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PARA HOOP FES! 〜つながろう!輪になろう!〜

毎週末、様々なイベントやマルシェを開催している。立川駅北口すぐのGREEN SPRINGS「ここにしかない」特別感のある選りすぐりのテナントの洗練された空気感、青空と緑に囲まれた開放的な2階のスペースでPARA HOOP FES!も開催された。

2022.05.30

いつもと変わらないマルシェの風景の中に

いつもと変わらない週末のマルシェの風景ではあるが、「PARA HOOP FES!」の名前にあるように、出店者のほぼ全てが福祉作業所というイベントなのだ。

ひとつひとつ大切に、丁寧に作られたこだわりのお菓子や雑貨が並ぶ店先

 

きっかけは、日本が会場となりパラリンピックが開催された2020年のこと。

「立川でもパラのスポーツイベントを開催するの、面白そうじゃないですか?」という、集客イベントなどを企画するイマジネーションプロみなみかぜのボニー・小野さんと、GREEN SPRINGSの企画を行う立飛ストラテジーラボの鳴井智信さんの何気ない会話だった。

 

あえて「障がい者」という枠組みを作らない

スポーツイベントを草案としてスタートしたこのイベントが「マルシェ形式」を軸としたイベントになった理由に、鳴井さんの「福祉施設が出店しているマルシェイベントではあるけれど、『障がい者の方の』イベントをイメージしたわけではなく、もっと自然に隔たり無く、マルシェのお店が福祉作業所なだけというのが当たり前の空間を作りたかった」という考えに基づいていることが大きい。

そのため、ステージイベントはあえて取り入れず、それぞれのオリジナリティが形となったアート作品の展示とマルシェ主軸のイベントに落ち着いたという。

あたたかく、個性的なタッチの絵画や造形が並ぶアール・ブリュット立川の展示スペース

 

この形式にすることで、障がい者を特別視したり、際立たせたりするイベントではなく、個々の多様性を自然な形でイベントに溶け込ませることに成功したのだった。

 

PARA HOOP FES!で芽生えたつながり

繋がりは、何も来場者と出店者だけではないのがまた、PARA HOOP FES!の凄いところ。
今回の展示の目玉の一つでもあるPICFAさんのブースも、鳴井さんが福岡で15年ほど働いていた頃に知り合った社長からの縁で、はるばる九州の佐賀からの出展だ。
「アートで仕事をする」障がい者就労支援B型事業所所属の世界では知る人ぞ知る本田雅哲さんの作品が展示された。

PICFAの展示スペースにて:フリーハンドで描かれる直線と目を引く色使いの絵画は、どれもはじめから頭の中で完成されているそう

 

来場者からも、来年はぜひ自分たちも出店したいと声がかかる。参加した作業所さんの紹介で新たな出店者が決まることもしばしば。

普段は各々の作業所で仕事をしているため接点のない作業所同士も、今回のイベントをきっかけに横の繋がりが出来たようだ。

左上:ローソンのMachicafeでも一躍有名になった東島ゆきさんの「Rose World」も展示された

 

また、鳴井さんは、昨年のこのイベントをきっかけに車椅子の方も普段から見かけるようになったという。

多目的トイレもエレベーターも完備されているため、「車椅子で行ける場所」と認知されたのではないかと話す。

人が人を呼ぶ、理想的なスタイルで輪が広がっていき、2年目にして出店数は2倍。

PARA HOOP FES!はゆっくりと、そして着実に広がりを見せており、全国でも稀に見る規模のパライベントへと成長している。

 

Made by 立川 の well being

みなさんは、well beingという言葉を聞いたことがあるだろうか?

一般的には身体的、精神的、社会的に全てが満たされた状態のことをそう呼ぶそうだ。

ここ、グリーンスプリングスでは、このwell beingという理念に基づき、人との繋がりを育むイベントを多く行なっている。

FESに来ていた子どもたちや保護者に話を伺うと、「お店の人が優しい、明るい!」という答えが次々に返ってきた。

店先に立つスタッフからも「こう言った場がなかなか無いので、素敵な場所でお店を開けて嬉しい」という声を聞こえてきた。

それぞれが、心地よくその場を楽しむことができたPARA HOOP FES!はGREEN SPRINGSが掲げるwell beingの幅をよりいっそう、広げるイベントとなったのではないだろうか。

長崎から出展のお店も。出店者の女性自身も障がいのあるお子さんを育てる笑顔の素敵なお母さん

 

この立川の地にあるGREEN SPRINGSを出発点として、個々のオリジナリティが孤を描き、結びつき、誰にとっても心地の良い空間が広がっていく。

会場に溢れる笑顔と個性を見て、PARA HOOP FES!は、多様性に寛容な文化を多摩全体にもたらすきっかけになるのではないか、と主催者側も期待を込める。

「どんどん参加者も来場者も増えて、年に2回開催できるようなるといいなぁ」
「Artに重きを置いた作家のライブイベントなんてどうだろう!」
取材中も、仕掛け人達の夢と期待は膨らむばかりだ。

special thanks!お話を伺った仕掛け人の御三方。左から、イマジネーションプロみなみかぜのボニー・小野さん、立飛ストラテジーラボの鳴井さん、原田さん

 

青空の下、個性豊かなメンバーが集った緑に囲まれた開放的な空間は、いつもの週末と何ら変わらないGREEN SPRINGSでのマルシェの風景そのものだった。

(取材ライター:natsu)