TACHIKAWA
BILLBOAD

TACHIKAWA BILLBOAD東京・立川周辺のART&CULTURE情報

report

「イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY」400点以上の作品でたどる「全仕事」https://play2020.jp/article/anzaimizumaru/

立川市にあるPLAY! MUSEUMで、「イラストレーター安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY」がスタートした。
2026年5月20日(水)~7月12日(日)まで。

本展は、2016年から各地を巡回し話題となった「イラストレーター安西水丸展」に、PLAY! MUSEUMオリジナルの新たな展示を加えたもので、安西さんにとって描くことの原点だった「あそび」を切り口に、安西さんの「全仕事」を、約400点以上の印刷物、原画、版画、関連資料で紹介する。

安西さんと親交が深く、多くの装丁を担当した村上春樹さんの初期作品「午後の最後の芝生」をイメージして描かれた原画が初出品されるほか、大きな楕円形の展示室に、安西さんのトレードマーク「ホリゾン」(水平線)作品が一挙に展示されるのも見どころだ

2026/05/20 (水) 2026/07/12 (日)
開催場所

PLAY! MUSEUM

2026.05.29

Photo by Masataka Nakano

■安西水丸(1942-2014)
東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科造形コースを卒業後、電通、ADAC(ニューヨークのデザインスタジオ)、平凡社でアートディレクターを務めた後、フリーのイラストレーターとして独立。

広告や本の装丁、マンガや絵本、小説やエッセイの執筆など、幅広いジャンルで活躍し、今もなお、多くの人を魅了している。

一方で、「今でも小学生の絵を描いている 普通の人」と自身を表し、「仕事」と「あそび」を行き来しながら制作していた。

また、本展にも登場する村上春樹さん、和田誠さん、嵐山光三郎さんとは、長年にわたる親しいつながりがあり、装丁の担当や共著作品も多い。

安西さんが亡くなった後、村上春樹さんは「この世界には水丸さんにしか埋められないスペースみたいなのがけっこうたくさんあったのだな」と文章に書いている。

 

巡回展と作品集が制作された経緯
巡回展と作品集を手がけた、クレヴィスの土居裕彰さんに制作の経緯について聞いた。

クレヴィスの土居裕彰さん

土居さんと安西さんが知り合ったのは、2014年、出版社での席だった。

それまで安西さんは、作品集を作ってこなかったのだが、その時はなぜだか「作ってみない?」と声がかかった。

安西さんは、イラストレーターの和田誠さんの展覧会と作品集「時間旅行」をイメージしていたようで、「今まで自分の仕事を振り返ったことがなかったから、そろそろまとめてもいいかな」と話していたそうだ。

しかし、その数か月後に、安西さんは逝去する。

そのため生前、2回ほどしか会うことは叶わなかったが、作品や資料などを収集し、安西さんの仕事やルーツを紐解いていった。

そうして、2016年、巡回展「イラストレーター 安西水丸展」と作品集「イラストレーター 安西水丸」はつくられた。

 

本展のタイトル「ぼくのあそび」に込められた思い

展示風景/「あそび」

本展は、作品集「あそび」の展示から始まる。この作品は、安西さんが7歳のときに描いた絵に、61才になった本人が言葉を添えたものなのだが、絵のストーリーに対して、全く別ともいえる、当時の気持ちや母と過ごした日々を思い起こすような言葉がつづられている。

本展のタイトル「ぼくのあそび」は、この作品からインスピレーションを得てつけられたという。土居さんは、この作品をみたとき、「安西さんは7才当時のままの気持ちで生きてきたのだな」と思ったと話す。「最後まで絵を描くことが楽しかったんだな」と。

 

第1部「ぼくの仕事」創作風景や仕事、仲間とのコラボレーション作品など
はじめのセクションでは、青山と鎌倉にあった仕事場の様子がうかがえる展示になっている。

使用していた画材道具や集めていた小物たち、安西さんお気に入りのチノパンとジャケットなど、創作の場となったアトリエの雰囲気が体感できる。

展示風景/安西さんのアトリエには独自の美意識で収集した雑貨コレクションが賑やかに飾られていた

次のセクションでは、本にまつわる仕事が展示されている。

装丁や装画をはじめ、自著の小説やエッセイ、マンガなど、ずらりと並ぶ。

意識していなくても、それらの本を手にとったことがある人は多いのではないだろうか。

平松洋子「ひさしぶりの海苔弁」・江國香織「すいかの匂い」の原画

次のコーナーでは、編集者で作家の嵐山光三郎さんと共同で作り上げた仕事に焦点が当てられている。

展示風景/絵本「ピッキーとポッキー」。自分たちの子どものために作った絵本だったが、出版社に持ち込むとすぐに採用となった

安西さんと嵐山さんは平凡社時代に同僚として知り合い、枠を超えて様々な仕事を手がけて行った。

「ぼくにとって、嵐山光三郎さんといれば、こわいものがなかった」と安西さんは述べており、嵐山さんは、「雪舟は絵が上手すぎて真似できないけど、安西さんは下手すぎて真似ができない」と、賞賛をこめて「青山雪舟」と名づけるなど、互いに強い信頼関係があったことが感じられる。

代表作「青の時代」の原画/『ガロ』にマンガを描くことをすすめたのは嵐山さんだった

進んで奥の小部屋では、作家の村上春樹さんやイラストレーターの和田誠さんとコラボレーションした仕事が展示されている。

展示風景

村上作品の装丁といえば安西さんの絵を思い浮かべる人も多いと思うが、まだ無名に近かった安西さんを編集者に薦めたのが村上さん本人だったという。

互いに「兄弟のようだ」と語るほど、居心地のよさを感じていたようで、それが共著にも表れているようだ。

展示風景/村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」装丁など

初出品される村上春樹「午後の最後の芝生」イメージ画

安西さんにとって、和田誠さんは高校生の頃から憧れの存在だった。

2001年に2人は初の2人展「NO IDEA」を開催し、お題に沿って二人で1枚の絵を仕上げるというユニークな取り組みを始め、安西さんが亡くなる2014年まで続いた。

描かれた作品は200点以上。

その一部と、後に発見された片方だけ描かれた未完の絵が、本展では展示されている。

後に安西の事務所で発見された2人展用の原画(未完)

第1部の最後の展示室では、1980年~1990年代にかけて、企業らが潤沢な予算を使って、競うように制作していたポスターや雑誌など、安西さんの絵が使われた広告を紹介している。

また併設するスペースで、「水丸るワークショップ」も2種類、体験できる。

展示風景/雑誌の表紙

 

第2部「ぼくの水平線」トレードマークの『ホリゾン』と原風景『千倉の海』
第2部では、大きな楕円形の展示室に、安西さんのトレードマークのホリゾン(水平線)作品、約70点が一挙に展示されている。

会場風景

ホリゾンとは、画面を横切るように引かれた線のことで、絵の中に空間の広がりを生み出す効果がある。

このホリゾンは、安西さんが幼少期を過ごした海辺の町、房総半島の千倉の海に由来している。

「千倉の海」/新たに撮り下ろした映像と安西さんが晩年取材を共にしていた木村伊兵衛賞作家の中野正喜さんの写真を上映

会場内の壁には、ホリゾンが一本の線になるように配置された作品と千倉の海の映像が連なっており、作品と原風景が時代を超えてひと続きになっているような演出となっている。

「チョウと舟」

本展では、これまで展示された作品に加えて、前回の展覧会の後に見つかった原画と、劣化が激しいものはジグレー版画として復刻したものが新たに出品される。

これらの絵には、フランスの会社が販売してた透明のカーラーシート「パントーン・オーバーレイ」が使用されているが、原画では、シートの重なりやはみ出しの具合を間近で見ることができ、作品や作家の息づかいのようなものがより身近に感じられる。

絵にも登場するお気に入りの小物

「サーフィン」2006 ミクストメディア

安西さんは、お気に入りの小物を集めており、それらは作品のモチーフとして度々登場している。

会場内では、作品と実物の両方を見比べることができる。

 

展覧会グッズとカフェの紹介

販売風景/安西さんのイラストが使用されたグッズが盛りだくさん

作品集「新版 イラストレーター安西水丸」

ショップでは安西水丸のイラストをあしらった、オリジナルグッズが販売される。

また、新たに刊行した作品集「新版 イラストレーター安西水丸」もおすすめ。

前回の巡回展で展示出来なかった作品も追加され、作品・図版総数650点超が掲載されている。

カフェでは、安西さんがこよなく愛したカレーをはじめ、コラボメニューも提供

カフェは展覧会期間中限定で、どこか懐かしい純喫茶を思わせる空間「喫茶プレイ」が登場する。

展覧会の余韻を感じながらゆったりと楽しめる。

 

安西さんが私たちに伝えてくれること

作品「エアメールとレモン」 illustrated by Mizumaru Anzai © Masumi Kishida

安西さんは、後進の育成にも力を入れていた。

そこでは、絵の技巧ではなく、向き合う姿勢を教えていたという。

その人らしい絵の描き方の糸口を見つけることが得意で、後にイラストレーターになった生徒さんは、安西さんからかけてもらった言葉を、矜持として、今でも大切にしているそうだ。

絵を描くことを生涯楽しみ、好きな小物を収集したり、親しい友人らと遊んだり、ひとり旅をしてみたり、こんな風に生きられたらいいなあと思わせてくれる本展に、ぜひ、「あそび」に来てみてはいかがだろうか。

 

PLAY! PARK開催・コラボワークショップの紹介

PLAY! MUSEUM に併設するPLAY! PARKでは、コラボ企画として2種類のワークショップが開催される。

 

見本展示

1つ目は、「みんなでAPPLE」。

安西さんの絵にならって、自由に思いつくままリンゴを描いてみるワークショップだ。

みんなが描いたリンゴの絵は、PLAY! PARKの壁に展示する。

自分のリンゴとみんなのリンゴ、どこが違ってどこが一緒か、見比べてみよう。

 

見本展示

2つ目は、「大きなお皿にながーい線を描こう」。

PLAY! PARK のシンボル「大きなお皿」の壁に、みんなでぐるりと1周、ホリゾン(水平線)を描いてみよう。

みんなの水平線が重なると、どんな模様が見えてくるだろう。

ワークショップの詳細は下記の公式サイトまで。
https://play2020.jp/park/

■イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY
会期:2026年5月20日(水)-7月12日(日)*会期中無休
会場:PLAY! MUSEUM(東京・⽴川)
主催:PLAY! MUSEUM
監修:安西水丸事務所
協力:武蔵野美術大学 美術館•図書館、堀内カラー
企画協力:クレヴィス

詳細は下記のPLAY! MUSEUM公式サイトをご覧ください。
https://play2020.jp/article/anzaimizumaru/

◎関連イベント
■安西水丸とイラストレーション ─ 絵があって、ぼくがいた。
会期:2026年9月14日(月)-10月25日(日)*日曜日は休館
会場:武蔵野美術大学美術館 展示室3・4・5
主催:武蔵野美術大学 美術館・図書館

詳細は下記の武蔵野美術大学公式サイトをご覧ください。
https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/23066/

(取材ライター・岡本ともこ))

会場地図