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齊藤 崇:Saito Takashi有限会社たるたるジャパン/株式会社夏祭り 代表https://www.yokaibonodori.tokyo/

夏の暑さも和らいできた夕暮れ時。妖怪に会いそうな路地を進む。

しばらくすると10店舗ほどの飲食店が集まる「GALERA FOOD MARKET TACHIKAWA」が見えてくる。
立川含め多くの場所に飲食店を展開する有限会社たるたるジャパンの店舗「カオマンガイsoi6」も名を連ねる。

この会社や店名のことは知らなくても毎年、GREEN SPRINGSで開催されているイベント「妖怪盆踊り」を知っている方は多くいるのではないだろうか。

立川に芽生え始めてきた「新しい文化」。

その育みに携わってきた有限会社たるたるジャパン、株式会社夏祭り代表の齊藤崇さんに話を聞いた。

2025.10.04

「根をはった街」
「地元は富山県で高校卒業までいました。

東京の大学に進学したんですが、最初に住んだ場所が肌に合わなくて、中古の原付を買ってぐるぐる探し回っていたら、福生という面白い基地の街をみつけて、今まで住み着いてしまいました」。

「それしかできなかった」
「大学時代はスノーボードをしていたんです。卒業後、就職もしなくて。

26才くらいまでスノーボードをしていて大会にも出ていたんですが、そろそろスノーボードを辞めようかなと思って。

辞めた時に手に職もなかったから福生にあるイタリアンで働き始めて、料理をやってみたら『料理も面白かった』。そこからずっと飲食を続けてきました」。

「30才の時、いろいろあって働いていた会社を辞めたんです。

飲食やる人たちって独立を目指して働いていたりするんで辞めたら独立なんですけど、俺は独立とかはまったく考えたこともなかった。

さて、どうしようかなと思って考えていたんです。

でも考えているうちに、次も会社に雇われて働くって嫌だなとなってしまい独立することに決めました。

最初に始めたお店は、アジアン居酒屋でアジアごっちゃまぜの居酒屋でした。

いろんな飲食を経験してアジアが一番しっくりきたんだと思います。

洋食より、とにかく米が好きなんですよね」と笑う。

GALERA FOOD MARKET TACHIKAWA「 カオマンガイsoi6 」

 

「やってみたいことだらけ」
「一つのことを長く根気よく続けられない性格もあるんですけど。

続けていると、やってみたいことがどんどん出てきてしまう。

最初に始めた居酒屋も一生懸命やっていたら繁盛した。

本来だったら、もっともっとこの店を繁盛させようとなると思うんですが、俺の場合は『次こういうのやってみたら、もっと面白いだろうな』というものがどんどん出てきてしまって、気が付いたら今の状態になっていました。

ほんとうに衝動ですよね。

すごくいい物件を見つけて思いつくこともあるし、やりたい業態が思いついてやることもあるし、お気に入りのお店が辞めてしまうから受け継いだりすることもある。

あとは、大変なのはわかっているのにやってしまう。

辞めたくなることもあるけれど、辞めたら辞めたで辛い。

最後は、みんなが喜ぶ顔をみると『やっぱりやってよかったな』となる」と繰り返し沸き起こる素直な気持ちを教えてくれた。

 

「妖怪盆踊りの始まり」
「人と人のつながりや日本の文化が薄れていく中で、僕にも何かできないかなと思っていた時、電気グルーヴの『モノノケダンス』を観て、これなら俺でも現実にできるなって思たんだよね。

『モノノケダンス』のMVは化け猫がDJをするんですけど、それって石野卓球さんなんです。

それで、卓球さんに『福生の民家が立ち並ぶ小さな公園で爆音盆踊りがしたい』という依頼をした。

『正気じゃないよね』と怪しまれたと思うんですよ。

けれど、面白がってくれて引き受けてくれた。

最初は福生で始まった。

ですが、コロナもあったりして福生ではできなくなってしまった。

そうしたら『立川でやってよ』と声をかけてもらって、『株式会社夏祭り』を立ち上げ今に至ってます」。

会社にした理由は、イベントだけの展開をしていけるように、「イベント」と「飲食」を切り離したかったからだという。

 

「祭りに対しての思い」
「毎年もう無理とも思うんです。

なんとか続けてこられたんですけど、来年もできるんだろうかという不安や、なんでこんな頭を悩ませて苦しことしてるんだろうっていう、弱音ですよね。

ただ、苦悩も多いんですけれど、『この壁を突破してやろう』というモチベーションはあって。

大袈裟なんですけれど、ここで俺が負けたら世の中の祭りが負けてしまうって思ってい。

俺が必勝パターンを見つけて世の中の祭りたちに『こうすればいいよ』って言ってあげたいんです。

妖怪盆踊りはこの世の中にとってメチャクチャ良いモノだって思ってやっているから。

その良さを説明するには何時間あっても足りないくらい。

この良いモノを良いと思ってくれる人たちと想いを共有していきたいし、妖怪盆踊りが文化的に続いていってもらえたら嬉しい。

世の中の止まってしまっている祭りたちを動かしてあげたいんだよね」。

齊藤さんの言葉から「祭り」という文化に対しての熱い想いが伝わってくる。

 

「立川以外の場所は考えられない」
「参加してくれて、協力してくれているスタッフや妖怪盆踊り専門のチームは、福生や立川周辺で暮らしている。

みんな地元や近隣の人達なんだよね。

今更、都内や別の場所でやるとか考えられないよね。

毎年楽しみにしてくれている子供たちの顔とか見ると、ほんとうに嬉しいし最高なんだよ」。

妖怪盆踊り2024(左:昼/右:夜)

地元である富山での店舗展開の話から、妖怪盆踊りの絵本作製の話まで。やりたいことの話は尽きない。
次は、どんな面白いことを現実にしてくれるのだろう。

■齊藤崇 略歴
1972年 富山県生まれ。
2006年 独立。東京郊外を中心に13店舗を展開中。
2019年 福生にて妖怪盆踊り開催。
2022年 立川にて妖怪盆踊りを毎年開催。
2025年 富山県に店舗を拡大予定。

■イベント情報
 妖怪盆踊り2025 会場:GREEN SPRINGS 日時:10月11日(土)~13日(月・祝)
妖怪盆踊り2025|GREEN SPRINGS 東京都立川市|立川の盆踊りイベント

■お問い合わせ
HP : 福生、立川、飲食店/有限会社 たるたるジャパン
HP : 会社概要 | 株式会社夏祭り

(取材ライター: 高橋真理)