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立川で癒し・学び・美味しさをまるごと体験できる「cafe&books かとぶん」

cafe & books かとぶん

立川駅から立川南通りを道なりに進むと長年、地域に親しまれた「加藤文具店」が新たに生まれ変わった「cafe & books かとぶん」に出会える。

訪れた人をやさしく迎え入れ、誰もが思い思いの時間を過ごせる、まるで第二の我が家のような場所。

かつて祖母が営んでいた文具店をリニューアルし、この温かな空間を作り上げた店主・加藤敦さん智子さん夫妻に、その想いや魅力を伺った。

2025.08.05

子どもも大人も長居したくなる!かとぶんの3つの魅力

「かとぶん」は、地域の暮らしに寄り添う、新しいかたちのカフェ。

いつでも誰でも気軽に立ち寄れる地域のリビングのような場所をめざし、3つのコンセプトを大切にしている。
1つ目は「絵本を読んだり、お絵描きを楽しんだり、思い思いにくつろげる癒しの空間」。

2つ目は「子どもから大人まで安心して味わえる、手作りと素材にこだわったカフェメニュー」。

3つ目は「地域の人が主催するワークショップやお楽しみ会などの多彩なイベント」だ。
「空間・食事・イベント」、この3つの魅力を通して、かとぶんは地域の憩いの場として親しまれている。

「読む・描く・くつろぐ」図書館のようなリビングルーム

かとぶんの店内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、壁一面に並んだ絵本の数々。

まるで図書室のような雰囲気が広がる空間だ。

「妻の母は、若い頃に喫茶店を営んでいましたが、その後長年本屋でも働いていました。

本とコーヒーが好きで『いつかまたカフェをやりたい』と話していたので、店を始める際には一緒に手伝ってもらうことにしたんです」と敦さんは語る。

義母しづこさんの歩んできた暮らしを映すように、店内には彼女が選んだたくさんの絵本が並んでいる。

子どもたちはもちろん、大人たちにとっても絵本を懐かしく読み返したり、親子のコミュニケーションツールにもなっており楽しめる。

また、かとぶんの前身である「加藤文具店」の歴史を引き継ぐかたちで、色とりどりの色鉛筆も並び、子どもたちがお絵描きを楽しめるスペースとしても活用されている。

入店の際に靴を脱ぐという、ちょっと珍しいスタイルも印象的。

小さな子どもを連れてカフェへ行く母親にとって、安心してくつろげる貴重な場所となっている。

まるで自宅のリビングにいるかのような安心感ある空間は、かつての文具店と、奥様のご家族の歴史、そして加藤夫妻のアイディアが重なり合い心温まる場を作っているのである。
手作りの優しさを届ける幅広い世代にうれしい安心メニュー

「みんなが自由に過ごせる場所にしたいという思いが強かった。

カフェをやりたかったわけではないんです。

でも託児所でも児童館でもない、自分たちの理想とするスペースにするには、何かしらの『機能』が必要でした。

じゃあ何がいいのだろう、と考えたとき、カフェという形なら、美味しいものを口にしながら楽しいことにも巡り合える。

そこから、私たちのやりたいことにつなげていけると思ったんです」。

カフェは「かとぶんという場所」を支えるための、ひとつの要素というわけだ。

提供する料理や飲み物にも手を抜かない。

なるべく添加物を避け、子どもから大人まで安心して楽しめるよう、工夫を重ねてきた。

「例えばジュース類は国産原料のストレート果汁のものを選んでいます。安さよりも安心感を大切に。食事ランチプレートのお味噌汁も、出汁からきちんと取って、業務用の加工品は極力使いません」。

そう語るのは、キッチンや接客などお店の表側を担う智子さん。

メニュー開発も行い、心を込めて仕上げた一品一品は、ここを訪れる人の心と体を満たしてくれる。

フローズンフルーツ入りのデザート感覚で楽しめる爽やかなフルーツティー

「体験してみたい何かが見つかる」年間100回開催されるイベント

「かとぶん」の大きな魅力の一つが、年間100回以上開催されている多彩なイベントだ。

「ここを使って、面白いことをどんどんやってほしい」と敦さんはいう。

イベント開催の場を探し続けていた人たちにとって、「かとぶん」は活動を実現できる貴重な場所。

スペースを求める人々と、それを提供したい店側の思いが一致し、自然と繋がりが広がっている。

「おもちゃコンサルタントマスターの資格を持つ方と知り合い、アナログゲームの紹介をお願いして会を開いたところ、想像以上に好評で。

今ではアナログゲーム好きな近所の方が月に一度『ボードゲームの会』を盛り上げてくれて、子どもも大人も一緒になってにぎやかに遊んでいます」と敦さん。

取材をしている隣のテーブルでは「ボードゲームの会」が行われていた。隣のお宅にお邪魔しているようなアットホームな雰囲気。参加者の年齢、性別はさまざま

そのほかにも、2ヶ月に1度開かれる手芸の会では、参加者が手芸を楽しんだあと、店内でランチを共にしながら、和やかなひとときをみんなで過ごしている。

「普通のカフェでは数時間滞在して何かをするのは難しい。

でも、ここでは『こういうことをやってみたい』という相談や提案があれば、ぜひ気軽に声をかけてほしいです」と敦さんはいう。

習い事教室とも違う、自由で心地よい体験の場。

参加者にとっても通う義務がなく、気軽に参加できるスタイルが、忙しい現代人にもぴったりだ。

「かとぶん」は、日常にちょっとした刺激と新しい体験をもたらしてくれる場所となっている。

地域の憩いの場だった加藤文具店の想いを受け継ぐ「かとぶん」
「かとぶん」のルーツは、敦さんの祖母が1961年に開いた「加藤文具店」にある。

当時は文房具が人気で、子どもたちが自由に買い物を楽しめる、街のにぎわいの中心のような存在だった。

「時代が変わって、ドラッグストアや100円ショップに押されて文房具が売れなくなってきたんです。

だけど祖母は、そこにあるもので子どもたちが楽しめるならいいという感じで、紙や折り紙で遊ばせたり、自由に工作させたりしていました。

誰もが安心して立ち寄れる空気感や居場所が良くて、そのような場所を残したいな、と思っていました」と敦さんは語る。

学校などに居場所が見つからない子が、こっそり文具店に来てレジの陰に隠れながら一日を過ごすこともあったという。

「祖母が営む加藤文具店のあの風景が『かとぶん』の原点です」。

店内の穏やかな空気感は、かつての地域の憩いの場としての文具店の精神を受け継いでいる。

誰もが安心して過ごせる「まちのシェアリビング」を目指して

「家庭のリビングのように、それぞれが思い思いに過ごしながら、時には一緒に楽しむ。

そんな自由な空間を地域の中に作り続けたい」。

敦さんが掲げるのは、誰もが安心して立ち寄れる「まちのシェアリビング」というビジョンだ。

敦さん自身も子育てを通し、放課後や休日、子どもたちが気軽に立ち寄れる居場所の必要性を感じていた。

「特にこのエリアは子どもの多い地域であり共働き家庭も増えてます。

『かとぶん』はカフェとしてだけでなく、子育て世代の親子、地域の人々にとっての安心できる居場所でありたい」と話す。

「イベントの数も充実させたいし、やりたいことは、まだまだたくさんあります!」。

そう語る敦さんの言葉からは、地域の暮らしをより豊かにする場所づくりへの強い意志と挑戦心が伝わってきた。

■cafe&books かとぶん
〒190-0013
東京都立川市富士見町4丁目2−2(立川四小北)
Instagram:https://www.instagram.com/katobun.tachikawa/

TEL:042-526-0945
営業時間:11:00~17:00
定休日:月曜日・木曜日・日曜日

(取材ライター:近藤綾子)