松本野々歩:Matsumoto Nonoho歌手http://www.nononootoshimono.com/
出身:東京都立川市
「ロバの音楽座」のリーダー・松本雅隆を父に持ち、幼少の頃から音楽に触れて育つ。ソロ活動以外にも、バンド「ショピン」や田中磬とのユニット「チリンとドロン」、小田晃生とのユニット「ノノホとコーセイ」、遊びを発明する「ロバートバーロー」など、活動は多岐に渡る。
「大人も子どもも、ひとつの気持ちになって楽しめる音楽を」
多摩モノレール玉川上水駅から、川沿いを歩くと見えてくる「ロバハウス」。とんがり帽子のような三角屋根。「ただの家ではないな!」と道行く人の目を奪う、魅力的な佇まい。
ロバハウスは、松本雅隆さん率いる「ロバの音楽座」と「カテリーナ古楽合奏団」の稽古場兼ライブハウスだ。ここでは中世・ルネサンス時代の古楽器や手づくりの空想楽器を使い、子どもと大人が分け隔てなく音楽を楽しめるようなイベントが開催されている。
今回は、そんな日々音楽が生まれているロバハウスで、松本雅隆さんの娘であり、アーティストとして多彩な活動を行う松本野々歩さんにお話を聞いた。
人と音があつまる場所「ロバハウス」
野々歩さんが10歳のころに建ったロバハウス。はじめは、家族みんなで住む「家」だった。一度この場所を離れ都心に住んだときに、改めてここが「帰りたい場所なんだ」と実感したという。今はロバハウスのすぐ近くに家を借りて住んでいる。
「今は遠方からわざわざ足を運んでくれる人たちの方が多いんです。意外と近所の人が知らない、というか知っていても入りづらいのかな(笑)。これからはロバハウスをもっとオープンな場所にしていきたい」近い将来には「立川の野菜市」など、まちの魅力を発信しながら、通りすがりの人でも気軽に寄れるようなイベントを考案中。
「そこで1曲でも2曲でもふらっと聴いてもらえたら『なんだ面白い場所じゃん』ってまた来てもらえるかなって」
音楽の素となる「かけら」を探す旅
異国情緒ただよう室内には、形の奇妙な道具や人形などがたくさん。このほとんどは、お父さんや野々歩さんが旅をして集めてきたもの。どうやら野々歩さんにとって「旅」は、とても身近な存在のようだ。
「最初に行ったのは、2歳のときのインドでした(笑)」
小さなころから、お父さんの「音探しの旅」で世界各地に足を運んでいた。自分の意志で旅をしはじめてからは、本格的に旅好きになった。
「今も『音探しの旅』は続いていて。旅先で『匂う』と感じて、ふらっと小道に入ってみると、やっぱり楽器作りのおじちゃんがいたり、旅芸人の人がいたり…。最近では人の営みを『聴く』ことも、ひとつの音探しなんじゃないかなって思います」
良い音は決して「音楽」だけでは生まれない。野々歩さんにとって、音楽は暮らしにあり、暮らしから生まれてくるもの。自分の目で現地の「匂い」と人の表情を感じる。それが「かけら」となって、野々歩さんの表現につながっている。
ロバハウスのイベント「旅する音楽酒場」では、野々歩さんのフィルターで見た異国の「空気感」が表現される。これからは野々歩さんがお父さんに次ぐ第2の柱となって、ロバハウスの活動の幅を広げていくようだ。
バンド「ショピン」結成10周年の今年。でも野々歩さんの思い描くものは「ショピン」に限らず色とりどり。とくに新結成した「ロバート・バーロー」の活動は、今までにない試みだ。音楽に留まらず、芝居や体を動かして「『遊び』を発明する」ことをテーマにしている。
それはまさに野々歩さんの人生そのもの。子どものころから遊びながら音楽を吸収し、遊びながら「表現すること」を学んできた。
「『遊びながら表現を学ぶ』ということを、私たちも実験しながらやっていきたい」
そう話す野々歩さんの目には「確信をついた」ような力強さが浮かんでいた。
大人にもある「子ども心」を引き出したい
ソロや複数のグループに所属しながら、多彩な活動をこなす野々歩さん。
「違う活動に見えて、実は全部同じことをやっていて。どの活動にも共通する私のテーマは『大人も昔は子どもだった』。大人にも『子ども心』は絶対にあって…それを引き出して、大人も子どももひとつの気持ちになったらいい」
大人も子どもも一緒に共有できるもの=一番楽しいもの。この答えが、野々歩さんの活動すべてに息づいている。
ふと窓の外には、立ち止まってロバハウスを見上げる人が。多くの人がこの場所に魅かれるのは、ここに野々歩さんの言う「音楽の匂い」があるからかもしれない。多くの人がこの場所に魅かれるのは、ここに野々歩さんの言う「音楽の匂い」があるからかもしれない。