み針。
中学生の時には手袋、マフラーなど、身に付ける小物は全て自作のものとなる腕前になり、気がつけば結婚して、子供が生まれた今も、生活の一部となる手仕事になっている。
編み物から、黙々とコツコツと静かに作品に取り組むことの心地良さを知り、千紗さんは、ものづくりの世界に更に傾倒していったという。
艶やかな美しい色彩に魅了された水引との出会い
スポーツも、モノ作りも、どちらも大好きだった千紗さん。
日本体育大学を卒業後は幼稚園の先生として3年の時を過ごし、その後結婚。
家事と育児に追われる中、ものづくりの楽しさは忘れることなく続けていたという。
ある日、「浴衣に似合うアクセサリーがほしい」と思い、浴衣と相性の良い素材を探す中、和紙を使った日本の伝統ある素材である「水引」に初めて出会った。
結ぶことで様々な形が作り出される工程は、幼少の頃から慣れ親しんだ編み物と似ていたため、すぐにのめりこむ。
何より和紙でできているからこその身につけた時の軽さ、そして品が良く、艶やかな美しい色彩の和紙の紐を、コツコツと結び上げて作る作業工程そのものに、どんどん魅了されていったという。
コロナ禍、縮小する水引業界に感じた使命
独学で水引の結び方を習得した千紗さん。
水引で作るアクセサリーについて深く探求すると同時に自ら作った水引アクセサリーを販売するハンドメイド作家への道も模索する。
しかしコロナ禍、人と人が集うことに制限を課せられ、各地で開催されるハンドメイドイベントもことごとく自粛。
ハンドメイド作家を志す人たちの夢が萎んでいくことで手しごとと、ものづくり業界全体の斜陽に繋がる様を目にすることになる。
千紗さんが魅了され続けてきた水引業界も同じであった。
「私が大好きな水引細工が衰退せず残り続けるために私が出来ることは何だろうか?」と、使命を探る日々を続けた。
伝統ある素材に新たな光を当てる 作家同士の切磋琢磨できる場作りも
「伝統あるものを扱う業界にはどうしても『水引で作られたものは和小物であるべき』など、様々な固定観念がつきまとう。
そういう認識を壊し、水引という素材を生かす新たな視点を探っていくチャレンジをしたいんです」と瞳を輝かせながら熱く強く語る千紗さん。
水引を使ったアクセサリー制作から、本来水引が持つ「祝いの気持ちを表す意」をデザインに込めた作品で、コスチュームジュエリーの世界に舵をきり、それぞれの作品に新らしい存在感を作り出している。
自らの制作活動の他に、水引作家同士が情報交換や切磋琢磨できる場として「MIzuhiki Creation Team」を主宰。
既に作家として活動をする人から、これから水引作品の制作や販売を目指す人をを対象に、展覧会の企画や、コンサルティングをするなど幅広く展開中している。
「家族の支えがエネルギー源」 現代アートとしての水引に挑戦こうした活動のエネルギー源は、やはり家族の存在だと千紗さんはいう。
「好きなことをやったらいいよ」と、水引アーティストとしての活動に背中を押してくれた夫。
千紗さんが制作している姿を見ながら、知らぬ間に覚え、隣で一緒に水引を結び、カタチ作る子供達。
その姿を見て、家族から力をもらっているのだという。
「仕事とプライベートのバランスをとることが、これからの課題」と話す千紗さん。
今後の思い描く自身の未来の姿については「水引に関わりながら人と違うものを生み出し続けたい。
アクセサリーやコスチュームジュエリーのジャンルを問わず、もっと幅広くやっていきたい」と意気込む。
「現代アートとして水引を取り入れることも、今後は視野に入れて活動していきたい」と新しい挑戦に目を輝かせ話してくれた。
水引アーティスト・小倉千紗
デザイナー/Mizuhiki Creation Team 代表
千葉県生まれ立川育ち
●水引や銀線を使ったアクセサリーとジュエリーを販売、展示
●JEUGIAカルチャーセンター講師を務め独立
●これまで120店舗以上の商業施設でPOPUP実施
●2023年から水引作家を集めたグループ活動MizuhikiCreationTeam主催を務め、グループ展やワークショップ実施
●2022年Japan Expo Paris2022出展
●2022、2023年AJCクリエイターズコンテスト入選
●2023年真言宗立教改宗1200年記念古都アート展感謝状授与
●2023年未来へ届けアートの光展inいしかわ芸術大賞(工芸部門)受賞
●2023年Japan week in Seville 展示
●2024年IJT国際宝飾展株式会社山森製鎖ブース展示協力。
現在、株式会社山森水引公式アンバサダーとして就任。
(取材ライター:辻本喜代美)