みらいの自分がみつかる場所
学校法人NHK学園
限りなく100%に近い高校進学率の現代。少子化が進み、高校生は減少する一方だが、通信制高校を選択する若者は年々増加していることをご存じだろうか。
コロナ禍でも学びが滞らないと注目を集め、高校進学の際の一般的な選択肢としてすっかり定着した通信制高校のパイオニアとして2022年に創立60周年を迎えた学校法人NHK学園で、年齢も地域も関係ない、“学び”の本質を考えてみた。
正統派な学校法人
松下幸之助氏やのちにノーベル物理学賞を受賞する朝永振一郎氏など、教育界・産業界の第一人者たちが発起人となって学校法人日本放送協会学園(当時)が誕生したのは1962年(昭和37年)。
全国の都道府県の中でも厳しい設置基準を設ける東京都の認可を受けて開校した。
当時は“金の卵”と呼ばれた勤労青年たちが、ラジオ放送で勉強する方式だった。
今でこそ環境整備され、学園都市として名高い国立市だが、設立当初、周囲は見渡す限り一面畑だったそう。
NHK学園の外観と周囲を取り巻く環境の変遷(写真上:1962年/写真下:2024年)
以後、ラジオからテレビ、ネット配信へと変化しつつも、放送を教育に利用する通信制高校として、全国で8万人以上の卒業生を送り出してきた。
都度社会のニーズに応え、高等学校、生涯学習、福祉教育の3分野で事業を展開する総合的通信教育機関に発展。社会に貢献するために創設された正統派な学校法人なのだ。
全日制とかわらない環境での学園生活
月1回のスクーリングに参加するコースや週3日登校のコースもあり、いわゆる全日制の校舎に引けをとらない充実した環境で学ぶことができる。
広々したグラウンドやテニスコート、調理室、体育館、図書室などの特別教室も完備。
クラブ活動中の高校生がパワフルにグラウンドを走り回り、食堂では悩み相談に親身に寄り添う先生の姿をみかけ、「通信制高校」=「一人で孤独に勉強する」というイメージが払しょくされた。
充実した学習コンテンツにプラスし、「校舎がある」という理由でNHK学園を選ぶ方も多いということに納得する。
広々したグラウンド。テニスコートも完備している
学園の卒業生が出版した本も揃える図書室は月2回一般開放し、地域と連携している
幅広い年齢層との交流の場
実際にどのような人たちが学園に通っているのか。
勤労青年→少しヤンチャな若者→不登校経験があり学校生活が不安な子たち、と変遷があり、最近では、スポーツ、芸能活動、音楽、文芸など、すでにやりたいことが明確で、セルフマネージメントをしながら学業と両立させたい若者が増えているそうだ。
“ただ高校卒業資格がとれればいい”、ということではなく、自己管理力、決断力、などの学力だけではない、一生モノの能力が養われる環境を求める(=学校に通う意味を真剣に問う)人々が自然と集ってきている。
西欧菓子、韓国語、囲碁、手話、K-POPなど、あらゆる分野の学びを提供。自分が好きな世界を発見する貴重な体験の場となっている
NHK学園には10代だけがいるわけではない。
高等学校には他の通信制高校と比較して社会人の生徒も多い。
生涯学習の講座(オープンスクール)を開講していることもあり、東京本校には小学生からシニアまで幅広い年齢層が学びにきているため、まるで社会の縮図のような空間が広がっている。
高等学校のカリキュラムにおいても、オープンスクールで活躍するプロの講師が指導する人気の「セレクション講座」、N学アドバイザーの尾木直樹さん筆頭に、各界のトップランナーたちから学ぶ「N学特別講座」、チャットを通じて生徒同士が意見交換できるオンライン特別活動「インスパイア・ハイ」など、幅広い学びの提供を行っている。
不登校という概念はない
NHK学園は、2004年に文部科学省「研究開発学校」に指定され、不登校・ひきこもり状況にある生徒に対応した教育課程の研究開発を開始。
2008年からは「不登校特例校(現・学びの多様化学校)」として特別カリキュラムの設置を認められた数少ない学校だ。
不登校経験者向けの「ライフデザインコース」に限らず、不登校の経験を持つ生徒の在籍は多く、さまざまな思いを抱える生徒にしっかり寄り添う教育を行っている。
そのため、転入学や編入学が非常に多いことが特長だ。
「コロナ禍を経て、もはや不登校は特別なことではなくなった」と企画広報専任部長の野村真樹代さんは語る。
NHK学園高等学校 学校事務センター 企画広報専任部長 野村 真樹代さん
「言葉ではなかなか表現しにくい当学園の特色をもっと伝えていきたい」
「毎日通学することを重要視する保護者の方の価値観と自分の望む過ごし方のズレに苦しむ子どもたちをたくさん見ます。今は自分らしい学び方が選べる時代。保護者の方にはぜひ固定観念を取り払って学校選びをしてもらいたいと思います。そして、通信制高校もぜひ実際に学校の様子を見学して決めてほしいです。2003年からの構造改革制度により株式会社の通信制高校経営が認められ、参入が増えました。多様化により選択肢が増えたことはよかったのですが、利益追求型の経営により、離職・転職する教員が増加しているのが現状です。教員が流動的ですと生徒は落ち着いて学校生活を送れません。そんな学校の雰囲気もHPや案内書だけでは知り得ません」。
「そんな中でNHK学園は、生徒を自立に導くために生徒と時間をかけて向き合う教育を愚直に行っています。効率は決して良くないですが、教育とはそういうもの。自分を知り、自分との付き合い方、自分に合った勉強方法を身につけていくのには時間がかかりますが、悩んでいた生徒が殻を破り、持っている力を開花させたときの喜びは何にも勝ります。当学園の教員は本来教員として行いたかった教育にしっかりと取り組むことができるため、定着率が非常に高いのが特徴です」。
ほんとうの自分を探す旅
2018年に制作したNHK学園高等学校の新校歌「最高のぼくら」。
作詞家の松本隆さんが手がけた歌詞の中に「最高に面白いのは 嘘じゃないほんとうの日々」というフレーズがある。
高校卒業資格取得・大学進学のみをゴールとした“予備校”のような場ではなく、“めざすのは未来のじぶん”というキャッチコピーに象徴されるような人生の目的を定める本質的な学びの場であるように感じた。
「こうでなければならない」という社会の硬直化が加速する現代、「あの青春時代があったから、今のじぶんがいる」と、未来に実感できる旅がはじめられる学校の、学園祭や説明会、講座など、気軽に足を運んでみて欲しい。
東京本校の学園祭は11月にオンラインでも開催されている
運動会、球技大会、遠足、見学会、進路説明会など、様々な体験を経て社会へと巣立って行く
年齢も、好きなことも、目標も、異なる人々が集い、自由に学び、じぶんだけの未来をみつける場所は、学びたい人たちを真摯にサポートする教職員たちによって支えられている。
多様性を活かそうと静かに奮闘するあたたかな校風は、言葉では表現し辛いのがもどかしいほどだ。
現代は「君たち」ではなく、一人ひとりがそれぞれ違う「君」の時代。
この多様性を受け入れることは、実はしんどい。しんどいことに長年挑戦し続ける地味に凄い学舎は、一人ひとりの「みらいの自分」を今後も考え続けていくのだろう。
■学校法人NHK学園
〒186-8001東京都国立市富士見台2丁目36-2
電話番号:学園 代表電話 042(572)3155
ホームページ: n-gaku.jp
◎東京本校学園祭のご案内と入学検討者来場申込フォーム
https://www.n-gaku.jp/sch/announce/6597
◎個別相談お申込みフォーム
https://www.n-gaku.jp/sch/consult/
(取材ライター:西野早苗)