空飛ぶクジラが見守る図書館
アキシマエンシス
1961年(昭和36年)、約200万年前の地球に生息していた「アキシマクジラ」(学名:エスクリクティウス アキシマエンシス)の化石が発見され以降、“クジラの街”として知られる昭島市。
JR昭島駅と中神駅の中間にある「アキシマエンシス」(昭島市教育福祉総合センター)には、本を読まずとも、子どもも大人も楽しめる、新しい”学びの回遊“空間が広がっていた。
全長13.5m「アキシマクジラ」の化石の原寸大レプリカがエントランスで出迎えてくれる
2020年に誕生した複合施設
アキシマエンシスは、市民図書館、郷土資料室、教育センター、子ども家庭支援センター、男女共同参画センターなどが連携した施設で、閉校となった小学校の校舎を活かして誕生した、昭島市民のつながりの拠点となる施設だ。
館内各所には小学校だった時代の名残を活かした仕掛けが散りばめられている。
小学校の校庭があった場所に新築された国際交流教養文化棟内に“知”の拠点である図書館と“文化の拠点=郷土資料室がある
黒板をイメージしたという書架案内図
約40万冊から探せる!“知”の拠点
アキシマエンシスの中核となる市民図書館は2フロアあり、演奏会やイベントなども開催している1階の「交流ひろば」を中心に環状に本棚が配置されている。
1階で目をひくのは絵本や児童書など約5万冊揃う「子ども図書館 岩泉の森」。
昭島市の友好都市である岩手県岩泉町産の木材がイスやテーブルにも使用され、温かみのあるホっとする空間が広がっている。
子ども目線でつくられたこのコーナーは、子ども図書館専用の“子どもカウンター”や、読み聞かせや保護者の交流スペースにもなる“おはなしのへや”もあり、親子でのびのびと楽しめるようになっている。
子ども図書館 図書館には珍しく、「子ども一時預かり室」(※予約制)もあり、育児中でもゆったり読書できるような配慮がされている
おはなしのへや
開放的な空間が広がる2階開架スペースは、多彩な学習環境に対応できるようWi-Fi完備で充電も自由。
主に中高生対象の明るく開放的な「ティーンズ学習室」や中高生向けの図書資料を揃えた「ティーンズコーナー」はオープン以来人気とのこと。
他にも、集中して調査・研究ができる「研究個室」や、より静かな場所で読書ができる「静寂読書室」など、幅広い年齢層の文化的活動が可能な場となっており、デザイン性、機能性の高いインテリアに囲まれた空間はとても居心地がよい。
ガラス張りの自動化書庫が動いている様子が観察できることも、大きな魅力のひとつ。
研究個室
文化祭などの打ち合わせなどにも使用されるグループ学習室。テスト前や受験シーズンには予約席含め満席になるそう
より静かな場所で集中して読書を楽しめる「静寂読書室」
約20万冊の蔵書から数分で欲しい本を呼び出すことができる自動化書庫は見ごたえあり
テーマは“水”「郷土資料室」
蛇口をひねれば深層地下水100%の美味しい水が飲める昭島市は、東京都で唯一、地下水のみを水源にする自治体だ。
1階にある基本テーマを“水”とする「郷土資料室」は、現物・デジタルの両面から昭島の歴史・民俗・自然に関する情報発信をしている。
大型高性能タッチパネルに触れるだけで、さまざまな郷土資料や昭島固有の魅力を迫力の映像と音で体験できるデジタルミュージアムだ。
アキシマクジラの一生を再現した映像など、大人も子どもも存分に楽しみながら学べる。
市民でなくとも入場無料のため、夏休みの自由研究などにもオススメしたい。
タッチパネルで楽しめて、日本語、ひらがな、英語に表示切替え可能な「AKISHIMAビジョン」
現代に蘇ったアキシマクジラなどを大迫力のビジュアルとサウンドで体験できる「AKISHIMAプレート」
「つなぐ、広がる、見つける、育む」場所
他にも児童福祉に関する施設を集約した“学び”の拠点「校舎棟」、可動式の客席を備えた“活動”の拠点「体育館」、深層地下水でつくる飲み物とサンドイッチを提供する「ライブラリーカフェ」、さまざまなイベントや講座を開催している「講習・研修室」、「シアター」、「市民ギャラリー」など、毎日来ても飽きない施設となっている。
楽しめるのは昼間だけではない。
17時~22時までエントランスの標本がライトアップされ、クジラが悠々と海の中を泳ぐような姿を見ることができる。
JR青梅線昭島駅~中神駅の区間の電車内から、夜限定の幻想的なクジラも楽しんでみてはいかがだろう。
イベントごとのライトアップも楽しめるそうだ
館内を案内してくださった皆様。
右:昭島市教育委員会事務局 生涯学習部 アキシマエンシス管理課長 勝野 玄隆さん
中:アキシマエンシス 副館長 図書館司書、衛生管理者 佐竹 純子さん
左:アキシマエンシス 図書館長 図書館司書 梶原 亮一さん
「本を読まなくても誰もが楽しめて人が集う場所にしたい」図書館長の梶原 亮一さんの言葉がアキシマエンシスの最大の魅力と感じた。
子どもの頃から親子で図書館に通い、中高生になって学習室で友人たちと熱くディスカッションし、大学生になったら研究個室で黙々と卒論を書き、社会人になったら講座に参加して。
そんな風に、今を未来につなぐことが想像でき、本というツールを媒体にさまざまな交流が生まれる進化系図書館で、空飛ぶクジラに見守られながら特別な時間を過ごしてみて欲しい。
◆アキシマエンシス
〒196-0012 東京都昭島市つつじが丘3-3-15
〇図書館・郷土資料室・ライブラリーカフェ(国際交流教養文化棟)
開館時間:火~金 10:00~20:00 ・土日祝 10:00~18:00
休館日:毎週月曜日(休日の場合は次の平日)、年末年始、特別整理期間
〇シアター、講習・研修室(国際交流教養文化棟)
開館時間:9:00~22:00
休館日:年末年始
〇体育館、校舎棟会議室等
開館時間:9:00~21:00
休館日:年末年始
(取材ライター:西野早苗)