多摩の文化を支援し続け、人と人とをつなげる文化財団
多摩信用金庫
昭和4年、アメリカ合衆国を発端に世界中を巻き込んだ世界恐慌。日本、そして多摩地域にもその深刻な経済影響は波及した。
多摩中央信用金庫(現在の多摩信用金庫)はそんな昭和恐慌の後、昭和8年12月26日、「有限責任立川信用組合」として、地元の人々の手によって設立された。
【記念誌の創刊から生まれた地域とのネットワーク】
戦中戦後と、地域の企業を支えてきた有限責任立川信用組合は、その後、多摩中央信用金庫として地域と共に歩み続けてきた。
昭和48年4月、創立40周年を迎えた同金庫。社史と共に、「自分たちのいる多摩とは一体どんなところなのかを、まとめよう」と記念誌「多摩の歩みとともに」の編集を開始した。
動き出すとすぐに地域から様々な資料が集まりはじめ同時に、地元に根付き、様々な文化活動を行っている人々とのつながりが生まれ始めた。現在のたましん地域文化財団を支える地域のネットワークとして、この時から拡大していった。
【多摩の文化拠点の開設と、季刊誌「多摩のあゆみ」創刊へ】
当時、文化拠点となるギャラリーは23区にしかなく、多摩地域を拠点に活動していた作家らから、「多摩地域に発表の場を」との声が高まりはじめた。こうした声に応えるべく同金庫は昭和49年、たましん新本店ビル完成に合わせ9階に、「たましん展示室」を開設(昭和52年「たましんギャラリー」へと改称)を決め、地域の文化拠点を誕生させた。
同財団の綿引康司館長は、「当時、信用金庫がギャラリーの様な文化拠点を作るのは稀なことであり、地域とたましんが密接に関わっていた証でしょう」と当時を語る。
昭和50年には季刊の多摩の郷土誌として「多摩のあゆみ」を創刊。同財団の母体となる「多摩文化資料室」が開設されると以後、平成3年には財団法人たましん地域文化財団を設立。平成4年、「たましん歴史・美術館」が東京都教育委員会登録博物館となり、平成5年には「たましん歴史・美術館」の分館として「御岳美術館」を開設した。
平成24年に、公益財団法人へと移行し、現在もギャラリーは無償で提供し、2週間を1会期として多摩の作家らによる展示が行われている。
【脈々と受け継がれてきた地域支援のDNA】
「大学時代、多摩のあゆみの一読者だったんですよ」と目を細めるのは現在、「多摩のあゆみ」の編集を手がける、保坂一房歴史資料室室長。「全体構成は創刊当時から変わらない。初期の方々が構成を、本当にねりにねった熱意を感じるんです」と語る。
創刊時から送料のみで読者へ届けるなど、基本方針は一切変えず、2017年5月には166号が発刊された。今も全国の大学などから、送付を求められる声も多く寄せられている。
「ネタが尽きないのは、時代と共に、その道を研究する人たちが次々に現れます。私たちは、そうした人たちをつなげる接着剤の役割りを担っていると思います。今後も、多摩地域の文化活動を応援していきたい」と保坂室長は話していた。
地域の人々によって設立された多摩信用金庫に脈々と受け継がれてきたDNAが、今のたましん地域文化財団運営の基礎となっている。
◆公益財団法人 たましん地域文化財団
「たましん歴史・美術館」国立市中 1-9-52多摩信用金庫国立支店5・6階 TEL:042-574-1360
「たましん御岳美術館」 青梅市御岳本町1-1 TEL:0428-78-8814
「たましんギャラリー」立川市曙町2-8-28多摩信用金庫本店9階 TEL:042-526-7717