
TACHIKAWA
BILLBOAD
東京・立川周辺のART&CULTURE情報
収集歴25年、総数600本の「お土産耳かき」の魅力

上:石のぬいぐるみ/真ん中の4本:お土産耳かき/真ん中の一番下:回転耳かき/下:拾った石
小栗さんから初めてお土産耳かきのお話を伺ったのは、PLAY!PARKの取材をした時だった。
当初の私は、ご当地のお土産として耳かきがあることさえ知らなかったのだが、小栗さんはそこに面白さや奥深さを見出し、PARKでの仕事や自身の活動に通じるものを感じていた。
そして、それは、もうひとつの好きなこと「石拾い」にもつながっていた。
小栗さん:耳かきを集め出したのは、小学校2年生頃からです。
家族とよく旅行やキャンプに行っていたのですが、ある日、お土産屋で耳かきを見つけちゃって、「集めよう!」って。
途中で飽きたりもしているんですが、そういう時も家族や友人がお土産に買ってきてくれていたので、25年間、続いたというのもあります。
―お土産耳かきのどこに惹かれたのですか?
小栗さん:耳かきの上の部分には、ご当地のものが付けられているのですが、より魅力的にしようと主張すればするほど、邪魔になっていって、本来の用途からかけ離れていく。
でも、作っている人も買う人も、そんなこと全く気にしていないのが、すごくいいなって。
それはPLAY!PARKにも、石拾いにも通じるものがあって。
役に立たないものって、すごく面白い。
今の世の中では、役に立つものだったり、効率化だったり、そういうものが重要視されていますが、それと逆行して、役に立たないもの、無駄なものがあってもいいんじゃないかって思うんです。

コレクションの一部を持ってきてくれた。集めた耳かきは、買った日付や場所などを記入して、保管管理している
子どもが前を歩いて、大人が後ろをついていく
小栗さん:PLAY!PARKも、遊びがなくても生きていけるけど、ここで体験したことが、好きなものを見つけるきっかけになったり、壁にぶつかった時に背中を押してくれる何かになったり、その可能性を感じます。
一方で、本当に役に立たない場合もあると思うんですよ。
でも、それでもいいという気持ちもあります。
面白いからただやっているだけで、それが何にもならずに終わってしまってもいい。
それくらいの大らかさが必要だなって。
それは、働いている大人たちにも大事じゃないかな。
以前、子どもたちにトイレットペーパーをプレゼントしていたことがありました。
子どもたちはそのトイレットペーパーを使ってなにかしら楽しそうに遊んでいる。
それを見た親御さんたちは、「なんだ、こんなことでもすごく喜ぶんだなあ」って、大らかな子どものアイディアにハッとさせられて、大人が子どもに導かれていく。
普段は知識がある分、大人が子どもに教えるわけですが、それが逆転して、何も知らない子どもから大人たちが色々と気づかされるってことが、ここではよく起こります。
面白いから拾っている
小栗さん:石を持ってきたんですよ。
青森とか新潟とか地方の仕事に行く度に拾ったものです。
出身である愛知に帰った時にも拾っています。
—なぜ、石が好きなのですか?
小栗さん:すべすべだな、丸いなとかで。
高価なものでも何でもなく、蹴り飛ばしてしまいそうなものなのですが、すごく綺麗なんです。
「何に使うの?」ってよく聞かれますけど、面白いから拾っているんですよね。
綺麗だなと思ったり、けっこう人に見せびらかしたりするんですけど、こうやってしゃべったり、一緒に何かやりたいですねって言ってくれる人もいたり、どんどん面白い人が集まって来てくれる。
子どもたちって、石拾ったりしますよね。
ポケットに入れて、持って帰ってきて、親としてはどうするんだ?って困るけど。
捨てると子どもに怒られるし、みたいな。
子どもたちとは展示や販売の時によく話すのですが、「これは丸いから」とか「これは模様がきれいだから」とか教えてくれる。
でも、多分そんなにこだわりは無くて、大事だったはずのものが、数週間後には急に、「捨ててもいいよ」ってなる。
それぐらいの気持ちでやっているのがすごいなあって。
それと、石がハンバーグに見えるとか、転がして遊んだら楽しそうとか、役に立たないものから、どんどん想像を膨らませていくのには、ハッとさせられます。

—子どもからエネルギーをもらっている?
小栗さん:すごくもらっています。
子どもに対しては、可愛いとか好きとかよりも、リスペクトの気持ちが強い。
子どもたちは何も考えずにやってるだけだと思うのですが、大人になってから、いざやろうとしてもなかなかできない。
答えまでのプロセスを知ってしまっているから。
だから、PLAY!PARKという場所で働けることはとても有難いと思っています。
想定外のことがゴロゴロ起きて、とても刺激的です。
迷いながら見つけていく、答えがない楽しさ
小栗さん:PLAY!PARKの象徴でもある「大きなお皿」には、ルールや遊び方について詳しく書かれていません。
中には、どうしたらいいんだろうって迷っちゃう子もいるのですが、私は迷ってもいいと思っています。
迷いながらどんどん見つけていく楽しさ。
ここは学校ではなく、あくまであそび場ですから、答えが何もないまま、目的もなく、フラフラしてもいい。

PARK中央にある「大きなお皿」。シーズンごとに、様々な大型遊具が展開する。現在は、「チュール雲」が登場中!
また、PLAY!PARKでは、あえて未完成で出して、子どもたちと共に完成させるということをしています。
実のところ、スタッフとしては、そちらの方が大変だったりします。
その都度、自分で考えなくてはならないし、安心できるレールがないわけですから。
でも、そこが、私たちの一番努力すべきところだと思っています。
子どもたちが何もない場所で、自分勝手に色々なものを見つけられる環境を作ること。
のびのびと、思考的にも好きなようにウロウロできるように、いかに大きな心で迎えてあげられるか、そんなことを大切にしています。

通称:黄色い小屋。手塚ゼミの学生さんが制作したものを、PARKが引き取った。使い方は自由。子どもたちに大人気とのこと。試しに入ってみたら、居心地が抜群だった
卒業制作はどら焼きみたいな布団
—学生時代のことを教えて下さい
小栗さん:名古屋芸術大学で建築や空間デザインを学んでいました。
でも、その時点で、ほぼ建築や家具のことはやってなくて、卒業制作では布団を作りました。
—布団ですか?
小栗さん:布団というか、布団のようなもの。
どら焼きみたいな丸い形をしていて、家具でもないし、寝る布団でもないし、遊んで楽しいものです。
学校では、世の中に対してどんな効果があるか聞かれるので、「親と子どもが一緒に入ったり包まれたりして、コミュニケーションをとるもの」と言ってたんですけど、心の中では、「そんなのなくてもいいんじゃん!」って思いながら作ってました。
PLAY!PARKを設計した手塚貴晴さんとの出会い
―PLAY!PARKのキュレーターになった経緯を教えて下さい
小栗さん:卒業制作展に審査員として手塚さんが来ていて、それがきっかけで声をかけてくれたんです。
自分が考えていることは仕事じゃないし、どうしたらいいんだろうって思っていたので、「PLAY!PARKなら仕事になるよ」って誘われて、有難かったです。
当時、人を探していたみたいで、有名な人よりも、どこの誰かもわからない若造の方が固定概念もないだろうと。
一か八かですよね。
もしかしたら、本当に何にもならないかもしれないのに、すごいですよね。
私自身、すごく不安でしたが、手塚さんもいるし、PLAY!プロデューサーの草刈さんもいてくれましたので。
私は、PLAY! PARKと一緒に育ってきたようなものだと思います。
ワークショップや販売の先にあるもの
小栗さん:現在は独立してフリーランスで活動しています。
PARKでキュレーターをやりながら、他の施設でもそういうことをしたり、石を拾ったり、よく分からないものを作ったりと色々なことをやっています。
私は人と話すのがとても好きなので、ワークショップや作品の販売で、各地方や都市に行きますが、作品を作りたいというよりも、そこで色々な人たちと会話したい、コミュニケーションをとりたいがために、作っているようなところがあります。
近日開催する個展では、「回転耳かき」の展示販売とワークショップをする予定です。
耳かきの上の部分に自分の好きな石を付けて、それがくるくる回るのですが、これを見た人はどんな反応をするのか。
驚かせたり、爆笑したりするのを見るのがすごく好きなんです。


「小栗里奈個展・御土産耳かき」/提供:小栗里奈
自分の役割とこれからについて
小栗さん:子どもたちがしょうもないことで爆笑しているのを見ると、こちらも笑えてきて、自分もそうでありたいなって思います。
仕事が忙しくなりすぎると、こんなもん(回転耳かき)見てもらえなくなってくると思うんですけど、これを見て笑えるぐらいでいられたらなと。
やっぱり一生懸命な人や頑張っている人ほど、だんだんとこう視野が狭まってしまう。
そんな時に、子どもがゴロゴロ、ここら辺に転がっているのを見るとハッとさせられます。
皆それぞれ重要な役割を持っていて、例えば、八百屋さんが必要だったり、お医者さんが必要だったり。
でも一人ぐらい、私みたいな人がいてもいいんじゃないかと思っていて。
全員がこうなってはだめだと思うけれど、私はこの役割で行こうと。
正直に真剣に役に立たないことに取り組んでいこうと意識するようになりました。
でも、それに対して、私一人だけだったら、成り立っていないと思うんです。
遊んでくれたり、買ってくれたり、面白がってくれる人がいるから、こういう役に立たないことが続けられている。
私は、すごく人に恵まれていると思います。
友人関係とか、一緒に働いている人たちもそうですし、来てくれるお客さんなんかも。
人に出会う運が、すごくいいっていうのが、ちょっと自信でもあります。
—今後の活動や展望などについて教えて下さい
小栗さん:遊びも作りつつ、耳かきみたいなよく分からない展示もするし、石も拾いたいし、石のぬいぐるみも作るしで、みんなが見てて「はて?」と思うような一年になるだろうなと思います。
そして、こんな人もいるんだなって思ってくれたら嬉しいです。
今、すごく楽しくやっているので、これでよかったんだなって、ここ数年くらいでなんかホッとしました。
だから、それにちゃんと向き合おうと思っています。
それっぽく見せようとしなくても、正直にやっていけばいいんだなって。

■小栗里奈さん・プロフィール
アーティスト、PLAY! PARKキュレーター。
子どもや家族に向けた遊具やワークショップを中心に、イベントの企画、空間・プロダクトの制作を手がける。
代表作「石ぬい」をはじめ、ぬいぐるみの企画・制作も行う。
◎小栗さんの最新情報はこちら
・X :https://www.x.com/rina_oguri/
・Instagram:https://www.instagram.com/rina_oguri/
◎PLAY! PARKの詳細はこちら
・公式Webサイト:https://play2020.jp/park/
・Instagram:https://www.instagram.com/playpark_tachikawa/
(ライター/岡本ともこ)