
TACHIKAWA
BILLBOAD
ワクワクロード~いざプラネタリウムへ
8月後半、蝉の大合唱を聞きながら入館すると、打って変わり鈴虫の涼しげな鳴き声に包まれた。
館内には鈴虫の虫かごや水槽が展示してあり、目と耳と両方から涼を感じさせてくれる。
珍しそうに覗き込んでいる子どももいた。
券売機のすぐとなりは、「ようこそ」と書かれたアーチが目に飛び込んでくる。
DIYが得意な職員の力作だそうだ。
プラネタリウムへ続く直通の通路には、壁に春夏秋冬それぞれの季節の星空が描かれていたり、突如大きなステンドグラスが出現したり、思わず足が止まってしまう。
秋が一番ちょうどよく太陽の光がステンドグラスに差し込んで来るそうで、美しい映えスポットになる。
また月ごとに作られている星図の配布など、待ち時間も退屈させないように工夫が施されている。
そしてなんといってもときめいたのが切符きりのパンチで空いた穴だ。
星の形になっており、職員たちの粋なはからいに嬉しくなってしまう。(※スタンプだけの時もある)
初代から2代目へ 「投影機がやってきた!」
郷土博物館でひときわ目をひくのが初代の投影機「G1014si」である。
約20年もの間、投影し続け、引退後は入口付近に鎮座しており、圧巻の存在力で来訪者を出迎えてくれる。
プラネタリウムに足を踏み入れると、ちょこんと中心にある丸っこい卵のようなものに目が行く。
こちらが初代からタスキをもらい2014年から2代目として働いている「MEGASTAR-2B」だ。
いかつい初代から、こんなにもコンパクトな姿になった。
提供:東大和市立郷土博物館
また、キャラクター化されており名前は「メガット君」。
ちょこバス(巡回バス)にペイントされていたり、プラネタリウムの冒頭に登場しお客様にあいさつしたり、すっかり郷土博物館の顔になっている。
しかし小さな外見とは裏腹に、初代の映し出される星の数が7000個に対して、この2代目は1000万個を映し出す。
電球からLEDに変化を遂げたことで、星のゆらめきや膨大な天の川の星の濃淡など、実際の星空と見え方がよりリアルになっているという。
ドームが星で埋め尽くされると、客席から「わあー」とため息があちこちから聞こえた。
縁の下の力持ちの存在
職員の野﨑洋子さんは博物館・プラネタリウムが開館したとき採用されて以後、プラネタリウム担当職員として携わってきた。
仕事は多岐に渡り、その月の星図や星空の見どころが書かれている「〇月の星だより」の作成、通路に展示している星空の絵もお手製で丸いシールを一つ一つ丁寧に貼って作ったそうである。
プラネタリウムは入場してすぐ右手側にパソコン、音響機材が設置されているエリアがありまさにコクピット。
ここから映像と解説を操作しているのである。
一人での操作の為、さぞ大忙しと思っていたがナレーション、演出などを組んだオート番組なので意外にもボタン一つで投影が出来るのだそうだ。
ちなみに他の職員も操作にあたる。
普段は録音だが、イベントの時などは野﨑さんが生で解説する時もある。
一般的にプラネタリウム解説は「静かにゆっくり」「落ち着いてかしこまった」話し方のイメージではないだろうか?
しかし野﨑さんの解説は一味違う「軽妙」「明朗快活」で解説というよりラジオのDJを聴いている感覚だ。
「マニュアルなどは特にないので、解説員の個性が出る」と野﨑さんは話す。
プラネタリムに足を運んだ際は、映像、解説、通路のディスプレイなどいろんなところに目を向けてほしい。
小さな博物館なのでみんなが出来るアイデアを出し合っているのだそうだ。
こうした職員の尽力こそが、プラネタリウムの縁の下の力持ちなのだ。
ライブは予測不可能の連続
基本、プラネタリウムはライブのため、アクシデントやハプニングに遭遇することもよくあるという。
紹介する星や画像が出てこなかったりすることもあるが、そこは百戦錬磨の野﨑さん。
持ち前のトークでわからないように上手くつなげ、臨機応変に対応していく。
「失敗しても『すみません』という言葉を使わずに済むようにリカバーしています」という言葉に職人魂を感じてしまった。
ホットで明るい天体観測
東大和市立郷土博物館ではプラネタリウムの外に出て、天体観測をやる催し物もやっている。
天体は夜だけではなく「昼間の星の観察会」として、太陽の観測が出来るというので早速行ってみることにした。
外には大きな望遠鏡がずらりと並ぶ。
太陽は直視が出来ないため、望遠鏡に特殊なフィルターをつけて見るものと、紙に映して見るものとがあった。
紙の方は黒点がくっきりと見え、フィルターの方は刻々と変わる太陽の表面やコロナの様子を星空ボランティアスタッフが丁寧に説明してくれた。
またボランティアスタッフが自宅から持ってきたという望遠鏡は、スマホを取り付けてタブレットから見られるというハイテクなもの。
より、鮮明な画像にずっと見入ってしまう。
職員から手渡された小さな箱を覗くと虹が見える。
この虹の箱は「簡易分光器」という名前で野﨑さん自身がつくったという。
「太陽の光を見るのと、家の中の照明の光では見え方が違う」と教えてくれた。
実際、試してみて思った以上に違いがわかりなかなか面白かった。
みんなと一緒に
太陽の天体観測では「実習生」の名札をつけている人が数名いた。
聞けば学生で学芸員の資格を取るために博物館実習で来ているのだそうだ。
朝から望遠鏡の準備をしていたそうで、観測中も「簡易分光器」を子ども達に配るなど様々なサポートをしていた。
ボランティアスタッフや野﨑さんも率先して訪れた人と交流し、みんなで催し物を盛り上げて作っていくという思いが伝わってくる。
子ども以上に、お父さんやお母さんの方が夢中になって望遠鏡を覗いていたのが印象的だった。
これからプラネタリウムは夏から秋の星空へと変わる。
座席がリクライニングのため心地よくなり、ついウトウトと投影中は眠たくなってしまうが野﨑さんは、「プラネタリウムでは、寝られる投影がいい投影なんですよ」と笑顔で語ってくれた。
■東大和市立郷土博物館
〒207-0031
東京都東大和市奈良橋1-260-2
TEL 042-567-4800
FAX 042-567-4166
開館時間 9:00~17:00
休館日 毎週月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始(12/28~1/4)
入館料 無料
〈プラネタリウム〉
投影開始時刻
平日 15:00
土日祝 11:00 13:00 15:00
観覧料 大人300円 子ども(小・中学生)100円
(取材ライター:永田容子)