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「立川のファンを増やしたい」 民間によるまちづくり会社の想い

まちづくり立川

立川駅は近年、都内でも有数の乗降客数をほこる。

駅前には大型商業施設も建ち並び、平日には多くのサラリーマンで賑わい、週末には世代問わず多くの人々が行きかう町になった。

しかし全国的に危惧される人口減少、高齢化社会の波は、ここ立川にも徐々に足音を近づけてきている。

そんな将来の立川に危機感を持ち、地域の自分たちの力で「まちづくりを仕事とする会社を作ろう!」と立ち上がった人たちがいる。

2018.10.06

未来への危惧から、商店主たちが立ち上がった

2020年に女性の半数は50才を越え、2024年 全国民の3人に1人が65才以上に。2033年、全国の3戸に1戸が空き家となり、2040年、自治体の半数が消滅すると言われている。
※出展:未来の年表(河合雅司)より

2016年、立川南口は50年かかった立川南口区画整理事業が完了したが、地元商店主たちは身近な町の変貌、そして未来に対する危機感を持っていた。

南口で大正10年頃 燃料、米穀商として創業し現在は、賃貸不動産業を中心に、コンビニ店舗、飲食店舗の事業展開などを行う岩下商事株式会社代表の岩下光明さんもまちの将来に危機感を持つ一人であった。

 

「賃貸業の仕事は、地域を元気にすること!」との思いから、これまでも地域活動やまちづくり活動に積極的に参画してきたが、商業の活性化やまちづくりを行う専従組織の必要性を強く感じ、想いを同じくする商店主5人と共に、完全民間のまちづくり会社を設立。

 

「立川にFANとFUNを増やす!」を掲げ2014年、株式会社まちづくり立川は立ち上がった。

 

自社物件を活用した「共創型事業」を、積極的に展開

岩下さんが行ったのがまず行ったのが、自社物件を活用した共創型事業の展開。地域にネットワークがないが、やる気のある若い企業と連携し、多用な事業を推し進めた。

 

地元野菜の直売所「のーかる」で連携したのは、国立市で都市型農業の活性化を目指し、地元野菜の販売を手掛けるエマリコ国立。

JAが運営していた直売所が閉店となることを受け、「何かできないか」と双方でアイデアを出し合い、農家に負担のかけない流通方法や、地元飲食店と結びつけた運営方法を生み出し、「のーかる」が誕生した。

 

 

これまで農家が直売所に納め、売れ残ったものを回収すると言う委託販売形式であったが、のーかるでは、1日2回集荷に行き、すべての野菜は買い取った。地元食材を使いたいという飲食店も50店舗を越え、次第に「こういう野菜は作れないか」などの要望も出始めた。

 

「農家さんの負担が軽減され、利用者の声により農家さんのやる気が促進され、より活性化した直売所運営ができているんです」と岩下さんは話す。

 

次に目を付けたのが、創業を志す人々を支援する事業。「人口減少社会において激化する都市間競争に勝ち残るには、創業意欲溢れる人たちを地域に集めて、支援していくことが重要」と考え、様々なニーズに合わせたシェアオフィス運営と創業支援に乗り出す。

小金井市で「地域のハブとなる場づくり」の事業を展開していた株式会社タウンキッチンと連携し、立ち上げたのが、立川初のオープンスペース型シェアオフィス「テクスト」。「ただ場所を貸す」だけでなく、利用者同士の積極的な交流会の開催や、地域ネットワークの提供など行い、利用者を支援している。 

 

 

オープン型のテクストと違い、個別ブース型のシェアオフィスとして立ち上げた「KODACHI」は、士業などを創業する人びとへ向け開業。東京の木材を使った檜の香りの癒し系オフィスとして、他との差別化も図った。

 

 

共通の理念を有する人たちとの連携事業も活発に展開しており、森林社長との出会いから全国では300万人以上眠ると言われる「ママ人材」を支援する事で、町の活性化を図ろうとの思いで立川シェアオフィス「Cs TACHIKAWA」が設立された。職住育の近接した環境を考え、企業主導型の保育園を併設し、子育てしながら安心して、母親たちが新しい事業に挑戦できるスペースを生み出した。

 

また地域事業の掘り起しや創業チャレンジのための資金と支援者獲得のため行っているのが、クラウドファンディング「FAAVO東京多摩中央」。説明会やアイデアコンペも開催し、新しい施設やイベント、新製品、既存施設の改修、名物、市民活動などの事業創出を支援している。

 

同社はこれらを4年とかからず次々に展開し、事業として継続させている。

 

「『オシャレ』で『楽しい』場所に、人は集まる」そして「うまみのある場所づくり」へ!

同社が立川で創業支援を徹底して行っているのには、理由がある。

全国に350万社ある事業所が、たった10年で250万社になると言われ、多摩地域の事業所代表の半数が65歳以上になり、多摩地域の事業者の半数に後継者がいないと言われる。

こうした現状を岩下さんらは、危惧したからだ。

 

事業の中でも、最も顕著なのが、ものづくり事業。多摩地域のものづくり出荷量は東京都の60%だったが、近年20%減少したとも言われる。。

しかし設備投資の面で、ものづくりの事業を創業するのは、事務所系の創業よりも、はるかにハードルが高い。

設備を共有して使用できる場が必要だった。

そんな中、同社が2018年2月に立ち上げたのが多摩エリア初、都内最大級のファブスペースであるものづくりと創業の学び舎「ツクール」。

Tには、地域としての東京、多摩、立川の意味と、機能としての TOOL、TECH、TEAM という思いが込められている。schoolには、ものづくりの技術や知識を学び合う場となることを想い、ツクールと名付けられた。誰でも講師として教えて、生徒として学べて、集う人たちが刺激し合うコミュニティの場を創出した。

 

扱えるユーザーが多い縫製機械から工業用の縫製機材、3Dプリンターやレーザー加工機などの最新のデジタル加工機、試作品づくりだけでなく、商品として仕上げることができる塗装設備・商品梱包箱加工機などまで利用できる。

その他、個室ブースの設備や、法人登記も可能で、インキュベーションマネージャーによる支援や金融機関のアドバイスも受けられる。

また創業までは考えていない、趣味レベルでのクラフト愛好者の利用も受け入れている。

 

他にも商店街連合会や商工会議所の取り組みにも、積極的に参加を続ける岩下さん。「『オシャレ』で『楽しい』ことが大切。それでいて、ここにいれば儲かりそう、と思えるような「うまみ」のある所に人は集まってくる。立川にそういう場所が、もっとできていけば、立川のファンが増え、必ず町の活性化につながると考えているんです」と笑顔で話していた。

 

株式会社まちづくり立川
立川市錦町1-4-4
TEL042-512-5414
http://tachi-machi.com/