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石田高章:Ishida Takaaki石田倉庫有限会社代表取締役:Ishidasouko CEOhttp://www1.ttcn.ne.jp/ishi-san/

[出身]東京都
[経歴]1961年に先代が、井戸工事や地質調査を中心にボーリング事業を展開する石田産業有限会社(石田ボーリング)を設立。1983年頃から石田産業の倉庫を芸術家たちにアトリエとして安価で貸すようになる。2015年より、不動産業を中心とした事業を展開。年1回開催される「アトリエ展」は、地域の恒例アートイベントとなっている。

2016.03.29

倉庫をアトリエとして貸し、芸術家たちの活動を支援するクリエイティブ一家。

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「夢をかなえてやりたかった」と倉庫をアトリエとして安価で貸すように。

「わたしたちの写真は撮らなくてもいいわよ」と、遠慮なさるところを、では小さく撮りますからと、倉庫スロープ下の赤いドアの前で並んでいただいた。写真右から、石田菊江さん(常務取締役)、高章さん(代表取締役)、幸枝さん(高章さんの奥様)。石田倉庫の大家である石田産業有限会社のみなさんだ。

石田産業有限会社の前身である立川機械製作所がこの地に設立されたのは1927年。創設者は現代表取締役である高章さんの祖父吉蔵さんだ。戦時中はこの一帯は軍需工場で、立川機械製作所もその一端を担っていたという。戦争が終わり工場も閉鎖し、厳しい時代を経た1961年に、高章さんの父である隆一さんが、井戸工事や地質調査を中心にボーリング事業を展開する石田産業有限会社(石田ボーリング)を設立した。

[左]初代社長石田吉蔵さん。秋田から上京し立川機械製作所を設立 [右]その当時の社屋

[左]初代社長石田吉蔵さん。秋田から上京し立川機械製作所を設立 [右]その当時の社屋

終戦後の軍需工場の跡地は、「米軍ハウス」とよばれる米軍兵士たちの住居や、貸し倉庫、アパート等に替わった。さらに、米兵たちが母国に帰ってハウスが空き家になると、芸術家や美大生、芸術家を目指す若者たちが住むようになったという。隆一さんは、そんなお金のない芸術家たちの生活を見て、「夢をかなえてやりたかった」と、1983年頃から石田産業の倉庫をアトリエとして、安価で貸すようになったそうだ。

 

石田倉庫のアトリエ展では、アーティストたちと一緒に作家として参加

アトリエ展で手品を披露する在りし日の隆一さん。「手品するおじいさん」(外部リンク:http://sokonews.kuizu.net/members/#entry83)

アトリエ展で手品を披露する在りし日の隆一さん。「手品するおじいさん」(外部リンク:http://sokonews.kuizu.net/members/#entry83)

それから30年以上経った今、近くにあったアパートは火事で消失、芸術家たちの住んでいたハウスも取り壊されて、時代も変わり周辺の景観は変わってしまったが、石田倉庫は変わらず芸術家たちの活動を支援している。

アトリエの入居者はもちろん、地域の信頼と人望の厚かった隆一さんは、2014年の春、永眠。隆一さんの遺志を継いでアトリエを見守っているのが、高章さんをはじめとするこの石田家のみなさんだ。2015年現在は、不動産業を中心とした事業を展開している。

そして、そんな石田家のみなさんも、実はクリエイティブ一家。毎年、石田倉庫のアトリエ展では、アーティストたちと一緒に、自らも作家として参加している。「おやじ(隆一さん)の趣味が手品でね。アトリエ展では毎年手品を披露してたんですよ。2014年のアトリエ展では、アトリエのみなさんが亡くなったおやじのことを偲んで『てのしなしな』(=手品)をテーマにしてくれて。うれしかったよね。」

 

ボトルアートと焼き鳥と。「8年越しのタレも言うならば“アート”かな。」

[左]高章さんのアトリエ[右]ボトルアート。曲がったり膨らんだり、まるでビンに命が宿ったよう。

[左]高章さんのアトリエ[右]ボトルアート。曲がったり膨らんだり、まるでビンに命が宿ったよう。

そして高章さんも、「石田倉庫の芸術家の方々の影響もあってね、自分もなにかやりたいと思って。たまたま好きでコレクションしていたコカコーラのボトルを、吹きガラスの工房でふくらませてみたら面白くなって。作品を飾ってたら売って欲しいって言われて、出品するようになったんだよね。」というボトルアートを制作している。

さらに高章さんは、地域の運動会やお祭りがあると、やきとりを焼いて振る舞う「やきとり」名人でもあり、アトリエ展では、毎年屋台「やきとり たか」を出店。2日間で4,000本が完売する人気店でもある。

菊江さんのミシン刺繍の作品。左のゾウさんは友人へのプレゼント。

菊江さんのミシン刺繍の作品。左のゾウさんは友人へのプレゼント。

また、高章さんの母菊江さんも多才。着付教室の師範講師をしつつ、「ひまわり工房」というミシン刺繍をはじめとする手芸教室も行っている。「手芸が好きでね。色やモチーフを考えて刺繍をするのがとても楽しいのよ。ボケ防止にもなるしね。バッグとか色々作って人に差し上げているの。」

幸枝さんの作品。[左]赤毛のアンのミニキルト(未完成)2015[右]ワークショップで制作予定のイチゴ

幸枝さんの作品。[左]赤毛のアンのミニキルト(未完成)2015[右]ワークショップで制作予定のイチゴ

高章さんの奥様幸枝さんは、「実は私も女子美出身で。子育てが一段落したので、何か始めようとおもって、パッチワークをしているんです。アトリエ展でも、お子さまもできるような簡単な手芸ワークショップを開催したりしています」。菊江さんは駐車場前のNO.5の1階、幸枝さんは赤ビルの3階で毎年出店している。

「ぼくたちもね、このアトリエ展を毎年とても楽しみにしているんだよね。地域の人や知り合いもたくさん来てくださるから、来るみなさんに楽しんで頂きたいしね。」
何と言っても、大家と入居者が一丸となって開催するアートイベントは、他の地域では類をみない素敵なイベントである。今年も、来年も、これからもずっと、アーティストの夢と志が未来へと続くようにと、願わずにはいられない。