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多様な文化を持つ多摩地区の、南北交流を育む大動脈

多摩都市モノレール

昭和40年代。東京都は都市部への機能の集中が激しく、通勤混雑、居住環境の悪化など様々な弊害が生じ、大規模な都市災害の危険も指摘されていた。

「職と住の均衡した都市構造」への転換が進められる中、多摩地域の公共交通は、バスや既存鉄道によって支えられてきたが、輸送力の面などから一層の充実が求められていた。

こうした課題に対応するため昭和57年、東京都長期計画に、約93kmに及ぶ「多摩都市モノレール」の整備が位置付けられた。

2018.07.26

切迫する交通環境の悪化 都民の夢を背負い誕生したモノレール

昭和40年代、5年間で多摩地域の人口は30%増加し、通勤ラッシュが社会問題化していた。立川から高幡不動へと向かう南北のバスは、平均時速6kmで運行するなど、交通渋滞なども深刻であった。

 

多摩モノレールの整備が急がれる中、開業へ向け軌道法特許取得後、もっとも緊急度の高い、「多摩センター」~「上北台」間の16kmが事業化され、区間を2つにわけて工事を行っていくことが決定された。

 

平成2年、工事に着手。「立川北」~「上北台」間が平成10年11月27日に、「多摩センター」~「立川北」間が平成12年1月10日に開業し、現在の多摩モノレールが誕生。

 

多摩センター駅で京王相模原線及び小田急多摩線に、高幡不動駅で京王線に、立川南駅・立川北駅でJR中央・青梅・南武線に、玉川上水駅で西武拝島線と、既存の東西方向の鉄道と結節することにより、これまでバス以外の南北方向の公共交通がなかった多摩地域に、交通ネットワークが形成され、周辺住民の利便性は飛躍的に伸びた。

 

現在、1日約14万2千人の乗車人員があり、その客数はゆりかもめや東京モノレールなどの新交通システムやモノレールの中では全国1位をほこる。

 

しかし、決して順風満帆に全ての事業を進められてきたわけではない。新しい試みであるが故、現場では多数の問題に立ち向かってきた。

 

初めての挑戦 試行錯誤を繰り返し問題を打開

同社は東京都を中心に、西武鉄道、京王電鉄、小田急電鉄などの鉄道会社、周辺自治体などを株主に設立された企業だ。

鉄道事業のノウハウのある企業と連携し事業を進めていくが、支柱の上に軌道桁を敷設し、そこを運行するモノレールならではの問題も多数起きた。

 

中でも、これまで誰も経験したことがなかったのが雪害。都心部より、降雪量の多い地域でもあり、丘陵を越える路線は急勾配もあって、降雪時のモノレール運行に際しての適切なノウハウというものがなかったのだ。

現場では、車両に雪を掃くブラシを設置したり、凍結防止剤を桁にまきながら走れるようにするなど、1つ1つ試行錯誤しながら改善し、努力を重ね、打開してきた。

現在ではちょっとした雪では止まらずに運行できるまでとなった。

 

「地域の人々に愛される路線に」を想い続ける

こうした努力の背景には、同社の持つ「地域の人々の足となって、愛される路線に」という想いがある。

 

多摩モノレールの沿線は、独自の歴史や文化を有する自治体をはじめ、大学などの特色ある教育研究機関や、大型商業施設、文化交流施設、企業などが数多く立地している。

通勤利用者はもちろん、大学への通学利用者も多く、週末には家族の利用も多い地域住民の生活に密着した路線だ。

同社では地元の方々に喜んでもらうため、多摩モノレールならではの見晴らしを生かし、列車を使って様々なイベントを企画。

夕暮れから夜景の移り変わりを楽しみながらビールを味わう、さながらビアガーデンの様な「ビール列車」や、「ワイン列車」、そのほかにも子ども達に大人気の1日駅員体験や1日運転士体験、「多摩モノまつり」(車両基地まつり)など積極的に行っている。

こうしたイベント開催にも、同社の「地元の人に愛される路線に」という想いがあるのだ。

 

地域の発展と共に、多摩都市モノレールは次のステージへ

開業して以降、立川市の同社沿線では開発が進み、立川駅前には大型商業施設が増加。

立飛駅周辺には、ららぽーと立川立飛やタチヒビーチ、バスケプロリーグのトップチーム「アルバルク東京」がホームとして利用するアリーナ立川立飛が誕生するなど年々、沿線の人々に限らず必要不可欠な路線となってきている。

現場でも開業以来、鉄道会社からの出向社員が中心となって事業運営を進めてきたが、開業時に入社した社員が初の管理職に就くなど、社内の体制も今、新しいステージを迎えている。

 

東京都の長期計画で掲げられる将来構想は、まさに多摩の大動脈路線。

現在の最北部の駅「上北台」から、JR八高線の駅「箱根ヶ崎」、青梅線、五日市線、JR中央線の「八王子」を経由し、多摩モノレールの南部と結節する大きな生活圏を回り、最南部の駅「多摩センター」からはJR横浜線や小田急線の駅「町田」までをつなぐ計画だ。なお、国の交通政策審議会答申(平成28年4月)において、「多摩地域の主要地区間のアクセス利便性の向上」に資する区間として、上北台~箱根ヶ崎間及び多摩センター~町田間、「多摩地域の主要地区間のアクセス利便性の向上を期待」する区間として、多摩センター~八王子間の延伸が位置付けられている。

今後の立川を中心とした多摩の発展に、なくてはならない路線として、地域住民から期待の声が高まっている。

◆多摩都市モノレール株式会社

東京都立川市泉町1078番92

http://www.tama-monorail.co.jp/